前のプール授業のときは、クラスの3分の1が素足履きを見せてくれた。さすがに減るかなと思いきや、その昼休み、なんと2人増えて7人が素足で上履きを履いていた。
 やっぱりクラス女子のお手本的存在のサトウさんが素足履きだったことの影響が大きかったのかも知れない。加えて、その日は一段と蒸し暑かった。
「へぇ、ミカちゃん裸足なんだ」
「うん気持ちいいよ? ミユキも脱ぎなよ」
「そっか。じゃあ私も脱ごっかな」
 などと素足履きを推奨する声が教室のいたるところで聞こえてきた。
 僕の心臓が大きく高鳴る。
 あっというまに、新たに2人が靴下を脱いだ。
 これで9人、つまりクラスの女子の半数以上が素足履きになった。
 教室後部に目をやると、前回と同様に、サトウさん、アライさん、ヒノさん、イトウさんが集まっていた。
 この前はヒノさんだったが、今度はイトウさんが足の裏をくすぐられている。
「やははははははっやだぁぁはははははは!!」
「この前の仕返しだうりゃー」
 ヒノさんって、こんなキャラだっけ? 裸足になって解放的になったのか、ノリノリだ。
「なになにー? 面白そうなことやってるじゃん」
「私も遊ぶー」
 などと、他の女子たちも集まってきて、何故かいきなりアライさんが上履きを脱がされくすぐられ始めた。
「えええっ!!? やっ……ちょっ!? なんであたしぃぃぃ~~ひゃっはっはっはっはっはっは!!?」
 教室後部に7人の制服裸足が集まってじゃれ合っている。凄まじい光景だ。
 6人でひとりの足の裏を寄ってたかってくすぐる遊びは佳境を迎えた。
「はい! 今日からプール授業の後、女子はみんな裸足になりまーす」
 突然、サトウさんが宣言した。
 すごいこと言い出した!
 みんなでくんずほずれつくすぐり合ってテンションがおかしなことになっているらしい。めっちゃ楽しそうだ。
 でも実際のところ、盛り上がっているのは教室後部の7人だけで、他のクラスメイトは何も聞いていない。
 女子みんなってことは、残り6人、どうするのか……。なんて思っていると、
「ねぇねぇ、モリモトさん? 靴下暑くない? 脱ごうよ」
 いきなりサトウさんが、席に座って本を読んでいたモリモトさんに声をかけた。大胆不敵!
「いや……別に暑くないけど……」
 怪訝そうな顔をするモリモトさん。そりゃいきなり裸足になれなんて言われたら意味不明だろう。しかし、モリモトさんは、サトウさんら素足履きの女子達の姿を見回して、
「あ、みんな脱ぐ感じ?」
 と、何をどういう思考回路で納得したのか自分から靴下を脱いだ。細い素足。
 脱いだ靴下は机の横の鞄にしまい、素足で上履きを履き直すと、
「これでいい?」
「やった!」
 喜ぶサトウさんは、他の女子とハイタッチをした。
 これで残り5人。
 サトウさんGJすぎる。僕は成り行きから目が離せない。後ろの席の男(一応親友)に一方的に喋らせておいて、僕は彼女らの一挙一動を見逃すまいと必死に目を見張った。
「ねぇカワ――」
「やだよ」
 窓際でトモザワさんと喋っていたカワイさんは、サトウさんが話しかけた瞬間に拒否を示した。
「こっちの話、聞こえてた?」
「聞こえるし。なんで裸足になんなきゃいけないのか意味わかんないし」
 カワイさんは険のある目つきでサトウさんをにらんだ。もの凄く正論だ。
「そっか……残念」
 さすがにサトウさん、引き下がるか――
「と、見せかけて!」
 7人の女子が一斉にカワイさんに抱きついた。
「ちょっやめっ」
 などとカワイさん、抵抗するが、さすがに7人がかりではどうしようもなく、上履きを脱がされる。
「ちょこら! ユナっ! 助けて!」
 ユナというのはトモザワさんだ。トモザワさんは怯えた表情でフルフル首を左右に振ると、涙目で走り出して教室を出て行ってしまった。よっぽど靴下を脱がされたくなかったのかもしれない。
「ちょっとユナぁぁ裏切るのかぁぁ!」
 カワイさんはトモザワさんの背中に向かって怒鳴った。
 そんなことをしている間に、両足ともつま先を掴まれ、靴下を引っ張り脱がされた。
 すぽんと飛び出したカワイさんの素足は、プールの後すぐ靴下を履いたせいもあってか、かなり糸くずがついていた。
 そこまでだけでもすごい光景だったのだが、さらに靴下を奪った女子たちは、カワイさんの足の裏を寄ってたかってくすぐりはじめた。
「ちょっ!? うはっ!? バっカ――っ、あぁぁあ~~はっはははっはははっはははっはやだぁぁぁあははははははは!!!」
 さっきまで靴下と上履きをきちんと履いていたカワイさんが、上履きも靴下も履いていない素足の足の裏をくすぐられて馬鹿笑いしている。
 僕のテントは今にも裂けそうだった。痛い。伸縮するタイプを履いておけばよかった。
「やめてぇぇえ~~いやっはっはっはっはっはっはっは!!」
 首を左右に振って嫌がっているが、笑ってるのでなんだかよくわからない。滑稽に見える。さらに、くすぐられている足の指がデタラメに動いている様子がもの凄くエロく見える。
 僕自身には経験がないためよくわからないが、この年代の女子って、足の裏がそんなに弱いのだろうか?
