その日、小中一貫のK学園は平穏だった。

 初等部二年二組の教室。
「ヨシダさん、何読んでるの?」
 片山愛梨沙(かたやま ありさ)が、吉田結衣(よしだ ゆい)に声を掛けた。
「学級文庫」
 席に座った結衣は本のページから視線を上げずにぼそりと答えた。蚊の鳴くような小さな声だった。
「えっと、そうじゃなくて本のタイトル聞いたんだけど……なんか字が一杯で難しいそうだね。おもしろい?」
 すると、結衣はうーんと首をひねった。
 愛梨沙は苦笑いした。なかなかコミュニケーションを取るのが難しい。
 ふと、結衣が視線を上げ、口をぱくぱくと動かした。
「え?」
 愛梨沙は聞き返した。結衣がせっかく言葉を発してくれたのに聞き逃してしまったのだ。
 昼休みの教室は騒がしかった。クラスの男子達が走り回りはしゃいでいる。
 結衣はもう本に視線を落としてしまっていた。やっぱり会話より本を読みたいらしい。
 愛梨沙は気を取り直して、
「あのさ……、吉田さんいっつもひとりでいるからさ、一緒に遊ばない?」
 そのとき、走り回っていた男子が転んで、結衣の席につっこんできた。
 がしゃんと激しい音がして、結衣は床に倒れこんでしまった。
 愛梨沙は突然のことにびっくりして固まってしまった。
「くそ~! やったなぁ~!」
 倒れ込んできたやんちゃ坊主、岸(きし)は起き上がると、結衣には一瞥もくれずに他の男子集団に叫んだ。
 愛梨沙が見ると、むくっと顔を起こした結衣は目にじわりと涙を浮かべている。
 岸がそのまま駆け出そうとするので、
「ちょっと! 吉田さんにちゃんと謝ってよ」
「はぁ?」
 岸は本気でわけがわからないというように首を傾げた。
 愛梨沙はいらっとした。
「吉田さん転けさせておいて、そんな態度ないでしょ」
「なんで? こっちだって痛かったし」
「そんなのそっちの問題でしょ。吉田さんに謝って」
「なんで片山に言われなきゃいけないんだよ! 意味わかんねぇ」
 愛梨沙と岸は言い合いになった。
 あと一歩で手が出るかというところで、ひとりの男子生徒が割って入った。
「いや、ごめんごめん! 俺が突き飛ばしたんだ! 俺が全面的に悪い! ごめん吉田さん」
 クラスの男子のリーダー的存在の池田(いけだ)だった。
 彼は謝罪しながら、尻餅をついた結衣に手を伸ばした。
 結衣はびっくりしたように目を見開いた。
「痛かったでしょ。ごめんね。許してくれる?」
「……許す」
 結衣はぽそりと言って、池田の手を取った。頬がほんのり赤い。
 怒りの行き場を失った愛梨沙と岸は、なんとなく互いにべっと舌を出して、矛を収めた。

 初等部四年一組前の廊下。
「おいタナカ、行けよ」
「ちょっ、こらっ、おさないでょ!」
 小声でじゃれる四年生の男子二名。
 四年四組のシャイボーイ田中(たなか)は他クラスの威圧的な視線に耐えながら、ゆっくりと教室内のとある女子生徒の席へ向かう。
「あ、あのっ」
「はい?」
 ぼんやりと窓の外を眺めていた幣原由莉奈(しではら ゆりな)は振り返った。
「幣原さん。ぼぼ、僕。あなたのことが好きです。お付き合いしてください」
 静寂に包まれる教室。
「ごめんなさい。私、あなたのこと、知らないの……」
 由莉奈は視線を落とした。
 途端に教室内は爆笑に包まれる。
「……ぅっ!」
 田中は唇を噛みしめた。
 二度も同じクラスになり、委員会活動で一緒だったこともあるのに、覚えられていないのはショックだった。
「だからその……」と由莉奈は言葉を繋げていたが、外野から「フラれたんなら帰れよ」「釣り合わねーよ」「ひとのクラスで何やってんの?」などと野次が飛んだ。
 田中は耐えきれず、由莉奈に背を向けて走り去る。
「お友達からなら……」という由莉奈の言葉は田中に届かなかった。

