T高校では、文化祭の一週間後に生徒会長選挙が実施される。
 会長立候補者は文化祭の出し物にて、自身の指導力と企画力を、有権者に示さなければならない。
 T高校の文化祭は、3年生の最後の思い出作りと同時に、次世代指導者の選別を兼ねているのである。

 今年度、会長立候補者は2名。2年K組の学級委員長、佐藤蓮(さとうれん)と、現生徒会執行部副会長、2年A組の木村花音(きむらかのん)である。
 2年K組はL組と合同でお化け屋敷を、A組は映画上映を、それぞれ文化祭にて催す。
 立候補者のいるクラスの催しには、全校生徒の期待がかかっていた。

◆◆◆

(文化祭当日12時半)


「――委員長。起きてください。委員長」

 身体を揺さぶられて、蓮は目を覚ました。一瞬状況が飲み込めず、目を瞬く。

「委員長。眠気覚ましにコーヒーをどうぞ」
 湯気のたったマグカップを差し出してくるのは、K組の図書委員、山本美咲(やまもとみさき)であった。厳格な性格で、プライドの高い小柄な少女である。
 美咲の姿を見て、蓮はようやく状況を察した。

「もう時間か。美咲。すごく似合っているじゃないか。かわいいよ」

 美咲は魔女を模した格好をしていた。
 ボブカットに揃えた頭には黒いトンガリ帽子が乗っており、真っ黒なローブを小さな身体にまとっている。

「……この格好を『すごく似合っている』と言われても、全然嬉しくありませんよ」
 照れ隠しなのか、美咲は『全然』を強調して言った。

 お化け屋敷の運営室として利用しているL組の教室の一角で、蓮は仮眠を取っていたのだった。
 すでに文化祭開始から3時間である。

「どうだい? 客入りは」
 蓮は伸びをしながら聞いた。
「上々です。委員長自身の目で確かめてください」

 蓮はコーヒーを飲み終えると、美咲の案内で、お化け屋敷の会場へ向かった。
 第四共用棟の2階をフル活用しているため、かなりスケールの大きなお化け屋敷である。

 階段のすぐ傍に机と椅子を並べて作った受付があり、K組学級委員長の斉藤陽菜(さいとうはるな)とL組学級委員長の小林凛(こばやしりん)が並んで構えていた。
 2人とも冬服のブレザー姿で、真面目に着こなしている陽菜と、上着の前を全開にして灰色のセーターをだらしなく見せつけている凛は、見事なほど対照的だった。

「小林さんは、学級委員長としての自覚がないのですか?」
 美咲はすぐにつっかかった。
「うっせーなっ! そ~んな変な格好して喜んでるヤツに言われたくねーよっ」
 腰まで伸びたツインテールをなびかせ、凛はべっと舌を出した。

 2人は会うたびに軽い口げんかをしているようだが、凛が美咲の言葉を聞いてすぐに「服装に対する注意」だと理解する辺り、実は仲が良いのだろうと、蓮は考えていた。
 陽菜もそう考えているのだろう、凛と美咲の様子を見て微笑んでいる。
「佐藤君。おはよう。……佐藤君も、名前、書く?」
 陽菜は言いながら、机上に乗った入場者記入用紙を指した。
 校内生徒が文化祭の催しに入場する場合は、受付でクラスと氏名を記入することになっている。
「書いておこうかな。一人でも欄が埋まっていた方が、繁盛して見えるからね」
 書きながら、蓮は入場者の中に標的がいることを確認した。
「蓮。早く行ってやんなー。最初のヤツなんか、もうかれこれ3時間だから」
 凛は足を組み直しながら、「ヒヒヒ」と軽く笑った。

 お化け屋敷の中は真っ暗で、防音壁で区切られた迷路になっていた。
 適度に楽しみながら、美咲に先導されて迷路を進む。
「こちらです」
 美咲は少しひらけた空間で立ち止まると、木々の装飾品を寄せて隠し扉を出した。扉を開けて、蓮を導く。
 蓮が中に入ると小さな部屋で、奥にはさらに扉があった。
「あ、ちょっと待っていてください。こちらの扉を完全に閉めてからでないと、声が漏れますので」
 美咲は言うと、入ってきた扉を両手で丁寧に閉めた。
「では、どうぞ」

●●●


 奥の扉を開けると同時に、女の子の激しい笑い声が聞こえてきた。

「いやぁぁっはっはははっはっはっ、もうやめてぇぇ~~っ!!」
「きゃはははっ、ははは……ふふ、ひひひっ」

 2人居る。
 部屋の中央に、おかっぱ頭の少女が2人、真横を向いた状態で宙吊りにされていた。
 2人は両手両脚をそろえた万歳Iの字の体位で、緩衝材を挟んで背中合わせに縛り付けられている。
 蓮の側からは片側の娘の顔しかよくは見えないが、反対側の娘の方が激しく笑っているようだ。

 2人とも下着のみの姿であった。5人の女子生徒が、吊るされた2人の無防備な地肌を筆やら指やらで激しくくすぐっていた。

「あ、蓮。遅かったね。そろそろこっちのコは限界かも……」
 かかとを合わせて縛られた2人の素足の足の裏に、両手に持った筆を上下に這わせていた中村愛莉(なかむらあいり)が、蓮を見るや言った。2人のギリシャ型の足の指は、くねくねとくすぐったそうに動いていた。

 愛莉は書道部の主将であった。
 おかっぱの2人をくすぐっているのは全て書道部員。
 文化祭の下準備として、書道部を襲撃したのは記憶に新しい。事前に愛莉を味方につけていたこともあり、人数の少ない書道部員を一網打尽にするのは至極簡単であった。
 蓮にくすぐられた書道部員達はすっかり、「くすぐり」の虜になっているようだ。

 美咲の分析によると、蓮の指には不思議な能力が備わっているらしく、蓮にくすぐられた者は、蓮の指の依存症に陥ってしまうらしい。
 生粋のくすぐりフェチである蓮にとっては、非常にありがたい能力であった。
 蓮はその指を駆使して、陽菜をはじめ、美咲、凛と、次々と周囲の女子生徒をくすぐり落としてきたのだ。

