「へぇ、さくらちゃん、自分で結んだロープじゃないと簡単にはほどけないんだね?」
にこやかにいう斎藤さんの前で、林さんは怯えた表情を見せている。さきほどまで木森さんが縛りつけられていた椅子に座らされ、木森さんと同じように両手を体側につけたまま背もたれにロープでぐるぐる巻きにされていた。
「斎藤先輩……、どうして? なにするつもりなんですか?」
林さんが困惑するのも当然だろう。ぼくらは、林さんからロープマジックを見せてもらった直後、三人がかりで林さんを押さえつけて縛り上げたのだ。
「一瞬で縛るやり方、私たちが習得できれば便利なんだけど、正直そんなに時間も取れないし。すでに技を習得しているさくらちゃんが『言いなり』になってくれた方がラクなんだよね」
「先輩が何を言ってるのか、全然わかららないです……」
斎藤さんと林さんがやりとりをしている間に、ぼくは林さんの座る椅子の後ろに回り込んだ。
後ろから抱きつくように腕を回し、彼女のおなかあたりに触れる。
「ひぁっ!?」びくんと肩を上下させる林さん。「まっ、先輩?! どこ触って――」
彼女が言い終える前に、ぼくはこちょこちょと指を動かした。
「ひゃっ、んひっ、ひぃ、ひひっ、ひひひひっ、待ってっ! ひぅうんひひひ、くぅぅ、やめ、やめてくださいっ! ひぃぃん」
林さんはくねくね身をよじって笑い出した。
顔を紅潮させて、歯を食いしばっている。
「お腹はそこそこ強いみたいだよ?」
斎藤さんが林さんの顔を覗き込みながら教えてくれる。
ぼくは、おなかをくすぐっていた指をすこしずつ上へずらしていく。
「んひぃひっひひ!? ちょまぁああ、それ以上はだめぇぇ」林さんの反応が激しくなった。
そこで、いったん手を離し、ロープの隙間から腋の下へ指をねじ込むようにしてくすぐりはじめる。
「くはっ!? んにぇぇえっひひひいひひゃひゃひゃひゃ!! やらぁああんぁなぁあはっはっはっはっはっはっは!!」
林さんは大口をあけて笑いはじめた。
長い前髪を振り乱し、ゆがんだ笑顔をさらけ出している。
「やぁあはっははっはっはっは! な、ななな、なにが目的なんですぁああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
叫ぶ林さんを無視して、ぼくはくすぐり続けた。ぼくの力「くすぐって笑わせた相手を言いなりにする能力」は、しばらくくすぐり続けないと効果がでないのだ。
一分ほどくすぐって、手を止める。
林さんはがくっとうなだれた。
「林さん、体重を教えてくれる?」
ぼくが聞くと、
「それ、……けほっ、言ったら、……やめてくれるんですか?」
林さんはぜぇぜぇと肩で息をしながら聞き返した。
「その反応はまだみたいだね」と、斎藤さん。
「もっと、別の弱点とか、くすぐらないとダメなんじゃないですか?」と、木森さん。
なるほど。たしかに、木森さんのときは、脇腹をくすぐっただけではだめで足をくすぐったあと「言いなり」になった。松原さんのときは、足をくすぐっただけではだめで腋をくすぐったあと「言いなり」になった。能力の効果を得るためには、相手の弱点まで探さないといけないのかもしれない。
「よし、足だ」
ぼくが言うと、斎藤さんと木森さんが林さんの上履きと靴下を脱がしてくれた。
ぼくは林さんの前に膝をついて座る。斎藤さんと木森さんが、林さんの足を抱えて押さえつけ、ぼくのくすぐりやすい位置に差し出してくれる。
「いや、もうやめっ……! わ、わかりました! 体重言えばいいんですよね? 言いますから!」
目に涙を浮かべ、懇願する林さん。ぼくは容赦なく彼女の足の裏をくすぐった。
「んぁあああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
林さんは縛られた椅子をガタンと音を立てて暴れ、
「47! 47キロですからぁあひゃっはははははははははは!!」
体重らしき数字を叫んで馬鹿笑いしている。
ぼくは無視して足指の股をほじくり、くすぐり続けた。
「言ったぁああ! 言ったのにぃいひひっひひ! もぅ嫌ぁあんぁああははははあははは! なんでこんなことするんれしゅかぁあひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃ!!」
林さんは怒っているのか笑っているのかわからないぐしゃぐしゃの表情で叫んでいた。
ぼくにとってその質問は、「言いなりに」になったかどうか判断するためだけに聞いたものなので、どうでもよかった。
「んひいひひひひひひひっぃいぃぃ! あひぃひゃひぃいいいぃいいぃ!?」
下から見上げていると彼女の表情がよく見えた。
足の裏を数十秒くすぐり続けていると、林さんの目の奥がとろんとしてきた。
ぼくが手をとめたあとも、林さんは口を半開きにしてへらへらとしていた。
おそらく「言いなり」できたのだろうが、確実ではない。
さっき体重を言われてしまったため、判断するための質問が思い当たらなかった。
普段なら聞かれて答えづらいデリケートな質問か……。
ぼくが困っていると、斎藤さんが耳打ちしてくれた。
「えっ!? そんなこと聞いちゃっていいの?」
「『言いなり』になってるか判断するにはちょうどいいよ」にっこりとほほ笑む斎藤さん。ぼくは恐怖を覚えた。
「えっと、林さん……、最後に、オナニーしたのは、いつ?」
林さんはヒィヒィと口元を緩ませながら、
「き、昨日れしゅ……」
