調教くすぐり師の指Ⅱ



「佐藤蓮(さとうれん)?」

T高校第一共用棟最上階、ジャーナル部編集長室にて。二年生新部長、田中美羽(たなかみう)が、回転椅子に腰掛け足を組んだまま凄みのある声を出した。
身長は約165cm。肩下まで伸びた髪で左右一つずつ小さなおさげを作り、胸元にぶら下げている。
ピッチリと着こなされたブレザーの右肩には、『ジャーナル部 編集長』の腕章が輝いている。
一ヶ月前、当時の部長を捏造スキャンダル記事で失脚させ、副部長から繰上げ昇格したばかりだ。

校内で最も影響力、発言力のあるジャーナル部の部長という立場は、野心家にとって非常に魅力的であった。
ジャーナル部はもともと、生徒会執行部の監視の役割、学校と生徒を校内新聞で繋ぐ架け橋としての役割を担って、第一期生徒会執行部始動と同時に設置された機関である。
が、いつしか「監視」は「管理」へと変化し、今やジャーナル部の筆先一つで、生徒会役員を総辞職へ追い込むことができるほどの力を得ている。

「うちのクラスの学級委員長ですよー」
美羽の机を挟んで直立しているのは、二年生ジャーナル部員、佐々木杏奈(ささきあんな)。
身長は155cm程度。ショートヘアをツーサイドアップポニーテールに縛り上げている。
いい加減に着崩されたブレザーの右肩には、『ジャーナル部 記者』の腕章が輝く。
へらへらした態度で、胡散臭い言葉を吐きながら対象に擦り寄っては、いつもうまくネタを収集してくる器用な娘だ。
杏奈が美羽の前に提出した号外新聞の見出しには『破廉恥委員長佐藤蓮! 次々と級女子を手篭めに!?』とある。

「杏奈と同じクラス、ということは、K組ね……。それじゃあ……」
美羽は、長机の端で一人ノートパソコンに向かっていた少女に目をやる。
一年生の吉田心愛(よしだここな)。身長は153cmあるかないか。ウェーブがかかった縮れ毛を切り揃え、外はねボブを形成している。
清潔に着こなされたブレザーの右肩には、『ジャーナル部 データ管理』の腕章が輝く。
「心愛、お願いね」
「はい、部長」
心愛は、抑揚の無い返事をすると、カタカタとキーボードを叩き始めた。

「『佐藤蓮。男性。17歳。二年K組の学級委員長。所属部活動、無し。出身中学は――』」

ジャーナル部のデータベースには、全校生徒の個人情報が管理されている。
心愛は透き通るようなアニメ声で、蓮の個人情報を淡々と読み上げていった。
美羽は両手を組み、杏奈をじろりと見やる。

「で? この佐藤蓮の失脚で、誰が得をするの?」

杏奈はニヤリと笑った。
「生徒会、そして、我らジャーナル部ですよー」
「生徒会……。つまり、次期生徒会長選挙に関係があるのかしら」
「佐藤蓮は、文化祭後の会長選挙に立候補するようです」
美羽はアゴに手を当て、眉を寄せた。
「有力候補の現副会長が敗れるとでも?」
「う~ん。我々が『有力候補』と謳っている限り、かなりの票を集めることは確実です、がぁぁーしかしぃっ! うちのクラス、文化祭にかなり力はいってますのでー、……というか、文化祭の企画会議の進行速度と、まとまり方が異常といいますかー。クォリティに関しては、現段階で大成功が目に見えておりましてー」
「何やるの?」
「L組と合同で、お化け屋敷ですー」
「……なるほど。我が校文化祭は、三年生の最後の思い出作りと同時に、次世代指導者の選別も兼ねてるからね。文化祭で、指導力と企画力を発揮、その力が証明されれば、会長選挙にも有利……」
「一方現副会長はー」
「現会長同様、我々ジャーナル部の犬。実際の指導力は皆無に等しい。ゆえに、世論が転ぶ可能性は充分に考えられる、というわけね」

美羽は立ち上がり、窓から外を眺めた。
「……いいわ。佐藤蓮をつぶしましょう」

「ありがとうございますーっ! これで今月記事掲載数は私がトップで――」
「で、も」
美羽はバンと机に手のひらを置いた。
「この記事じゃ弱いわよ?」
「あ、ダメですかー……」
「決定的な写真を撮ってきなさい。明朗な好青年を、説得力を持って、確実に転落させるための、証拠写真を」
「…………」
杏奈はクッと顔をしかめた。