「愛莉、お疲れ。そっちが妹の方かな?」
「いいえ。姉の方です」
 蓮が聞くと、愛梨が口を開く前に美咲が即答した。
「委員長から見えるのが妹の後藤ひかり(ごとうひかり)。1年C組の学級委員長です。普段は内気で動きが鈍く『姉がいなければ何もできない』といったような批判に晒されていたことから、姉よりも早く崩れると思われたのですが、かなり根はしっかりしているようですね。反対側にいる姉の後藤あかり(ごとうあかり)が開始5分で大笑いを始めたのに対し、妹ひかりは1時間ほど耐えていました。自身の苦痛に耐え忍びながら、姉を勇気付けようと声をかける姿も散見されましたが、姉の泣き喚く姿に心を折られてしまったのでしょう。今ではご覧の通り両名とも破顔してしまっていますが、録画してありますので、後でごゆっくりお楽しみください」

「きゃぁぁぁっはっははっははっ!!! いやぁぁっはっははっはは、ひぃぃぃぃぃいはははははははっ!!」

 蓮が回り込んでみると、あかりはIの字の身体をくねらせて笑い悶えていた。
 腋から脇腹にかけて書道部員2名の指が縦横無尽に這い回り、足の裏には愛莉の筆がさわさわと刺激を与え続ける。

「だずげでぇぇぇぇひひゃひゃひゃひゃっ!!! あぁぁぎゃぁぁぁぁはっははははは、だずげでぇぇぇぇひひひひひひひひっ!!!」
 あかりは涙と涎でぐしゃぐしゃになった顔をさらに歪めて、激しく笑う。

「きゃははは、っ……ははは、姉さん……ふはははっ!! 姉さ、いひひひひっ、姉さん……」
 あかりと背中合わせに縛られたひかりは、全身を筆責めされている。涙を流しながら必死に姉を勇気付けていた。
 ひかりはまだ少し余裕があるのか、笑いながらも歯をかみ締めて堪える様子が見えた。

「どうぞ委員長。この状態ならば、委員長の指で2人とも1分以内に落ちるでしょう」
 美咲が促す。
 蓮はしばらく2人の周り歩いて観察すると、
「先にあかりの方だけ落としておいて、あかりにひかりをくすぐらせるって言うのはどうかな? ひかりを落とすのはその後で」
 蓮の提案に、美咲は目を見開いた。
「妹の心を完全に砕くわけですか。……委員長、相当鬼畜ですね」
「褒め言葉として受け取るよ?」
「当然です」

 蓮の指であかりを落とすのに要した時間は、たったの10秒であった。

●●●


 扉を次々と進んでいくと、様々な「くすぐり」が見物できた。
 十字架にくくりつけられて身体中をくすぐられる少女。天井から両手を万歳に吊るされ、爪先立ちになったまま、腋をくすぐられてぴょんぴょんと飛び跳ねて笑う少女など。
 お化け屋敷の裏は、秘密のくすぐり拷問室だったのである。

 捕われた少女は、ほとんどが学級委員長であった。
 学級委員長(立候補者を除く)は、来週の会長選挙において、選挙管理委員を務める。
 学級委員長を全員味方につけてしまえば、学級委員会と選挙管理委員会を一度に掌握することができるのである。会長選挙に有利なだけでなく、その後の運営活動も円滑に行うことができる。
 1・2年生で合計26クラス。個別に対応するのは骨が折れる。一度に全員をくすぐる舞台として、生徒移動の激しい文化祭は最適だったのだ。
 生徒の注目の集まる会長立候補者主催のお化け屋敷に、のこのことやってきた標的を、順に隠し部屋へ引きずり込んでいけばよかった。
 捕獲時に多少悲鳴が漏れたとしても、お化け屋敷内では誰も怪しまないし、迷路には、客の空間把握を鈍らせ、隠し部屋の発覚を防ぐはたらきもある。

「次で、学級委員長は最後になります」

 美咲が先導して扉を開けると、部屋の中央に立てられた2枚の板に、2人の女子生徒が向かい合わせにX字体位で磔にされていた。
 板にはいくつも穴が開いており、板の後ろに立った人間が穴から腕を差込んで、磔にされた2人の身体中をくすぐっている。
 くすぐっているのは、かなり前に調教しておいた文芸部の面々で、4人ずつそれぞれ板の後ろについていた。

「向かって左側が1年M組学級委員長。長谷川百花(はせがわももか)です」
 美咲は、左の板に磔にされ、大口を開けて笑うメガネの生徒を指した。

「はひゃっ!? あひゃっ、ひっひっひっひ、だめっ!!! もぅっ、いひひひ、やめてっ!! かっはっはははっあひぃっ」

 涎をだらだらと口から溢れさせて笑う百花。
 上着とスカートは取り払われて、ワイシャツのみの姿であった。が、ワイシャツのボタンも全て外されて、ふくよかな胸や、くびれた腰、すべすべのお腹を、30本の指で弄ばれている。
 百花の足下には、百花の衣類と思われるブレザー、スカート、ネクタイ、白いハイソックスがぐしゃぐしゃに散らばっている。
 足下にしゃがんだ文芸部員は、百花の両足の裏を指で追い掛け回すようにくすぐっていた。

「はひゃっ、ひゃひゃっ、うひゃっ!!! ひひひっ、ひゃひゃひゃぁぁっ」

 手首、足首から先をくねくねと動かして悶える百花。かなり長時間くすぐられ続けたのか、目も虚ろだった。

「長谷川さんは、ほぼ文化祭開始と同時にいらしたので少なくとも3時間はくすぐられていることになります。しかも、途中1時間ほど佐々木(ささき)さんの執拗な責めを受けていますので、すでに肉体精神とも極限状態でしょう」
 美咲は淡々と解説した。
「杏奈(あんな)の責めか。杏奈はくすぐるのが上手いからね」
「佐々木さんは、対象により大きな苦痛を、効率よく、効果的に与える技術を磨いているようですので、拷問においてかなりの力を発揮します。そこで――」

