「割れちゃったメガネ大丈夫ですか?」
「いいえ。まったく大丈夫じゃないと思います。フレームごと買い換えた方がよろしいんじゃないですか?」
「しょぼーん」
 大野あやは割れたメガネを修理しようと、巨大なメガネ型の看板が目印の店を訪れていた。裸眼でも大きなメガネ看板は目につきやすく親切だ。
 店員に割れたメガネを見せたところ、買い換えが必要だという。
 店員の声は淡々としている。
 裸眼では相手がどんな表情で言っているのかわからない。
 また少し視力が落ちているらしい……。
「あのぉ、新しくメガネを作る前に、検眼をお願いしたいんですけど……」
 あやがおそるおそる申し出る。
 店員は無言だった。
 あれ? 聞こえなかった?
「あの、視力検査をお願いできますか?」
 もう一度言うと、なにやら納得したように店員は頷く。
「……こちらへどうぞ」
「ありがとうございます!」
 あやはホッとして店員の後に続いた。

・・・

 視力検査のために通された部屋は、ずいぶんと殺風景だった。
 あやは店員に言われるがまま、メガネを外し、片目を覆う。
 正面の視力検査表にひらがなが書かれている。
 ひらがなのみの検査表なんて珍しい……。
 そんな疑惑を抱きながらも、店員が指示棒で指す文字を、ひとつひとつ読み上げていく。
「わ」
「……た」
「し」
「……を?」
「……く」
「す」
「ぐ」
「……つ?」
「て……――って、はい!?」
 あやは自分の発した音の意味に気づき、素っ頓狂な声を上げた。
 と、次の瞬間、彼女の背後の壁からマジックハンドが4本にょきにょきと生え出て、あやの両手両足を捕らえた。

「きゃああああ!!」

 あやは必死にもがくが、その場で大の字に身体を広げられてしまう。
 するとさらに4本、下半身のあたりにマジックハンドが追加され、ニーソックスの口をつまみ、するすると脱がしはじめる。

「ちょっと! ひどぃ……っ、やだっ! なにするんですか!?」

 あやは店員をにらむ。
 しかしぼやけて相手の顔はまったくわからない。店員は無言だった。

「ちょっ……やめっ!」

 あっという間に両足ともニーソックスを脱がされ、素足にされてしまう。

「メガネ屋さんが、なんでこんなこと……っ」

 言いかけて、あやは気づく。
 店頭で見かけた巨大な看板はたしかにメガネのような形をしていた。しかし裸眼だったために、店の名前を確認できなかったのだ。
 ……ここ、本当にメガネ屋さん?

 そんな思考を巡らせた矢先、マジックハンド4本が、あやの脇腹と足の裏を同時にくすぐりはじめた。

「くひゃっ!!? あははははははははははは!!? やっ、なにぃいいいっひいひひひっひっひっいっひひっひっ~~!?」

 わしゃわしゃと動くマジックハンド。
 あやは、ツインテールを左右に振り乱して大笑いする。

「きゃははははははははは、やだっ!!! だめぇぇえっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 両手両足をがっちりとマジックハンドに掴まれているため、身動きが取れない。
 左右のマジックハンドは、あやの横っ腹をぐりぐり指でほじくるようにくすぐっている。

「あひぃぃひひひひひひひひっ!!? ツボっ、ツボはだめだってぇぇえはははははははははははははは!!!」

 足元のマジックハンドはあやの素足の足の裏、指の付け根や土踏まずをガリガリ掻きむしる。

「くあっはっはっはっはっは、ひどいぃっ!! もうだめぇええはははははははははははははは~~!!!」

 ただメガネを修理にきただけなのに……。
 あやには、現状がまったく理解できない。


(つづく)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 優季ちゃんの「あやはバカだな~」という台詞のせいで、中の人に「バカな子」呼ばわりされて不憫。


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