 初等部五年生の男女が運動場でサッカーをしている。
「こいや! パス!」
 体育会系の男子生徒に交じって人一倍大声を出すスカートの少女、芦田早希(あしだ さき)。
「おいっ! 芦田に回させるな!」などと声が響く中、本日四度目のゴールを決める早希。
「くそぅ……芦田になんか弱点ねぇのかよ」
 ずたぼろに負かされたサッカー部のエース三木(みき)は悔しそうに早希の横顔をねめつけた。

 K学園から数百メートル離れた小道をひとりの少女が歩いていた。
 小磯美咲(こいそ みさき)。
 中等部の二年生。寝坊癖があり、基本的に学校は午後から行くのが常である。
「あ~別に行かなくてもいいんだけどなぁ~。アヤカに怒られっからなぁ~」
 不良を自称し教師との喧嘩も絶えない美咲であったが、幼馴染みで親友の石橋彩夏(いしばし あやか)には頭が上がらなかった。
「あ、そか。連絡入れとかなきゃ」
 歩きながら携帯を取り出すと、すでに彩夏から『起きたの!?』と怒りのメールが入っていた。『今登校中』と返信する。
 彼女の携帯には、二人きりで並んで撮ったプリクラが貼られてある。
「そんなに怒るなよ……」
 プリクラの彩夏は満面の笑みだ。美咲は彩夏に怒られる毎日も、それほど嫌いじゃなかった。
「ん?」
 校門まであと少しというところで、異変に気付いた。
 黒い車が次々と学園に入っていく。
 何かあったのかと足を早めた途端、
「君、可愛いね。K学だろ? 送ってってあげるよ」
 いつの間にか真横にやってきていた黒い車の中へ、美咲は連れ込まれた。

 K学園の中等部二年一組の教室にて、石橋彩夏が携帯のメールを確認すると、少しむすっとした様子で窓の外を見た。
「小磯さん、来るって?」
「うん。もう! 給食も終わっちゃったのに! 遅すぎるよ」
 クラスメイトの言葉にぷりぷりと対応する彩夏。
「ホント、彩夏は小磯さんのお母さんみたいだよね。もう一緒に住んじゃえばいいのに」
「何言ってるの! 私が一緒になんか住んだらミサちゃん。今よりもぐーたらになるに決まってるじゃん! ミサちゃんは自立しないといけないの!」
「うわ……まじで婆臭い」
「なんですと!?」
 愉快な会話を交わす中、校内放送用のスピーカーが、ジ、ジ、と鈍い音を立てた。電源が入ったようだ。
 昼休み終了までまだ時間あるのになぁ、と皆首をひねる。