 しばらくくすぐられて解放されたカワイさんは、素直に素足で上履きを履いていた。
「ね、涼しいでしょ?」
 と、サトウさんに聞かれて、
「別に悪くはないけど……まだちょっとむずむずする」
 顔を赤らめてそんなことを言っている。
 大笑いしたせいか、表情が穏やかに見えた。
 サトウさんは何か要領を得たのか、次のムトウさんには、何も言わずにいきなり後ろから抱きついて、みんなで押し倒して上履きと靴下を脱がし取った。
「な――いきなり何すっ……ぶひゃぁあはははははははははははちょっ、なにぃぃぃ~~~ひひひひひひひひ!!? なんなのぉぉ~~うひゃひゃ!?」
 突然素足にされて足の裏をくすぐられたムトウさんは、心の準備ができていなかったのか、かなり盛大に吹き出して笑った。
「うひひひひひひひひひひっ!! ほひゃぁぁあ~~っへっへっへっへっへ!!?」
 かなり激しい笑い方だった。
 一年のときもクラスが一緒だったムトウさん。清楚なイメージで、実はちょっと好意を寄せていた。成績優秀で、一回数学を教えてもらったときはすごく説明わかりやすかった。すごくまじめな子で服装を着崩したところも一度も見たことがなかった。
 そんなムトウさんの下品な馬鹿笑いに、好感度はうなぎ登りだった。
「うひゃひゃひゃひゃひゃっにゃぁぁあ~~ひゃっはっはっはっはっはっは~~!!」
 少し湿り気のある髪の毛を振り乱して、乱れた制服を直す余裕もなく笑いまくるムトウさん。嬉しすぎて、鼻血がでそうだった。
 ムトウさんの濡れ場に夢中になりすぎていたせいで、すぐ隣で行われていた惨事に気づかなかった。
 突然真横から何か飛んできて、顔に当たった。
 布? ちょっと湿っている。掴んでみると、靴下だった。
 見ると、すぐ隣の席のカタオカさんが4人の制服裸足女子に組み伏せられて、足の裏をくすぐられていた。
「あははははははははっ!!! やめてよぉぉ~~っはっはっはっはっはっは~~!!」
 そういえば、ムトウさんをくすぐっているのが4人。なにげに仕事を分担している。どういう流れなのか、靴下を履いている女子を見つけたら、素足に剥いてくすぐるまでがセットになっているらしい。カタオカさんを襲う側のリーダーはどうもカワイさんっぽい。完全に制服裸足組に寝返ったようだ。
 僕が呆然とカタオカさんの脱がされた靴下を手にとってその汚れ具合を見ていると、正面の名前を出す価値のない男(親友)が「おいお前等うるせーよ!」と悪態をついて、僕の手から靴下を奪い、カワイさん達に投げ返してしまった。初めて男(親友)に殺意を抱いた。目の前で制服に裸足の女子達がくんずほずれつじゃれ合っているにもかかわらず、速攻で僕への語りを再開した男(親友)に、ゲイ疑惑が生まれた。
 しばらくして笑い声が止んだ。
 くすぐりから解放されると、ムトウさんもカタオカさんも、きちんと素足で上履きを履いていた。カタオカさんは平静っぽかったが、ムトウさんはちょっと恥ずかしそうだった。
 あと2人だ。逃げてしまったトモザワさんと、放送部で教室にいないタカハシさんだ。
 昼休みが残り5分になって、タカハシさんが教室にもどってきた。
 もどってくるや否や、女子達に取り囲まれて、あっという間に上履きと靴下を脱がされていた。
「うぇぇええええ!!? なにっいきなりぃぃぃ~~たはははははははははは!!?」
 タカハシさんはものすごいアニメ声なので、笑い声は特に萌えた。
 教室を見回してみると、誰の物かわからない靴下が何足か投げ出されるように散らばっている。どれも足の裏の部分が結構黒ずんでいて、あらためて、女子も足は汚れるんだなぁと再確認できた。