 美咲は右側の板を指した。
「こちら1年J組の学級委員長、遠藤彩華(えんどうあやか)をおびき寄せるために利用しました」

「きゃぁぁぁっはっはっはっはははっははっはっ!!! やだぁぁぁっはっはっはっはは、にぃぃぃっひっひっひっひっひ!!! 百花の裏切り者ぉぉぉっひゃっひゃひゃ~~」

 彩華はショートボブの髪の毛をぶんぶんと左右に振り乱し涙を撒き散らして笑いながら、向かいの百花に対して罵声を吐き続けていた。
 上半身は上着の前が全開にされ、ワイシャツ越しに脇腹や腋の下をくすぐられていた。
 足元は左足のみが素足で、靴下を履いた右足と一緒にカリカリとひっかくようなくすぐりを受けていた。
 百花よりも服装の乱れが軽いことから、くすぐられ始めてからそれほど時間が経過していないように見えた。

「『裏切り者』だってさ」
 蓮がハハッと笑うと、美咲は2人を指で差しながら、
「遠藤さんは、最初からこのお化け屋敷には来る気がなかったようです。というよりも、文化祭の催しを回る気が一切なくて、ずっと教室で漫画を読みながら時間をつぶしていたのです」
「面倒くさがり屋さんなんだね」
「はい。そこで同じ中学出身の長谷川さんを利用することにしました。最初は『遠藤さんを誘い出せ』と言うこちらの要求を断固拒否していた長谷川さんでしたが――」
「杏奈の責めに耐え切れなくなって、見事、友達を売ってくれたわけだ!」
「その通りです。……こちらも一部始終録画していますので、後でご覧になってください。佐々木さんの責めはかなりえげつない様子でしたので、委員長の好みといいますか、かなり楽しめると思いますよ」
 美咲は若干杏奈に対して少し嫉妬心を抱いているのか、やや嫌味っぽく言った。

「はひゃぁっ、ひゃぁ、ひゃぁっ、ごめ、ふひひひひひ、ごめんにゃひゃひひひひひ~~っ」
「百花のアホぉぉぉっ!! にゃぁぁっはっはっはっはっはっはっは~~っ!!!」

▼▼▼


 最後の部屋に到達した蓮と美咲は、扉を開けた瞬間に怒声を浴びせられた。

「あんたら何考えてんのよっ!! こんなことしてっ、ただで済むと思ってんのっ!!?」

 物凄い形相で2人を睨みつけるのは、選挙管理委員長の松本柚希(まつもとゆき)。
 身長は美咲と同程度かほんの少し高い程度。セミロングのストレートヘアは、右おでこを出してピンで留められていた。
 大きな目と、長いまつげが特徴的で、本来ならば美人と評されるはずの顔立ちなのだが、いつもイライラしているのか常に眉間に皺を寄せていた。
 2年A組に在籍しているため、蓮とはほとんど接点が無いのだが、『史上最怖の選管委員長』という噂は常々耳にしていた。
 知る人によると、美咲のような理屈による批評者的怖さではなく、柚希自身の快・不快による暴君的怖さがあるらしい。

 そんな暴君柚希も、壁を背にぺたんと足を前方に突き出して座らされ、無様な格好を晒されていた。足首は晒し台で固定されており、両肘をくの字に曲げて力こぶを出すようなポーズで、手首は壁に固定されていた。
 晒し台の2つの穴からは、白いソックスを履いた足が突き出している。ソックスの足の裏は指に沿って、薄茶色に汚れていた。

 室内には、蓮、美咲、柚希の3人しかいない。

「抵抗が激しく捕獲には苦労しました。暴れるところを8人がかりで押さえつけ、なんとかこの状態に拘束しました。委員長の言いつけ通り、まだ誰も触れていません」
 美咲が状況を説明する。よほど激しく抵抗したのか、柚希の制服ブレザーはやや乱れ、ネクタイが曲がっていた。
「……山本がっ、なんでこんな奴の言いなりなってんのよ!!? おかしいんじゃないのッ!?」
 柚希が再び吼えた。
 美咲が蓮に従っていることが、よほど意外らしく、柚希は狼狽を押し殺すような表情を見せた。

 柚希は美咲を成績上位者同士、同じ穴の狢として、強く意識していたのだろう。美咲に似て、プライドも高そうだ。
 ならば先に精神を崩しておくのも良いかもしれないな、と蓮は思った。

「私もこの『おかしい』状況については疑問を抱いています。2時間もすれば松本さんもこちら側ですので、そうしたらこの『おかしさ』について存分に議論しましょう。楽しみにしていま――――ッ!!!?」

 美咲の話の途中で、蓮はいきなり、後ろから美咲の脇腹を抱きかかえるように揉み始めた。

「ひひゃっ!!? ちょ、ちょっと、委員長っ!? いひっ!! いきなりっ……ふひっ、なな、なにをっ!!!?」
 美咲は身体をくの字に曲げて身悶えた。
「はぁ???」
 と、柚希。
「ちょっ、ひひぃぃっ、委員長っ!!! ちがっ……な、何やっているんですかっ、ひひゃっ」
 美咲は両手で蓮の手首を掴んで抗議しながら、地団太を踏んだ。

 柚希が唖然とする様子を脇目に、蓮は指を美咲の腹部へ食い込ませる。
「ひゃぁぁっ!!? もぅっ、いひっ、……ふざけないでくださ――っ!!」
 ローブの裾につまずいた美咲はバランスを崩した。
「おっと」
 転倒しそうになった美咲を、蓮は抱きかけて支えた。

「……ハァ、委員長。な、なに考えているんですか。今日は松本さんをメインに落とす段取りで……」
 美咲は荒い息を立てながら、蓮の顔を睨む。頬が紅潮して、少し目が潤んでいる。
「柚希には先に、美咲がすでに陥落していることを、見せつけてあげようと思ってね」
 蓮が微笑むと、美咲は目線を逸らせた。
「……また、精神攻撃ですか。松本さんの中での私の位置づけによっては、有効かもしれませんが……今日は、ダメ、です」
「どうしてだい?」
「今日は、文化祭の進行をしないといけないので、あまり、その……スイッチを入れたくない、といいますか」
 美咲は身をゾクリと震わせながら、口ごもった。
 きっと、欲望を理性で押さえつけているのだろう。
「美咲のそういうところ、すごくかわいいよ」
「や、やめてくださ――ッ、ひゃぁぁっ!!?」