『あー、あー、……全校生徒に告ぐ。全校生徒に告ぐ。ただちに体育館に集まれ。この学園は我々●●●が占拠した』

 K学園の平穏は唐突に崩れた。

~~~

 体育館。冷たい床の上に三角座りをして怯えるK学園の女子生徒達。
 学園を占拠したテロ集団のリーダー近衛(このえ)は、おもむろに立ち上がると、ひとりひとり、生徒を指差していった。
 指を差された生徒は覆面を被った構成員に腕を掴まれ、ステージの上に引きずられていく。
 ステージに上げられた四名の初等部の少女達は一様に怯えている。
 二年生の片山亜梨沙はともに連れ出された吉田結衣の肩を抱き、自分に言い聞かせるように励まし続けている。
「吉田さん、大丈夫だよ……怖くないよ」
「……ん」
 四年生の幣原由莉奈は、不安そうな表情でうつむいている。
 五年生の芦田早希は、最年長者としてしっかりしなくてはと思ったのか「私たちをどうするつもりなんですか?」と覆面構成員に尋ねている。返答はない。
 そこへ、
「ふざけんな! 放せよ!」
 小磯美咲がステージに引っ張り上げられてきた。腕を掴んだ構成員のからだをげしげしと蹴り続けている。
 五人がステージに揃ったところで、近衛が声を上げた。
「全員、上履きと靴下を脱いで座禅を組め!」
 初等部の四人は、突然の指示にきょとんとした表情を浮かべた。
 美咲は変わらず構成員を蹴り続けている。
「さっさとやるんだ!」
 恫喝すると、初等部の四人はびくっと肩を震わせ、おずおずと上履きを脱ぎはじめた。

「みんな、逆らわない方がいいよ……」
 と、まっさきに靴下まで脱ぎ座禅を組んだのは早希だった。
「足の裏を上にするんだ」
 近衛が言う。
 早希は言われた通り、素足の足の裏が天井へ向くようあぐらをかいた。
 くるぶしの下あたりまで小麦色に日焼けした脚。普段はスニーカーソックスを穿いているためだろう。ハイアーチの土踏まずをじろじろと見られ恥ずかしいのか、足の指がきゅっと縮こまった。

「結衣ちゃん……私たちも」
 と亜梨沙が促す。亜梨沙は自分のつま先を持って、すっと靴下を引っこ抜いた。結衣はしぶりながら、指を靴下口にひっかけゆくっりと脱いだ。
 ふたりともぺたんと尻餅をついて、両手で自身の脚を持ち上げあぐらを作る。
 天井を向いた二人の素足。
 亜梨沙は正常足。結衣は少し扁平足気味だった。

 由莉奈は靴下を脱ぐことにかなりの抵抗感があるのか、なかなか動こうとしない。
「お前、早く脱げ。二年生の二人にできることがお前にはできないのか」
「……あ、その、私、あぐらがかけません」
 由莉奈は泣きそうな表情だった。
 近衛は構成員へ顎で指示した。
 構成員が二人がかりで由莉奈の靴下を脱がしにかかった。悲鳴を上げる由莉奈だったが、無理矢理足を押さえつけられ、あぐらを作らされた。
「あぅ……」
 由莉奈は顔を真っ赤にして、涙を流してしまった。
 天井へ向けられた素足は驚くほど白い。まるで赤ちゃんのような扁平足だ。足指の間に靴下の糸くずが挟まっている。
「おいおい。そんなに泣いたら可愛い顔が台無しだろ」
 近衛が言うと、由莉奈の後ろにいた構成員が、彼女の両足の裏に指を当てた。
「ひゃぅっ!?」
 甲高い由莉奈の声に、早希、亜梨沙、結衣もびくっと顔を向けた。
「ひゃはっ……、やっ、やめて……っふひ」
 構成員は由莉奈の素足にこちょこちょと指を這わせていた。
 由莉奈の足の指がびくっと丸まった。
「おい、せっかくかわいい土踏まずにシワができてもったいないだろう。足の指を反らせろ、そして『土踏まずの真ん中を指で引っ掻くようにこちょこちょしてください』と言え」
「ひっ、そ、そんな……言いたく、ないですっ」
 由莉奈は顔を真っ赤にして首を左右に振った。

「そっちもはじめろ」
 近衛の一声で、亜梨沙と結衣、早希の後ろに立っていた構成員達も一斉に三人の足の裏をくすぐりはじめた。