 予鈴が鳴ってしばらく、5時間目が始まる直前になって、そろ~りとトモザワさんが教室に帰ってきた。
 さすがにサトウさんたちも授業開始直前だったので自重したらしい。
 5時間目の授業中は気が気じゃなかった。
 クラスの女子15人中、トモザワさんを除く14人が素足で上履きを履いているのだ。異常事態だ。股間が痛い。
 正午を過ぎて、体感温度がさらに上がっていた。
 かなりの人数が机の下で上履きを脱いで、素足をぶらぶらとさせたり、机の脚に足の指をくにゃっと押しつけたりしていた。
 わざと消しゴムを落としてしゃがんでみた。ずらりと机の下に並ぶ素足はまさに絶景! 股間はもう悟りの域に至っていた。来週は替えのパンツを用意しておこうと思った。
 5時間目が終了すると、トモザワさんはすぐに席を立ち逃げようとした。
 しかし、カワイさんに通せんぼされ、
「よくもさっきは見捨ててくれたねぇ」
「トモザワさんも仲間になろうよ~」
 と、サトウさん達に襲われて、あっという間に上履きを脱がされた。
 女子達がわらわらと集まってきてよく見えない。
 女子集団の頭上から、ぽいっ、ぽいっ、と二足靴下が飛び出してきた。トモザワさんもついに素足にされたらしい。
 おとなしい感じのまじめっぽい子なので、素足でいるところがあんまり想像できない。
 そんな感じでドキドキしていると、
「ふひゃははははははははは!!? うにゃあぁあああははははははははは!!!」
 激しい笑い声が聞こえてきた。
 一瞬誰の声かわからなかったが、よく聞けばトモザワさんだった。
 物静かなトモザワさんがあんな声で笑うなんて!
「ふひひひひひひひひひひっいぃぃぃ~~っひっひっひっひっひ嫌あぁぁ~~!!」
 女子集団の間から垣間見えた。
 トモザワさんは両手両足をしっかり押さえつけられて、素足にされた足の裏をくすぐられていた。
 普段から色白な子だとは思っていたが、みんなの素足と比べてみても、白い足だった。
 散々笑わされたトモザワさんも、6時間目は素足に上履きを履いて授業を受けていた。
 放課後には、
「結構裸足もいいよね」
 と上履きを脱いで足をくねらせるカワイさんの言葉に、
「うん、まあ……涼しいかも……」
 と、トモザワさんは恥ずかしそうに感想を漏らしていた。 
 そうしてこの日、クラスの女子15人全員が、素足履きを見せてくれた。
 さすがに帰る前にほとんどの女子は靴下を履き直していたが、何人かはそのまま素足にスニーカーを履いて帰っていた。
 その日から夏休みが始まるまで、僕のクラスでは、プール授業の後は女子全員が、通常時でも何人かの女子は必ず素足で上履きを履いていた。イトウさんやマツヤマさんは常連で、ときどきカワイさんやタカハシさん。ムトウさんが素足で登校してきたときには、思わずガッツポーズをしてしまった。おそらく女子のほぼ全員が、一度や二度は自発的に素足に上履きで終日過ごしていた。あんなに嫌がっていたトモザワさんも、プール授業の無い平日に、一回だけ、朝から素足だった。心境の変化を想像するだけで、ご飯が進んだ。休み時間や昼休みに教室の後ろで騒がしく行われる、足の裏をくすぐり合う遊びも、結構長く続いていた。
 本当に最高のクラスに恵まれたせいで、その夏、僕は、紳士から仙人に、そして植物になった。


(完)





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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 ご読了、ありがとうございました。