 蓮は美咲の身体をうつ伏せに押し倒すと、腰辺りに馬乗りになった。同時に、美咲の頭からトンガリ帽子が転がり落ちる。
「じゃぁ美咲の言うスイッチとやらを、僕が入れてあげるよ」

 蓮は言うと、両手の人差し指と中指を美咲の肋骨にくりっと押し込んだ。
「ふひゃぁぁぁっ!!! ひひ、ひひひっ、委員長!!」
 ビクンとえびぞりになる美咲。

「……なっ!? なにやってんのよアンタら!?」
 ようやく、驚いたような声を出す柚希。

 柚希の発言を無視して、蓮は、ローブ越しにゴリゴリと美咲の肋骨をひっかくようにくすぐる。
「ひっ、ひゃっ!!? ひゃひゃっ、ひはははっ! はは、ひひひ、いひっ、委員長!! ひひゃひゃ、とめてっ、ひひひひ、とめてくださいっ!!」

「こっちの方がよかったかい?」
 蓮は右手を美咲の腋の下に差し込む。
「ひゃははっ! ひひひ、ひひぃ、……いひひひ、ひはは」
 真っ赤にした顔を左右に振って笑い悶える美咲の姿を、柚希はただ呆然と眺めていた。

 蓮は中指を、美咲の腋と胸の間あたりに押し当てて震わせた。
「ひゃはははははははっ!!!? くふっ、そこはっ! くふふふふっ」
 美咲は一旦大きな笑い声を上げるが、すぐに耐え忍んでしまう。
「まだ、スイッチは入らない?」
「ひひひ、ふひゃっ、……ひひ、入れませんよっ。ふひひひ」
 美咲は首をぶんぶんと振った。
 ボブカットの髪の毛がわさわさと揺れる。

「そうか。じゃぁ」
 蓮は身体を反転させると、ブーツを履いた美咲の両脚を持ち上げた。
「い、ちょっと、委員長っ!?」
 美咲の膝辺りまでローブの裾がまくれる。
 美咲は黒いタイツを履いていた。
 蓮は、ふくらはぎから足先に向けて美咲の脚をタイツ越しに撫でていく。
「んふっ、……くふふ」
 美咲は笑いを堪えるように、ローブの裾を握り締めた。

 蓮は美咲のブーツをぐいぐいと捻って脱がしながら、
「もう抵抗はあきらめたのかな?」
 両足ともブーツを脱がし取ると、タイツ越しに美咲の足の指ひとつひとつがうっすらと透けて見えた。親指と人差し指だけが他3本の指よりも長い、偏平足だ。
「……ブーツ履いたまま暴れたら、委員長が怪我するじゃないですか」
 美咲は床にあごをつけたまま、いじけたような声を出した。

「美咲は優しいね」
 蓮は言うと、左腕でしっかりと美咲の両足首を押さえ、自身の胸に押し付けた。
 そのまま右手の指を、美咲の両足の裏の上でわしわしと踊らせた。

「ひゃはっ!!!? ひゃははははははっ、ひははははっ、はひゃっ!!! ひぃぃ~っひっひっひっひっひっひっひッ!!」

 美咲はタイツに包まれた足をくねくねと捩って笑い出した。

「滑りやすいタイツ越しは、いつもよりくすぐったいかな?」
「ふひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! ちょっ、ひひひひひひひひっ!!? ホントにっ!!! ホントにスイッチ入っちゃいますぅぅぅっひゃっひゃっひゃひゃ~~っ!!」

 蓮ががりがりと美咲の足の裏をひっかくようにくすぐると、美咲の足の指もくしゅくしゅと連動して動く。

「ひひひひひひっ、だめぇぇっ、ひゃははははははっ!!!」

 美咲はこぶしでダンダンと床を叩いて笑う。
 蓮は人差し指を、美咲の足の親指と人差し指の間にぐりぐりと押し込んでやった。

「きゅひゃぁぁぁぁっひゃっひゃっ!!! ふひゃひゃひゃひゃっ、ひゃめぇぇぇ~~」

 さらに爪で足の裏を弾くようにくすぐってやると、美咲は上半身を捩って暴れた。

「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! もふっ!! 委員長っ!!! くひゃひゃひゃひゃひゃっ」

「おねだりしていいんだよ?」
 美咲の足の裏をひっかきながら、蓮は優しい声をかける。チラリと柚希の方を見ると、苦虫を噛み潰したような表情でこちらを睨んでいた。
「ほら、柚希が見てるよ? 美咲。僕の指が欲しいって言ってごらん」

「ひぎぃっ!? ひひひひ、ふひひひひひっ!!!」

 笑いながら首を左右に振る美咲。なかなかしぶといな、と蓮は指をで美咲の左足の親指あたりをこそぐようにくすぐる。
「ひゃはははははははっ!!! きひひひひひっ、きついですっ!!! ひゃぁあぁはっはっはっはっはっ」
「ならおねだりしてごらん? いつもみたいに」
 蓮は、美咲の左足親指辺りを爪でこそぎ続け、タイツを破く。穴から指を入れ込み、美咲の素足の指の間をいじり始めた。

「ぃぃひゃっひゃ~~っ!!! くひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!! ひぃぃぃぃひひひひひひひひっ!!!」

 美咲は両手をバタつかせて笑い始めた。
「ほらほら、早くおねだりしないと、ここでやめちゃうよ」
「あひゃぁっ!!! ふひひひひひひっ!!! 委員長のっ、ひひひひひひひっ!! 変態っ!!! 変態ぃっひっひっひっひっひ~~っ!!! もっと、きっひっひっひ~~、もっとお願いしますぅぅぅひゃひゃひゃ~~っ!!」

