「こいつは『くすぐりムカデ』! 俺が海外出張の間、ちょっと面倒見てやっててくれ! 定期的に女の子の笑い声を与えてやれば、生きられるからさ」
いとこのアツシさんは、そう一方的に俺にペットを託し、海外へ飛び立ってしまった。
くすぐりムカデという生物は、体長は3mぐらい。胴長のムカデのからだに人間のような5本指の腕が21対生えている。頭部は虫というよりも人間のマネキンのようで、怖い。
とてもかわいいと思えるようなペットではなかったが、小さいころから世話になったアツシさんの大事なペットだ。放置して死なせでもしたら大変。しかたなく引き受けることにした。
くすぐりムカデの世話をはじめて、早一週間。
試しに隣に住む幼なじみのコハルをあてがってみたのだが……
「あぎゃひゃひゃひゃひゃ……えぼっえぼぉおうへひゃあぁあはあははははは!! 死ぬぅううう!! も゛う゛やヴぇぇえいぎぃいひひひ、がひゃっ……あばばばばばあああああぁひゃひゃひゃ!!」
コハルは、目をむき、鼻水と涎、尿まで垂れ流して笑い狂っている。
くすぐりムカデはコハルのからだに巻き付き、42本の腕を駆使して器用にくすぐりまくっている。首筋や腋の下、脇腹、鼠径部や太もも、膝裏、ふくらはぎ、足の裏など、人間のくすぐったい部位、かゆいところにはすべて手が届く。
毎日、部活帰りのコハルに突撃していたのだが、日に日にコハルの笑い声に元気がなくなっていった。
コハルの体調が心配だし、くすぐりムカデも動きが遅くなっている。
どうやら、日々新鮮な笑い声を与えないといけないようだ。
・・・
翌日、くすぐりムカデを連れて公園にやってきた。
周囲からは奇異の目で見られている。
くすぐりムカデは、特に気に入る女子がいないのかげっそりしている。
1時間ほど歩き回ったあたりで、くすぐりムカデの触角がぴくっと立ち上がった。目当ての子が見つかったらしい。
視線をやると、ベンチにパーカーを着たポニテの女の子が座り、菓子パンを食べていた。見ようによっては中学生にも見えるし大学生にもみえるような、童顔の子だった。ひざ元に置かれた手提げから、どこかのバンドのフライヤーとパンフレットが見えた。目当てのバンドイベントの帰りか、あるいはイベント開始前の時間つぶしなのかもしれない。
くすぐりムカデが興奮しているので「待った」をかけて、おそるおそる彼女に近づく。
すると、こちらが声をかける間もなく、そそくさとパンを片付けて彼女は立ち上がり、足早にベンチを離れてしまった。危険察知能力が高すぎる。
くすぐりムカデに「よし」の合図を出すと、またたくまに彼女をがんじがらめにした。
「やっ……なにっ!?」
彼女てから滑り落ちた手提げを拾い、中を拝借。サイフに大学の学生証が入っていた。名前はエマというらしい。
くすぐりムカデは、エマさんの腕を万歳に引っ張り伸ばし、右足を掴んで持ち上げ、靴と靴下を素早く脱がす。そして、40本近い腕でこちょこちょ全身をくすぐりはじめた。
「んぐっ!? ぷはっ……ひぁはっ、はっははっはっは!? たははは! 嫌あぁんっぅうひっひっひひひひひひひひ」
エマさんは済ました表情から一転、だらしなく眉をゆがめ、笑い出した。
くすぐりムカデの腕はパーカーの裾から服の中に入り込み、おなかや脇など素肌をくすぐっている様子。
「ひぃいんっ!! ひぃひひひいひ、ひゃめっ、笑いたくなひぃいひひっひひひひいひひひ!!」
くすぐりムカデは、新鮮な笑い声で元気を取り戻した様子。激しく、乱暴に指を動かすと、エマさんのきゃしゃな体がびくびくと悶えた。
「きっ……いぃいひひひ、帰してっ……! これから予定あるからぁああひゃはひゃはやはははははっはあははは!」
それから2時間あまり、くすぐりムカデはエマさんをくすぐり続け、すっかり元気になった。
エマさんは失禁しながらもへらへらバグったような笑い声を上げ、解放されてもなお地面にへばったまま動けなくなっていた。
良い狩場を見つけた。
