女子寮に帰ってきた山郷あゆみは、さっそく戦利品の包装を解いた。
『足つぼがダイエットに効く!』
 なんて煽り文句に惹かれ、ついつい買ってしまった強力ダイエット用足つぼ刺激スリッパ!
 あんなところであんな風に売られていたグッズだ。もしかしたらとんでもない掘り出し物を手に入れたのかもしれない。
 あゆみは無類のダイエット用品好きであった。
 かかとがあってかなり底の厚いスリッパだ。見た目には、スリッパというよりもベリーショートのもこもこブーツのような。
「え~と、……『ご利用方法』……『より効果を実感していただくため、素足でお履きください』……」
 あゆみは説明書を片手に、靴下を脱いだ。
 学校と戦車道の練習で丸一日穿いた靴下は蒸れていた。
 脱ぎ去って素足になると、涼しくて解放感があった。
「んー……『足をスリッパに入れ、つま先の位置を調節してください』? つま先の位置って……あ、中に目印の突起があるんだ」
 あゆみはスリッパに素足を差し込み、内部で親指をぐりぐりと動かし、突起を探す。
 あった。
 足指を押しつけると、なかなか気持ちが良い。
「……『次に、かかとを調節します。リモコンの「固定」ボタンを押してください』……リモコン!?」
 あゆみは驚いて箱の中を確かめる。
「うわ、ホントにあった……」
 スリッパにリモコンが付いているなんて、想像していなかった。
 …………。
 これが、時代か……!
 あゆみは一抹の感動を覚えながら、リモコンの『固定』ボタンを押した。
 その瞬間、スリッパのかかと部分がぎゅっと縮こまり、あゆみのくるぶしを締め付けた。
「きゃっ!?」
 あゆみは吸い付かれるような感触に思わず声を上げた。
 血圧計みたいだ……。
 かなりきつい締め付け。といっても、苦痛さは感じない。
 あゆみは軽く宙を蹴ってみた。まったく脱げる気配がない。普段履いているローファーよりも、よほど安定感がある。
「えっとあとは、……『つぼ刺激を開始するには、「開始」ボタンを押してください』」
 説明は以上だった。
 あゆみはすぐさま『開始』ボタンを押そうとして、ふと手が止まる。『停止』ボタンが見当たらない。
「……ま、いっか!」
 そんな細かいことにかまっていられない。
 あゆみはリモコンの『開始』ボタンを押した。

「――んひっ!!?」

 直後、あゆみは足裏の刺激に声を上げた。

「ひあぁっ!! ちょっ……なにこれっ!!? あはっ、やっ、だ、……っ!!!」

 あゆみは耐えきれずその場に倒れ込んだ。
 スリッパの底がもこもことイボのように盛り上がり、あゆみの足裏を不規則に押し込んでいる。
 つぼをマッサージしているというよりも、その動きは……

「くひっ!!? く、くすぐったいっ!! や、やめてっ、あははははははっ!!!」

 スリッパ内部のイボは、ぐりぐりとあゆみの足の裏を押しひっかくように動いた。

「きゃははははははは!? やだっ、なにっ、こんなのいやぁあははははははは!!」

 あゆみは、時間に伴いくすぐったさを増してゆくつぼ刺激に、のたうち回る。

「やっ、外れてっ!!! 外れてよぅ~~あはっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!?」

 スリッパを両手で引きはがそうにも、まったく取れない。
 口の部分が完全にくるぶしを覆って吸い付いている。
 力を込めれば込めるほど、吸い付き、くすぐったさが増してくるような気がした。

「あぁぁぁあ~~っはっはっはっはっはっは!!!? ほんとダメっ!!! ふひひぃぃ~~、なんでぇぇ!? どんどん強くなるうううぅぅっはははははははははは!!?」

 あゆみは突っ伏して、床を掻きむしる。
 バタ足をしたり、地団駄を踏んだりして、スリッパを床に叩きつけても無駄。
 スリッパの内部ではもごもごと複数のイボが動き続けている。
 数は、片足に3つ4つ……いや、10近くあるだろうか……

「くはぁぁあははっはっはっはっは!!? やぁぁぁ、そんなぁうひぃぃいいいいいい!!!?」

 イボを数えようと足裏に神経を集中させてしまったせいか、余計に敏感になる。
 ところどころ強めに押してくる感覚が、痛いようなくすぐったいような、耐えがたい刺激となってあゆみを襲う。
 あゆみは絶叫した。

「くあぁぁああああ~~~~~はははははははは!!! ちょおおおおおおだめぇぇぇぇ~~~へへへっへへへへへへへへへ!!!」

 床をごろごろと転がり、両手を振り回し、足をばたつかせながら大笑いするあゆみ。
 スリッパの底でガンガンと柱を蹴りつけた。それでも一向に刺激は弱まらない。代わりに隣の住人の壁パンチが返ってきた。
 スリッパ内部が熱かった。
 土踏まずを押しつける感覚がしたかと思えば、足指を思い切りつねられるような感覚、踵をごりごり掻かれるような感覚……
 足中をめちゃくちゃに揉みほぐされ、足の形が変形してしまいそうだ……

「ひあぁぁあはははははははははは!!!? はずれてぇぇえぇぇぇへへへっへへへへへ!!! お願いだからぁぁあっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 あゆみは泣き叫び、笑い狂った。

 怪しいダイエット用品にはご用心。


(つづく)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 スパ○の子。卵とソーセージとスパ○。卵とベーコンとソーセージとスパ○。スパ○とベーコンとソーセージとスパ○。スパ○と卵とスパ○とスパ○とベーコンとスパ○。スパ○、スパ○、スパ○、卵とスパ○。
 公式サイトの短いキャラクター説明文からツッコミ要員かと思いきや、OVAの例のシーンでボケ要員だったことが判明。リーダーの澤ちゃん、一人で五人分のボケを処理するとかもはや職人芸。


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