「よく言えたね。えらいよ美咲」
 言いながら蓮はチラリと柚希の顔を見た。絶望感を隠そうと必死に表情を険しくする柚希の心境を想像すると、なかなかそそられた。同族意識のある人間が屈服させられる姿ほど、見ていて悔しいものは無いのだろう。

 蓮は、左手でしっかりと美咲の左足首を掴むと、タイツの穴に突っ込んだ指を動かし、穴を押し広げていく。
 5本の指を穴に押し込むと、美咲の足の指の付け根辺りを思いっきりひっかいてやる。
「かひゃっ!? はひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! ひゃぁぁっははっはっはっははっはっははっはは~~っ!!!」
 美咲は笑いながら、床に投げ出された右脚をくの字に曲げ、つま先をひくひくと痙攣させた。

 柚希の方をチラリと見ると、声も出せないのか、ごくりと生唾を飲み込んだ。自分がこれから何をされるのか、想像してしまっているのかもしれない。

 足の裏をがりがりと掻き毟りながらタイツを破いていき、かかとの部分をべろんとめくる。
 美咲の左脚はレギンスのような状態になった。
 露出した美咲の左足の裏に再び5本の指を這わせる。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! いぃぃぃひひひひひひひひひひひひっ!!! もぅっひひひ、委員長っ!!! ひゃっはっはっは、責任取ってくださいよぉぉぉぉひゃっひゃっひゃ~~!!!」
「責任?」
 蓮は、美咲のかかとに爪を立てながら聞く。
「ひゃっはっはっは、ダメって言ったのにぃぃっひひひひひひ!!! スイッチひゃはは、入っちゃったじゃないですかぁぁっはっはっは~~っ!!」

「へぇ。最高だね」
 言うと蓮は、手を止めて立ち上がった。
「あぁぁっ!!!」
 途端に美咲は声を上げて、ごろんと転がり、仰向けになった。美咲の顔は真っ赤に上気していた。
「……委員長。まさか、ここでやめるつもりですか?」
「だとしたら?」
「本気で怒ります。委員長が遊ぶ前に、私が松本さんを壊しますよ?」
「ハハッ、冗談だよ」

 蓮は、美咲の脇腹を揉むようにくすぐり始めた。
「ぅひゃっはっはっはっはっはっ!!! ひゃぁぁ~~っはっはっはっはっはっ!!」
 美咲は哄笑しながら、両腕を伸ばして自ら万歳する。
 下ろすまいと気合を入れているのか、肘がぷるぷると震えている。

 蓮は美咲の要望どおり、上半身に両手の指を縦横無尽に這わせてやった。
「いひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!! あぁぁひゃひゃひゃひゃひゃっ、ひぃぃ~~ひひひひひひっ!!! ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
 美咲は目に涙を浮かべ、ローブの裾がめくれ上がるのもお構いなしに両脚をバタつかせて大笑いした。

 美咲は蓮の指の動きに合わせて、激しく笑い狂った。柚希が傍にいることをすっかり忘れてしまったかのような乱れようだ。
 蓮はあらためて、自身の指の力に畏怖の念を抱いた。

◆◆◆

 蓮が美咲をくすぐり始めて5分ほどたった頃、突然扉が開いた。
 蓮はすぐに手を止めた。室内の3人が同時に扉を見る。
 入ってきたのは、ジャーナル部の1年生清水希(しみずのぞみ)であった。先々週、隠し撮りしていたところを見つけて捕らえ、くすぐり落とした娘だ。その後決行されたジャーナル部陥落計画では、非常に良いはたらきをしてくれた。
「…………。えっと。何やっているんですか?」
 希は、乱れた美咲の格好を見て尋ねた。
「軽いウォーミングアップだよ」
「美咲先輩『で』ですか……」
 蓮の答えに、希は訝しげに首をひねった。
 当の美咲は、破かれ穴だらけになったタイツをローブで覆いながら、
「清水さんは、どういったご用件ですか?」
 淡々と聞いた。
 切り替えが早いな、と蓮は感心した。

「あの、実は緊急事態が発生しまして……」
「それは大変だね」
「ヒトゴトではありませんよ?」
 蓮の無責任な合いの手に、美咲はブーツを履き直しながらツッコミを入れた。
「その……、私のクラスの、A組の子が一人、このお化け屋敷の隠し部屋の存在に勘付いたようなんです。 それで『不正かもしれない』と、ジャーナル部の私のところへ、ネタ提供と言いますか、告発に来たんです」
 蓮が美咲の方を見ると、すっかり身だしなみを整えて、表情を引き締めていた。
 希は言葉を繋ぐ。
「お喋りな子ではないのですが、もしかしたら他の誰かにも告げ口をしているかもしれません。ジャーナル部の部室に監禁して尋問しているのですが、根が強いのか黙秘を続けていて」
「……佐々木さんでもダメなんですか?」
 美咲が眉を寄せた。
「あ、いえ、佐々木先輩は今、副選管委員長の拷問で手が離せないと……。『絶対に邪魔するな』ときつく厳命を受けていて、その……なので、お取り込み中本当に申し訳ないんですが……」
 なるほど。蓮は希の意図を把握した。
 蓮が美咲の顔を見ると、美咲はこくりと頷いた。
「わかりました。私が行きましょう。委員長は予定通り、松本さんの調教活動をゆっくりと楽しんでください。その間に、私がすべて吐かせておきます」
 美咲はパンパンとローブの裾を叩いて姿勢を正すと、トンガリ帽子を被り直し、「行きましょう」と希を促した。
「美咲」
 蓮は美咲の背中を呼び止めた。美咲は横顔で応じる。
「こっちは2時間程度で終わると思うけど、それまでにきちんと任務を遂行できるかい?」
「愚問ですね。25分あれば充分です」
 美咲は鼻を鳴らし、右手の指を軽く動かして見せた。「お預け」を食らって気が立っているのか、美咲の 横顔はいつもより冷徹に見えた。