躊躇なく答えた。
(つづく)
にこやかにいう斎藤さんの前で、林さんは怯えた表情を見せている。さきほどまで木森さんが縛りつけられていた椅子に座らされ、木森さんと同じように両手を体側につけたまま背もたれにロープでぐるぐる巻きにされていた。
「斎藤先輩……、どうして? なにするつもりなんですか?」
林さんが困惑するのも当然だろう。ぼくらは、林さんからロープマジックを見せてもらった直後、三人がかりで林さんを押さえつけて縛り上げたのだ。
「一瞬で縛るやり方、私たちが習得できれば便利なんだけど、正直そんなに時間も取れないし。すでに技を習得しているさくらちゃんが『言いなり』になってくれた方がラクなんだよね」
「先輩が何を言ってるのか、全然わかららないです……」
斎藤さんと林さんがやりとりをしている間に、ぼくは林さんの座る椅子の後ろに回り込んだ。
後ろから抱きつくように腕を回し、彼女のおなかあたりに触れる。
「ひぁっ!?」びくんと肩を上下させる林さん。「まっ、先輩?! どこ触って――」
彼女が言い終える前に、ぼくはこちょこちょと指を動かした。
「ひゃっ、んひっ、ひぃ、ひひっ、ひひひひっ、待ってっ! ひぅうんひひひ、くぅぅ、やめ、やめてくださいっ! ひぃぃん」
林さんはくねくね身をよじって笑い出した。
顔を紅潮させて、歯を食いしばっている。
「お腹はそこそこ強いみたいだよ?」
斎藤さんが林さんの顔を覗き込みながら教えてくれる。
ぼくは、おなかをくすぐっていた指をすこしずつ上へずらしていく。
「んひぃひっひひ!? ちょまぁああ、それ以上はだめぇぇ」林さんの反応が激しくなった。
そこで、いったん手を離し、ロープの隙間から腋の下へ指をねじ込むようにしてくすぐりはじめる。
「くはっ!? んにぇぇえっひひひいひひゃひゃひゃひゃ!! やらぁああんぁなぁあはっはっはっはっはっはっは!!」
林さんは大口をあけて笑いはじめた。
長い前髪を振り乱し、ゆがんだ笑顔をさらけ出している。
「やぁあはっははっはっはっは! な、ななな、なにが目的なんですぁああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
叫ぶ林さんを無視して、ぼくはくすぐり続けた。ぼくの力「くすぐって笑わせた相手を言いなりにする能力」は、しばらくくすぐり続けないと効果がでないのだ。
一分ほどくすぐって、手を止める。
林さんはがくっとうなだれた。
「林さん、体重を教えてくれる?」
ぼくが聞くと、
「それ、……けほっ、言ったら、……やめてくれるんですか?」
林さんはぜぇぜぇと肩で息をしながら聞き返した。
「その反応はまだみたいだね」と、斎藤さん。
「もっと、別の弱点とか、くすぐらないとダメなんじゃないですか?」と、木森さん。
なるほど。たしかに、木森さんのときは、脇腹をくすぐっただけではだめで足をくすぐったあと「言いなり」になった。松原さんのときは、足をくすぐっただけではだめで腋をくすぐったあと「言いなり」になった。能力の効果を得るためには、相手の弱点まで探さないといけないのかもしれない。
「よし、足だ」
ぼくが言うと、斎藤さんと木森さんが林さんの上履きと靴下を脱がしてくれた。
ぼくは林さんの前に膝をついて座る。斎藤さんと木森さんが、林さんの足を抱えて押さえつけ、ぼくのくすぐりやすい位置に差し出してくれる。
「いや、もうやめっ……! わ、わかりました! 体重言えばいいんですよね? 言いますから!」
目に涙を浮かべ、懇願する林さん。ぼくは容赦なく彼女の足の裏をくすぐった。
「んぁあああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
林さんは縛られた椅子をガタンと音を立てて暴れ、
「47! 47キロですからぁあひゃっはははははははははは!!」
体重らしき数字を叫んで馬鹿笑いしている。
ぼくは無視して足指の股をほじくり、くすぐり続けた。
「言ったぁああ! 言ったのにぃいひひっひひ! もぅ嫌ぁあんぁああははははあははは! なんでこんなことするんれしゅかぁあひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃ!!」
林さんは怒っているのか笑っているのかわからないぐしゃぐしゃの表情で叫んでいた。
ぼくにとってその質問は、「言いなりに」になったかどうか判断するためだけに聞いたものなので、どうでもよかった。
「んひいひひひひひひひっぃいぃぃ! あひぃひゃひぃいいいぃいいぃ!?」
下から見上げていると彼女の表情がよく見えた。
足の裏を数十秒くすぐり続けていると、林さんの目の奥がとろんとしてきた。
ぼくが手をとめたあとも、林さんは口を半開きにしてへらへらとしていた。
おそらく「言いなり」できたのだろうが、確実ではない。
さっき体重を言われてしまったため、判断するための質問が思い当たらなかった。
普段なら聞かれて答えづらいデリケートな質問か……。
ぼくが困っていると、斎藤さんが耳打ちしてくれた。
「えっ!? そんなこと聞いちゃっていいの?」
「『言いなり』になってるか判断するにはちょうどいいよ」にっこりとほほ笑む斎藤さん。ぼくは恐怖を覚えた。
「えっと、林さん……、最後に、オナニーしたのは、いつ?」
林さんはヒィヒィと口元を緩ませながら、
「き、昨日れしゅ……」
躊躇なく答えた。
(つづく)