「きゃははははっ!?」
「ひゃはっ……ふっ、く、……うはっ! ははははっ」
「やだっ……! やはははははっ、なにっ!? あははは!」
 亜梨沙はいきなりのことで準備ができていなかったらしく、すぐに笑い声を上げた
 結衣は少し耐えたものの、すぐに笑いはじめる。
 早希はとっさに逃げようとするが、構成員に押さえつけられくすぐられた。あぐらの上体で両手両足を構成員に支えられているため、立ち上がることができなかった。
「ぷっ――ふっ!! ふひゃひゃひゃっ!!」
 必死にこらえていた由莉奈もついに吹きだした。
 四人ともくすぐったさから逃れるために、必死に足の指を丸めている。
「聞こえなかったか? 足の指を反らせろ、そして『土踏まずの真ん中を指で引っ掻くようにこちょこちょしてください』と言え。全員がちゃんと言えれば、解放も考えてやるぞ」

「きゃはははははっ! つっ、土踏まずのまんなにゃかをっ」
 笑いながら、真っ先に言い始める亜梨沙。
「はははは……土踏まず……ひゃははははっ!! 真ん中っ、あぁぁはっはははは!!」
 恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、必死に言葉を繋ぐ結衣。
「ふひゃひゃひゃひゃひゃっ!! あはぁぁぁぁつちっ、つちぃぃい~~っひっひひひひひひひひ!!」
 一度笑い出してしまったら止まらないのか、言葉にならない由莉奈。
「くふふふっ、土踏まずの真ん中を指で引っ掻いてあぁぁああははははははははははは!!!」
 なんとか笑いをこらえて言葉を繋ごうとする早希。「解放」という言葉を聞いて、責任感が芽生えたのだろう。

 四人の様子を眺め、満足げに頷く近衛。
 ステージの端を見ると、まだ美咲は上履きも靴下も穿いたまま、構成員と殴り合いをしている。
「おい。そっちはまだか。中学生相手に何を手こずっているんだ。おい! 大人の言うことを聞け!」
「あたしがなんでお前等の言いなりになんなきゃなんないんだよ!」
 反抗を続ける美咲。
 近衛はしびれを切らし、美咲の通学鞄を手に取った。路上で彼女を拾った際に没収したものだ。
「君がそんな態度を取るならしかたないなぁ」
「はぁ? ……あ! あたしのバッグ! 返せよ」
 近衛は彼女の携帯を取り出し、構成員に投げ渡した。
「このプリクラに映っている女子生徒を見つけて連れてこい」

 体育館に集められた生徒の中から石橋彩夏が見つかり連れてこられるまで、五分もかからなかった。
 構成員達は美咲の目の前で、彩夏の上履きと靴下を引き剥ぎ、両手両足をおさえつけて全身をくすぐった。
「にゃはははははははははっやめてぇぇ~~~!!!」
 彩夏は全身をびくびくと震わせて大笑いしている。
 美咲は親友の笑い狂う姿を見せつけられ、罪悪感に打ちひしがれた。
「ほら。君が大人の言うことを聞かないから、お友達がこんな目に遭うんだよ」
「やめろ! 彩夏は関係ないじゃん!」
 美咲は吠えた。
「あぁぁあぁ~っはっはっはっはっはっはっは!! ミサちゃん助けてぇぇぇっはっはっはっはっはっは!!」
 彩夏は素足の足の裏をがりがりと激しくくすぐられ、目を剥いて笑っている。
 美咲はたまらなくなって、
「わかった! あたしが言うこと聞けばいいんだろ」
 自ら上履きと靴下を脱ぎ捨て、あぐらをかいた。
 天井を向いた素足はてきどにくびれた美しいアーチを持っていた。
「ほら! これでいいだろ? 彩夏を解放しろよ」
 構成員達は彩夏をくすぐり続けていた。
「何か言うことはないのか?」
 近衛に言われ、美咲はハッと気づいた。再び笑い続ける彩夏に目をやって、顔をしかめた。
「う……、土踏まずの真ん中を、引っ掻いて、くすぐってくだ、さい……」
 美咲は震える声で言った。
「よし。じゃあ望み通りに。やれ」