▼▼▼


 美咲と希が退出すると、蓮は、柚希の渋面を覗きこんだ。
「ようやく2人きりだね。柚希」
 柚希はクッと蓮を睨みつけると、その刹那、蓮の顔面に勢いよく唾を吐きつけた。
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでよ! 汚らわしいっ。早くコレ、外しなさいよ!」
 柚希は手首の枷をカチャカチャと音を立て、嫌悪感を露にした。
「ハハッ、元気がいいね」
 蓮はハンカチで顔を拭きながら、柚希の右前辺りの床の上に腰を下ろした。
「あんた、何が目的なのよ!? 私が誰かわかって、こんなことやってんの!?」
 柚希は物凄い形相で蓮を威嚇した。
「柚希はいつも怒ってばかりだね。きっと笑った方がかわいいと思うよ」
「はぁ? なにそれ。口説いてるつもり? 馬っ鹿じゃないの!?」

 柚希がやや前のめりにつっかかってくるのは、虚勢だろうと、蓮は思った。必死に焦りを隠そうとしているのだろう。
 やはり、柚希の目の前で美咲をくすぐったのは、正解だったようだ。

 蓮は両手を、そっと柚希の腋へと近づけていく。
「ち、近づけないでっ! 目的を言いなさいよ、目的をっ! イヤっ、触らないでっ」
 柚希が激しく金切り声を上げるのを無視して、蓮は柚希の両腋の下にそれぞれ人差し指を置いた。
「んっ……」
 柚希の身体がぴくっと反応した。しかめ面がさらに歪む。

「僕はただ、柚希の笑顔がみたいだけだよ」
 蓮は、ゆっくりと人差し指を上下に動かせ始めた。

「くっ……ば、馬っ鹿じゃないの。……ん、く……こんなことして、ただで済むと思ってんの」

 柚希は思いっきり眉間に皺を寄せ、蓮をにらみつけた。
「僕の指、くすぐったいだろう?」
「あ、……く、アンタ、頭おかしいんじゃない? んく、……こんなの、何が、楽しいのよ」
 柚希は腕をぷるぷる震わせながら、ギリッと歯噛みした。

「敵意をむき出しにしてくれて嬉しいよ。柚希。その方が落とし甲斐があるからね」
 指先の上下移動に強弱をつけながら、蓮は言った。
「……落とすって、何よ。……馬鹿みたい」
「美咲だって最初は、君みたいに抵抗していたんだよ」
 柚希は額に汗を浮かべて、顔をしかめた。
「それが今では、僕の指を欲しておねだりしてくるんだよ? 美咲のような厳格なコが、くすぐって欲しいって。……柚希もすぐ、おねだりしたくなるからね」

「ふ、ふざけないでよ……っ。なんで、私が、アンタなんかに……ん、く」
 柚希は毒づくが、内心は相当焦っているのだろう、目線がふらふらと泳いでいる。

「さて、どこまで我慢できるかな? 欲しくなったら、いつでもおねだりしていいんだからね」
 蓮は、指先にきゅっと力を込め、柚希の腋の下を突いた。
「くふっ……!! ……つ、や、やめなさい……」
 柚希は目を瞑り、刺激に耐えた。
 蓮は2本3本と指を増やし、柚希の身体に少しずつ感触を覚えさせるように、指先を優しく動かす。
「くっ、ちゅっ……馬鹿……やめっ……く」

 柚希は顔を赤らめ、眉間に皺を寄せ、ぐっと歯をかみ締めていた。
「笑っていいんだよ?」
 蓮は言いながら、柚希の両脇の下でこちょこちょと、指を蠢かせた。
「ばっ、かふっ!!! ……くふ、……く……、つ、…………」
 吹き出しそうになるも、柚希は堪え、口をぐっとへの字にした。

 身長の割にはやや発育良く見える乳房の外側のツボに親指を入れる。
「ふぐっ!? ひ、……くぅ、ぅ……」
 柚希はあごを引き、目を見開いて、刺激に耐えていた。

 しぶといな、と蓮は思う。
 ツボ入れしてぐりぐりと指を動かしてみるも、柚希はむんずと口元を引き締めて耐えた。
「強いね。柚希? 僕に笑顔を見せるのがそんなに嫌かい?」
「……っ、……っ」
 柚希は口元をひくひくさせながら、蓮を睨んだ。鬼のような形相である。
「声を出すと一緒に笑い出しちゃうかな?」
 蓮は笑いかけながら、柚希の脇腹まで両手を下ろし、揉むようにくすぐる。

「くっ!!? ……っ、くふ……っ!」
 柚希はうつむき気味に横を向いた。
 身体中が震えている。
 蓮が柚希の顔を覗きこむと、柚希は反対側に顔を背けた。口元が緩みそうになるのを必死に引き締めようとしているようだった。

 肋骨をごりっとえぐるように指を押すと、柚希は身体をびくんと震わせ、顔を上に向けた。
「ぐっ、く、きっ……!!」
 左右に髪を大きく振り乱し、歯を食いしばる柚希。

「耐えるね」
 蓮は指をアバラに差し入れくりくりとほじくるように動かす。
「がっ!! くぅっ……、っ」
 下唇をかみ締めて、蓮を睨む柚希。憎悪に満ち溢れた目は、蓮を興奮させた。

 蓮の指の振動に合わせて、身体をビクビクと震わせる柚希。鼻息荒く、頬の筋肉が上下に痙攣している。
「……っ、っ、……っ!」

 しばらく脇腹からお腹をくすぐり、蓮は指の動きを止めた。
「よく耐えたね。すごいよ、柚希」
 柚希は肩を上下させながら、
「……あ、後で、覚えておきなさいよ」

 蓮は柚希のスカートの裾を少し上げ、膝小僧から太腿を露出させた。
「ちょ、ちょっと、馬鹿! な、何するのよ」
「大丈夫。変なことしかしないから」
 蓮は両手の指先を柚希の膝小僧に乗せ、ふわふわと優しく動かす。
「ふっ!? ……な、やめなさいっ! 気持ち悪いっ」

 指先で柚希の太腿から膝辺りをさわさわとくすぐっていくと、柚希は動ける範囲で、必死に膝を曲げて抵抗する。柚希の白い太腿は鳥肌だっていた。
 柚希は蓮に向かって罵声を吐き続けた。喋れる分、まだ余裕があるようだ。
 そのまま蓮は両手を柚希の脚に這わせながら、足下へ移動した。

