わたし、涼風青葉は今年ゲーム会社に入社したばかりの新社会人です。
 まだまだ勉強中の身ですが、新作ゲームの発売を数ヶ月後に控え、多忙な日々を送っています。

「青葉ちゃん! そろそろ八神さん、起こしてきてくれるー?」

「あ、はい!」

 先輩の篠田はじめさんに言われ、わたしは仕事の手を止め立ち上がります。
 キャラクターデザイナーでチームのリーダー、八神コウさん。
 仕事熱心で、昨日も会社に泊まって徹夜仕事をしていたようです。
 デスクの下ですやすやと寝息を立てている八神さん。
 いつもならみんなの到着に合わせて起きてくる八神さんですが、疲れがたまっていたのでしょう。

「八神さん、おはようございます」

 わたしが声をかけると、八神さんは「う~ん」と寝返りを打ちます。
 起きる気配無し。
 よほど疲れていたのでしょう。
 その仕事熱心さは尊敬しているのですが、パンツ一枚で眠るだらしのなさは、ちょっとどうかと思います。

「八神さん! おはようございます! 起きて下さい! そろそろ時間ですよ」

 こんどは体を揺さぶりながら呼びかけます。
 疲れている人をたたき起こすのは気が引けるのですが、仕事なので仕方有りません。
 心を鬼にしてがんばります。

「八神さん! 八神さん!!」

「……ん、う~ん……」

 八神さんは、いくら呼んでも起きてくれません。
 どうしたもんか……。
 わたしはすこし考えてから、実力行使に出ることに決めました。

 目の前にはすらりと伸びた八神さんの素足。
 白い太もも、膝、くるぶし、綺麗なラインを形作っています。

 わたしはかがみ込んで、八神さんの左足首を掴み上げました。
 アザやまめ一つ無い綺麗な素足。

 わたしは右手の人差し指を立てて、そっと八神さんの足の裏へ伸ばします。

「……ん、んく……っ」

 土踏まずに触れた瞬間、ぴくん、と八神さんの足の指が震えました。
 なかなかよい反応です。

 わたしはそのまま上下に指を這わせます。

「……ふっ、……んふっ、くふっぷ」

 ぴくぴくと震える八神さんの素足。
 八神さんの顔を見てみると、眉間に皺を寄せながらも、くすぐったそうに口元をほころばせています。

 ……ちょっと、楽しい。

 そんな感想を抱いてしまいました。

「八神さぁん? 起きて下さい。じゃないともっとやっちゃいますよー!」

 わたしはわざと意地悪っぽく言いながら、指の動きを速めます。
 足の指の付け根からかかとまでを、上下に何度も往復するように。

「ぷくくくっ……!!! んふっ、ふふふ!」

 八神さんは足の指をきゅっと丸めて、足をひっこめようとしてきました。
 させません。わたしは力を込めて八神さんの足を抱え込みます。

「んふっ……――は……? え、青葉?」

 こちょこちょこちょこちょ。

「――ぶひゃっ!!? あははははははははっ!!!?」

 わたしが五本の指でわしゃわしゃ八神さんの足の裏をくすぐると、八神さんはついに口を開けて笑い出しました。

「ちょっ……青葉っ!!? ななっははっはっはっははっは!!!」

「ごめんなさい! 八神さん! 八神さんを起こすために、仕方無いんです!」

 わたしは八神さんを起こそうと必死で指を弾きます。
 それにしても、いつも仕事でお世話になっている大先輩で尊敬している八神さんが自分の指先ひとつでこんなに乱れるなんて……。
 わたしは不思議な優越感と罪悪感に夢中になっていました。

「あっはっはっはっは!!? もう起きた!! 青葉っ……はっはっはっはっはっはっは!!!」

 八神さんの足の指がくすぐったそうにくねくねと動いています。

「わたしだって本当はこんなことはしたくありません。でも、なかなか起きない八神さんが悪いんです! ごめんなさい!」

「青葉っ!!? はっははっはっはっはっは!!! 話聞けっ……っはっはっは、こらぁあぁはははははははは!!!」

 わたしの指で笑い続ける八神さん。八神さんの笑い声は、心地よくもあり悲痛でした。

 あまりに夢中になりすぎて、そのときのわたしはどうかしていました。
 八神さんの笑い声で集った他の先輩方に止められて、ようやく我に返ったわたしは血の気の引く思いがしました。

 その後、わたしは調子に乗った罰として、八神さんにむちゃくちゃくすぐられて泣かされました。
 もうくすぐりはこりごりです。


(完)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 チャットルームで書きました。合戦で書いた作文は小出しにしていくスタンスです。
 DDD様との合戦は、新しいキャラクターの発見にも繋がり、とても勉強になります。DDD様、いつもありがとうございます。