 近衛の指示で、構成員が美咲の足の裏をくすぐりはじめた。

 数分が経った。
「あはははははははははっ!? 彩夏はっ、彩夏は関係ないっていってんのにぃぃ~~ひゃっはっはっはっはっはっはっは!!!」
「ふにゃははははははははやめてぇぇえぇ~~あははははははははは!!」
 美咲と彩夏は隣り合わせであぐらをかかされ、初等部の四人と同じように足の裏をくすぐられていた。美咲はくびれたアーチをなぞるようにくすぐられ、彩夏は扁平足をほじくられるようにくすぐられた。、
「関係ないなら解放する? 誰がそんなこと言った? 君たちはずいぶんと手こずらせてくれたからね。全員にペナルティだ」
 近衛の一声で、初等部の四人のくすぐる指も激しくなった。
「きゃははははははいひゃはははははっ!!!? だめぇぇ~~あはははははは」
 亜梨沙は激しく首を左右に振って大笑いしている。
「はひははははっはあははっ!!! ふはぁぁぁっはっはっはっはっはっは~~!!!」
 結衣は涙を浮かべ、眉をへの字にして大笑いしている。
「ふひゃひゃひゃひゃひゃあぁぁああひぎぃぃぃぃぃぃっひっひっひっひ」
 由莉奈は整った顔をぐしゃぐしゃにして、舌を出してバカ笑いしている。
「あぁあぁぁあはははははははやだぁぁぁあぁあ~~!!」
 早希は時々歯を食いしばりながら、額に汗をにじませて大笑いしている。

 体育館のステージの上で大笑いする六人の少女達。
「おい。足の指を曲げないように見張っていろ」
 近衛が構成員達に指示を出した。
 ステージの上では、ランダムで選出された男子生徒達によって、六人の少女がくすぐられている。

「片山……俺を恨むなよ。俺だって好きでやってんじゃないからな……」
 岸は亜梨沙の足の裏をくすぐりながら、ばつが悪そうに顔をしかめた。
「いやははははははははっ、やめてぇぇ~~~!!」
 後ろで構成員に見張られているため、岸も逆らうことができない。
 隣では、
「……ごめん。吉田さん」
「はひやはははははははははっはっっはっはっは、やだぁぁあふひゃははははははははは!!」
 池田が結衣の足の裏をくすぐっている。
 池田は心底申し訳なさそうにしながら、指先で結衣の土踏まずをなでていた。

 四年生の田中は、複雑そうに顔をしかめ、無言で由莉奈の足の裏をくすぐっていた。
「ふひゃっひゃっひゃっっひゃっひゃっひゃやう゛ぇでぇぇえぇ!!! たにゃっぁああっかくぅうんひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」
 田中は彼女のことが好きだった。
 構成員に選ばれたのは偶然だった。
 好きな女子が、……清楚でつつましい彼女が……、鼻水を垂らして笑い叫ぶ姿を前に、田中は言いようのない興奮にさいなまれ、苦しんだ。

「芦田ぁ、お前がこんなこども遊びみたいなのに弱かったなんてなぁ」
「あはははははははははっバカっ!! バカミキぃぃぃっひっひっひっひ!!! やめてよぉぉああっはっはっはっっははっはっは!!!」
 五年生の三木は、宿敵の芦田早希の弱点を見つけ、むしろ楽しんでいた。
 早希の引き締まった脚をなであげたり、ハイアーチの土踏まずをほじくったり、指間をひっかき爪を立てたり。
 素足の足の裏を夢中でくすぐりまくる。
「今度から罰ゲームはくすぐりにしてやるよ」
「あひゃっはっはっはっはっはっはやめてぇぇああぁぁ~~!!!」

 中学生二人は、体育会系の男子二人にそれぞれくすぐられ、絶叫に近い笑い声を上げていた。

「おい。ちゃんと撮れてるか?」
 近衛は六人の笑い狂う姿を、にやにや眺めながら、隣でカメラを回す構成員に話し掛けた。
「全員の表情と足の形が、ちゃんとわかるように撮ってくれよ」
 少女達の甲高い笑い声が体育館に響き渡る。
 他の生徒は怯えすくんでいた。