▼▼▼


「さて」
 と、蓮は晒し台から突き出た柚希の右足の親指を軽く弾いた。
「つっ、触んないでよ……」
 柚希はきゅっと足を捩って逃げた。
「そろそろ、くすぐられるのも楽しくなってきた頃かな?」
「……そんなわけ、ないでしょ。……この馬鹿、変態」
 肩で息をしながら、蓮を上目で睨む柚希。

「そう? そろそろ身体に正直になっていもいいんだよ?」
 蓮は言うと、人差し指をつーっと柚希の右足のかかとから指先に向けてなぞり上げた。
「くぷっ!! ふぐっ……」
 足の指を縮こまらせ、足を左右に捩る柚希。
 蓮は柚希の右足を人差し指で追いかけ、カリカリとソックス越しにひっかく。

「く……な、何よっ、ぅく……、こんなこと、時間の、んくぅ、無駄よっ」
 柚希は顔を真っ赤にして、首を左右に振って悶えた。

 柚希の側からは、晒し台の板に阻まれ、くすぐる様子が見えない。
 柚希は目を瞑って、前後左右に首を振って笑いを堪え続けていた。
「見えないのによく我慢できるね。じゃぁ、もう少し激しくしてみようか」
 蓮は、左手で柚希の右足の指を持って反らし、5本の指でガリガリと足の親指の付け根辺りのふくらみをひっかき始めた。

「ばはっ!!? くはっ……!!! かはっ、か、……く、き、あがっ……」

 柚希は口元をぴくぴくと震わせ、開きかける唇を必死に噛んでいた。顔面は真っ赤で、目尻には涙が浮かんでいる。
 もう限界だろう、と蓮は思った。
 しばらく土踏まず辺りをソックス越しにひっかいてやり、蓮は手を止めた。

 両足のソックスのつま先を持って、引っ張っていく。
「……く、このっ!! やめなさいよ……アンタ、……こ、殺してやる」
 柚希は力なく毒を吐きながら、足をくねらせて抵抗する。足首の枷でソックスがつかえるが、蓮は思い切り引っ張り、両足とも柚希のソックスをすぽんと脱がし取った。

 エジプト型の素足はやや黄色で、非常に美しいアーチを作っていた。
 蓮が指でひと撫ですると、「くふっ」と柚希は吹き出し、素足をくねらせた。足のよじれる様子が、かなり官能的であった。
「綺麗な形だね。今日は柚希のために、用意したものがあるんだ」
 蓮が微笑むと、柚希は低い声で「死ね」と応じた。

「なんだと思う?」
 蓮は紙袋を柚希に見せた。
「……し、らないわよっ。早く、解放しなさい。アンタ……ぶっとばしてやるんだから」
 柚希は火照った身体を疼かせながら言った。

 肉体的にはほぼ落ちたと判断してよいだろう。柚希の身体はすでにこの指を受け入れつつあるように思われる。後は、大笑いさせてやって、身体の変化、心の変化を理解させてやればよい。

 蓮はニヤニヤしながら、紙袋から円筒形のプラスチック製容器を取り出した。
「なんだと思う?」
「……っ」
 柚希は舌打ちして目を逸らせた。
 天花粉であった。
「ベビーパウダー」
 蓮は手に直接粉を取ると、いきなり柚希の右足に擦りつけた。

「くひゃっ!!? ひゃっ、……くっ、つ、ちょっ、き、ひぃっ!!!」
 柚希の口元が緩んだ。
「ほら、すべりが良くて、くすぐったいだろう? もう我慢しなくていいんだよ」

 蓮は、粉にまみれた両手10本の指で、柚希の左右の素足を同時にくすぐりはじめた。

「ッ――……ふっ、はっ!!! くははははははははははっ!!! くぁっはっはっはっはははっは、もぅだめぇ~~っ!!!」

 柚希は溜め込んでいた息を一気に吐き出すように、笑い出した。
 吊り上げ続けた眉をへの字にし、大口を開けて笑う柚希の表情は、普段の鬼形相とは別人であった。

「やっと笑ってくれたね。やっぱり笑顔の方がかわいいじゃないか」
 蓮は、柚希の足の指の間にも、指先で粉を擦り付けていく。

「くはっはっはっはっはっはっ、うるさいうるさいっ!!! かっはっはっは、やめてぇぇ~~っ!! くははははははっ」

 柚希は首を左右にぶんぶんと振り回し、涙を流して笑う。
 蓮は柚希の足裏に丁寧に粉を擦り付けていった。
 柚希は一度タガが外れてしまうと、笑いが止まらないようだ。小さな刺激にも敏感に反応し、蓮を楽しませた。

「きぃぃ~~っはっはっはっはっ! やめてやめてっ!! くぁぁぁはっはははっははあはっ、笑いたくないのっ!! ひぃぃっひっひっひっひ、笑いたくないのよぉぉぉきっひっひっひっひ~~っ」

「そうかい? 楽しいだろう?」
 蓮は柚希の土踏まずの窪みに粉を擦り付ける。
「きひゃぁぁぁぁっはははっははははっ!!! 馬っ鹿っ、ひひひ~ひっひっひっひ、馬っ鹿じゃないのっ!!! くぁっはっはっは、苦しいぃぃひひひひひひひ、苦しいのよぉぉ!! っはっはっはっはっは、やめてぇぇひっひっひっひっひ!!!」
「でも、笑うと楽しくなってくるだろう?」
「くひひひひひひひっ!! 楽しくないっ!!! 楽しくないわよぉぉぉっひっひっひっひっひ~~」

 蓮は両手で柚希の左足を左右から挟んで持ち、足全体に粉を塗りこむようにくすぐった。
「くひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっっ!!? ば、っひゃっひゃっひゃっひゃ、頭が、ひぃっひっひ、おかしくなるぅぅぅぅ~~」
 柚希の足の指がくすぐったそうにバラバラに動く。
 反対の右足は親指がぴんと反り返って、びくびくと痙攣していた。