明日以降も、くすぐりムカデの好みに合う子が見つかるといいな。
(完)
いとこのアツシさんは、そう一方的に俺にペットを託し、海外へ飛び立ってしまった。
くすぐりムカデという生物は、体長は3mぐらい。胴長のムカデのからだに人間のような5本指の腕が21対生えている。頭部は虫というよりも人間のマネキンのようで、怖い。
とてもかわいいと思えるようなペットではなかったが、小さいころから世話になったアツシさんの大事なペットだ。放置して死なせでもしたら大変。しかたなく引き受けることにした。
くすぐりムカデの世話をはじめて、早一週間。
試しに隣に住む幼なじみのコハルをあてがってみたのだが……
「あぎゃひゃひゃひゃひゃ……えぼっえぼぉおうへひゃあぁあはあははははは!! 死ぬぅううう!! も゛う゛やヴぇぇえいぎぃいひひひ、がひゃっ……あばばばばばあああああぁひゃひゃひゃ!!」
コハルは、目をむき、鼻水と涎、尿まで垂れ流して笑い狂っている。
くすぐりムカデはコハルのからだに巻き付き、42本の腕を駆使して器用にくすぐりまくっている。首筋や腋の下、脇腹、鼠径部や太もも、膝裏、ふくらはぎ、足の裏など、人間のくすぐったい部位、かゆいところにはすべて手が届く。
毎日、部活帰りのコハルに突撃していたのだが、日に日にコハルの笑い声に元気がなくなっていった。
コハルの体調が心配だし、くすぐりムカデも動きが遅くなっている。
どうやら、日々新鮮な笑い声を与えないといけないようだ。
・・・
翌日、くすぐりムカデを連れて公園にやってきた。
周囲からは奇異の目で見られている。
くすぐりムカデは、特に気に入る女子がいないのかげっそりしている。
1時間ほど歩き回ったあたりで、くすぐりムカデの触角がぴくっと立ち上がった。目当ての子が見つかったらしい。
視線をやると、ベンチにパーカーを着たポニテの女の子が座り、菓子パンを食べていた。見ようによっては中学生にも見えるし大学生にもみえるような、童顔の子だった。ひざ元に置かれた手提げから、どこかのバンドのフライヤーとパンフレットが見えた。目当てのバンドイベントの帰りか、あるいはイベント開始前の時間つぶしなのかもしれない。
くすぐりムカデが興奮しているので「待った」をかけて、おそるおそる彼女に近づく。
すると、こちらが声をかける間もなく、そそくさとパンを片付けて彼女は立ち上がり、足早にベンチを離れてしまった。危険察知能力が高すぎる。
くすぐりムカデに「よし」の合図を出すと、またたくまに彼女をがんじがらめにした。
「やっ……なにっ!?」
彼女てから滑り落ちた手提げを拾い、中を拝借。サイフに大学の学生証が入っていた。名前はエマというらしい。
くすぐりムカデは、エマさんの腕を万歳に引っ張り伸ばし、右足を掴んで持ち上げ、靴と靴下を素早く脱がす。そして、40本近い腕でこちょこちょ全身をくすぐりはじめた。
「んぐっ!? ぷはっ……ひぁはっ、はっははっはっは!? たははは! 嫌あぁんっぅうひっひっひひひひひひひひ」
エマさんは済ました表情から一転、だらしなく眉をゆがめ、笑い出した。
くすぐりムカデの腕はパーカーの裾から服の中に入り込み、おなかや脇など素肌をくすぐっている様子。
「ひぃいんっ!! ひぃひひひいひ、ひゃめっ、笑いたくなひぃいひひっひひひひいひひひ!!」
くすぐりムカデは、新鮮な笑い声で元気を取り戻した様子。激しく、乱暴に指を動かすと、エマさんのきゃしゃな体がびくびくと悶えた。
「きっ……いぃいひひひ、帰してっ……! これから予定あるからぁああひゃはひゃはやはははははっはあははは!」
それから2時間あまり、くすぐりムカデはエマさんをくすぐり続け、すっかり元気になった。
エマさんは失禁しながらもへらへらバグったような笑い声を上げ、解放されてもなお地面にへばったまま動けなくなっていた。
良い狩場を見つけた。
明日以降も、くすぐりムカデの好みに合う子が見つかるといいな。
(完)