~~~

「そういや犯人側の要求はなんだったかな?」
 警察本部の一室にて、中年の刑事が言った。
 若い刑事は怪訝そうに眉をひそめ、
「消費税の引き下げですよ」
「そうだったな。そんなこと俺たちに言われてもな」
「まぁ、もっともですが……」
「だよなぁ」
 中年の刑事は、緊張感の無い笑い声を上げ、目の前の画面へ目を移す。
 再生中のビデオでは、複数の小学生、中学生が悲痛な笑い声を上げ続けている。
「……いつまで泳がせておくんですか? 『いつまでもつか保証できない』なんて言ってますけど……」
 若い刑事の言葉に、中年の刑事はフッと鼻で笑った。
「くすぐられたぐらいで人は死なないさ。せいぜい酸欠で気を失う程度だ。知ってるか? 主犯の近衛という男。十年以上テロリストの真似事をして、女こどもをくすぐっては、その映像を警察に送りつけてくるんだ。拉致監禁の常習犯だよ。二年か三年の周期でムショとシャバを行き来してる」
「そんな男を放置していいんですか?」
 若い刑事は神妙な面持ちで言った。
 中年の刑事はため息をついて、
「人も殺さない。怪我もさせない。強姦するわけでもない。物も破壊しない。そんな奴をこの国の法律で無期懲役にできるのかよ? ええ?」
 中年の刑事が威圧的に言うと、若い刑事は「あ、いえ……」と押し黙ってしまった。
 中年の刑事は笑った。
「いいんだよ。こいつは自分から拉致監禁と暴行の証拠を自分で撮影して送ってくる。そのたびに、逮捕してやりゃいい」
 若い刑事は嫌なニオイでも嗅いだように顔をしかめた。
 はんッと中年の刑事は笑う。
「おい若造。そろそろ突入の準備しとけよ? 逮捕に踏み切るぞ」
 若い刑事は目を見開いた。
「こちらが要求をのむ前に突入したら犯人を刺激するんじゃ――」
「こいつはただ女こどもをくすぐりたいだけなんだよ。消費税の引き下げなんて要求は単なる口実だ。そういうシチュエーションが好きなんだろ。こいつは散々くすぐって欲求不満が解消したら、なんの抵抗もせずに逮捕させてくれる」
「犯人の欲求不満が解消されたかどうかなんて、わからないじゃないですか」
「わかるんだよ俺には」
「え?」
 中年の刑事は立ち上がると、画面を消し、ぽかんとした若い刑事の肩をぽんと叩いた。
「理解する必要なんかねぇ。お前はただ俺の判断に従っておけ」
 不服そうな若い刑事を残し、中年の刑事は廊下に出た。廊下には人っ子ひとりいない。完全な孤独に、安堵した。
 彼は「ふぅ」と大きく息をついて、
「次のズリネタも楽しみにしてるぜ……相棒?」


(完)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 下記のリクエスト作品です。
 遅くなってしまい申し訳アルマジロ。その他もろもろアルマジロ。

> 【ジャンル】オリジナル
>
> 【くすぐられキャラ】小学生、中学生の女子生徒複数。
> 結衣(7)ロングヘアー、おとなしい女の子
> 亜梨沙(8)セミロング、普通の女の子
> 由莉奈(9)ロングヘアー、お嬢様でおしとやか
> 早希(11)ショートヘアー、活発な女の子
> 彩夏(13)セミロング、普通の女の子
> 美咲(14)ロングヘアー茶髪、ヤンキー
>
> 【あらすじ】ある日、くすぐりフェチのリーダー率いるテロ集団が国に税金引き下げの訴えを起こすべく小中一貫校を占拠する。テロ集団は小等部中等部の生徒を全て体育館に集め、人質とする。
> 当然交渉は難航しテロ集団と警察は膠着状態となり、テロ集団は次第に苛立ちを募らせる。
> テロ集団のリーダーは暇つぶしにいいことを思いつく。
> おもむろに立ち上がると、生徒を見回し、特に可愛い女生徒を一人一人前に集め、ステージ上で上履きと靴下を脱がせ、座禅を組ませる。
> リーダーの男は構成員の一人にビデオを回すように命令し、
> 女生徒一人一人の土踏まずの状態、色などを観察した。
> 次に全校生徒の前で座禅を組まされて座っている女生徒の後ろから10分程度一人ずつ足の裏をくすぐっていき、反応を楽しむ。
> 次にランダムで男子生徒を女子生徒の人数分ステージにあげ、女子生徒の後ろに座らせ、男子生徒に足の裏をしばらくくすぐらせる。
> その様子を構成員の一人に撮らせ、警察側に『政府よ、お前達が判断を渋っている間に、ここにいる子供達は苦しんでいる。いつまでもつかは保証できない』と言う旨のビデオを作成し送る。
> それからくすぐりフェチのリーダーの女生徒達への地獄の暇つぶしが始まる。
>
>
> 【足裏の他に責めて欲しい部位】特になし