「指の付け根にもムラ無く塗っておいてあげないとね」
 両手で柚希の足の指を無理矢理全開にし、指の間をこそぐようにくすぐる。
「きぁぁぁぁ~~っはっはっはっはっはっ!! ひぃぃぃひひひひひひ、くひひひひひひひひひっ!!」
 柚希は首を上下にガクガクと揺らせ、悲鳴を上げた。
 開きっぱなしの口からはダラダラと涎が流れ出、鼻水も噴出している。

「さて、柚希? 僕の指がもっと欲しいかい?」
 柚希の両足を満遍なく粉まみれにした蓮は、柚希の両かかとを軽く引っかきながら聞く。
「ひっひっひっひっひっひっ!!? くひゃっ、いらないっ!! いらないわよぉぉ、きっひっひっひっひ!」
 柚希は口元に泡を立てながら言った。
 やはりプライドの高い娘はおもしろいな、と蓮は思った。

「そう? こんなことされてもまだ意地を張るかい?」
 蓮は、柚希のかかとの下側、アキレス腱の方にも人差し指を這わせ、指先で弾くようにくすぐる。
「くゃっはっはっはっはっはっはっ!!! 意地なんて、……くひひひひひっ!!! そんなとこ、あひゃ、やめてっ、いぃぃっひっひっひっひっひっ!!」
 柚希の足が左右にいやいやと揺れる。

 鉤のような形にした人差し指を、かかとの裏を通って這わせていき、柚希の両足の側部をひっかいてやる。
「くぅぅぅ~~~っふっふふっひっひっひっひっひっ!!! ぅぅうひひひひひひひひっ! 馬鹿っ、ひっぃっひっひっひっひぃぃ」

「足の甲も意外とくすぐったいだろう?」
「きひひひひひひっ!! やめてぇっ!! ひっひっひっひっひ、やめてぇぇっ!!」
「じゃぁこっち側の方が良いのかな?」
 蓮は両手をくるりと回し、柚希の足の土踏まず側をバリバリと勢いよくひっかく。

「あぁぁひゃぁぁぁっはっはっはっはっはっははっ!!! くひぃぃ~~っひっひっひっひっひっひっひ」

 形の良い素足がくねくねとよじれる様子は非常に官能的で、美しかった。
 舌を出してだらしなく顔を歪めて笑う柚希のプライドは、すでにボロボロであろう。
 この指の虜になるのも時間の問題だ。

▼▼▼


 さらに数分ほど柚希の足の裏をくすぐり、蓮は手を止めた。

「……かはっ……ひ、ひひひひ、くくく、……くふっ、ぃひひひ」

 柚希は、蓮が触れなくても笑いがこみ上げる状態に陥っていた。
 蓮は両手をタオルで軽く拭きながら、柚希の緩んだ顔を見据えた。
「柚希。どうだい? おねだりしたくなった?」
「……くっ、くふふふ、……き、ひ、……ば、馬鹿、じゃない、のっくぃひひひひひひっ」
 柚希は歯を食いしばり、こみ上げる笑いを我慢しつつ答えた。
「それは、僕の指がいらないって解釈でいいの?」
「ひ、ひひひひ……くひひひ」
 顔をしかめて笑いながら、柚希は下を向いた。
 かなりの葛藤があるのだろう、と蓮は思った。

「迷ってるんだね。じゃぁ素直にならせてあげよう」
 蓮は言うと、紙袋から豚毛筆を取り出した。
「コレで柚希の足についた粉を、綺麗に落としてあげるからね」

「や、ひひひ、やめっ……」
 柚希が顔をぐしゃぐしゃにして制止するのを無視して、蓮は弾力のある豚毛を、柚希の素足に這わせ始めた。

「かはっ!! くゎっはっはっはっはっはっはっ!! ……ぃぃいははははははは、きひひひひっ、だ、ひぃ~っひっひっひ」

 蓮は筆先を柚希の足の指の間に押し込んだり、かかとから上下に這わせたりして、柚希の足裏についた粉をこそいでいった。
「少し粉をつけすぎちゃったかもしれないね」
「きぃぃっひっひっひっひっひ、くぁぁぁぁはははぁ~~っ!!!」
 柚希の足の指が開き、びくびくっと痙攣するように動く。
 ケバケバした豚毛はかなり刺激が強いようだ。

「ほら、どんどん綺麗になっていくね。綺麗になったら終わりにしちゃうけど、それでいいのかな?」
「くっ!!? ふふふふふふふっ、きぃぃぃひひひひひひひひっ」
 柚希は顔をしかめ笑い続ける。ぎゅっと閉じた目からは涙が溢れ出した。

 じっくりと足の掃除を続けた後で、
「さて、そろそろ終わりだけど――」
「ば、きひぃいひひひひひひひひひっ!!! アンタ馬鹿よっ、ひひひひひひひひ、馬鹿よぉぉひぃははっははは!! しねぇぇっひひひひひひひひひひひっ」
 柚希は甲高い声で蓮を罵った。

 蓮は柚希の言葉を聞いて、微笑んだ。
「それは、僕の指が欲しいって解釈でいいの?」

「くぁぁあぁっはっはっはっはっ、当たり前でしょうがぁぁぁっはっはっはっはっは!!! 早くぅひひひひひひひ、アンタの指でぃぃいひひひひひひひ、続けなさいよぉぉぉひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 柚希の敗北宣言を聞いて蓮は手を止める。
「ひぃひひひひ……」
 余韻で笑い続ける柚希を見て、蓮は筆を置いた。
「柚希。ちゃんとおねだりしてごらん? でないと、このまま解放しちゃうよ?」

 柚希は歯を食いしばり、
「きひ、ひひひひ……、ば、か、……アンタの指、が、欲しいのよ、くふふふっ!! 続けなさ――……続け、て、くださいっ、ぃぃいひひひひひひひひ」

◆◆◆

 すべての工程を終えるのに要した時間は、2時間20分であった。
 また美咲や陽菜に時間のかけすぎだと怒られるなぁと、蓮は苦笑した。