「いい? ネタをゴシップで終わらせるか、既成事実にするかは、我々ジャーナリストの腕次第よ。手段は問わないわ。決定的な証拠を用意しなさい」

◆◆◆

――翌日。

「というわけで、なかなかしぶといですよーっ! ボスー」

杏奈は肩をすくめて見せながら、ソファに座った蓮にアピールする。
場所は蓮の家。
薄桃色の照明に照らされた室内には、蓮と杏奈の他、三名の女子生徒。

「やばいじゃんよ蓮ーっ」
蓮と反対側のソファで寝そべった小林凛(こばやしりん)が、読みかけの漫画を伏せながら言う。
ロングツインテールのL組学級委員長で、ここ数日は文化祭の打ち合わせと理由を付け、しばしば蓮と行動をともにしている。
すっかりくつろぎモードの凛は、ブレザーを脱ぎ捨てワイシャツにクウォーターパンツ姿である。
「ってか、杏奈さぁー、説得する自信あるって言ってたじゃん」
「いやぁ~、想像以上のしぶとさでしたねー。面目ないですー」
こちんと自分の頭にげんこつを乗せながら、杏奈は舌を出した。

「つまり、証拠写真を用意すれば彼女が動くというわけですか……」
山本美咲(やまもとみさき)が、折りたたみベッドに座ったまま「ふむ」と考える仕草を取った。
ボブカットのK組図書委員で、冷静沈着頭脳明晰(杏奈評価)。蓮の野望を実現させるべく、手腕を振るう。

「そもそもさぁ、なんでこんな回りくどい方法とんの? 普通にジャーナル部に乗り込んだんじゃいかんの?」
凛が頭を美咲の方へ向けた。
「ジャーナル部があるのは第一共用棟ですよ? 本来ジャーナル部を敬遠して近づかないはずの『○○委員長』クラスの人間、しかも普段第四共用棟を拠点としているはずの委員長が、第一共用棟付近をうろついていたら不自然です。それに小林さん、よく考えてください。そもそも委員長が何故、ジャーナル部の部長を落とそうと考えたのか」
「……もしもし、図書委員さん? 私も一応委員長なんだけど?」
「私達が欲しいのは、ジャーナル部が所持する全校生徒の個人情報です」
「あ、無視っすか……」
「委員長の指は十本しかありません。一日に調教できる人間の数も限られています。そこで、より円滑で効率的な調教活動を行うために、ジャーナル部のデータベースが必要なのです。……佐々木さん。ジャーナル部員は総勢何名ですか?」
急に話を振られ、人差し指を自身に向け「え? 自分ですかぁっ!?」と慌てふためく杏奈。
「え、えっとー、何人でしたっけー? あー、30人くらい?」
「小林さん。いわゆる『普通にジャーナル部に乗り込んだ』として、いきなりその人数を相手にできると思いますか?」
凛は「くっ」と苦虫を噛み潰したような顔をした。
「答えてください」
「…………」
「答えてください」
「……はいはいできないできない。どーせ私は考え浅いですよーだっ」
神経を逆なでするような美咲の辛らつな言い方に、べっと舌を出す凛。
「私達はジャーナル部員全員を、一度に落とす必要はないのです。委員長の負担を考え、調教は必要最低限に抑えましょう。号外記事が通りさえすれば、部長は生徒会に掲載許可印を取りに行きます。部長が第一共用棟を出たそのときがチャンス。……部長さえ落としてしまえば、あとはこっちのモノです。ジャーナル部を味方につけ、会長選挙をラクに乗り切りましょう。生徒会執行部に入れば、校内どこにでも神出鬼没の特権が――」

「蓮」
美咲の演説を止めたのは、ずっと蓮の肩に頭をもたせ掛けるように座って本を読んでいた加藤葵(かとうあおい)だった。
艶やかなロングへアを腰まで下ろしたK組一寡黙な文学少女は、くいくいと蓮の袖を引っ張る。
「なんだい? 葵」
蓮が優しい声を出す。
美咲は、若干頬を強張らせ、軽く鼻息を立てた。
「人がいる」
葵は本のページから目を逸らさずに言った。
「人?」
「窓の外。ずっと見てる」

「ええぇっ、窓っ!?」
「おっと、ストップ」
凛が声をあげ、勢いよく起き上がろうとしたため、蓮は制止させた。
「僕がゆっくり確認するから、皆はそのままの体勢で、自然に振舞ってくれるかい?」
言うと、蓮は目線だけ窓に向ける。
確かに、外からじっとこちらを伺うショートカットの少女が一名。遠すぎて顔までは識別できないが、制服はT高校のものだ。
「カメラ。持ってる」
葵が呟いた。
「写真。二枚、撮られた」
「ジャーナル部か? 杏奈。ショートカットの部員に心当たりはあるかい?」
「ショートカットですかー、ちょっち待ってくださいよー? ……あー、いますねー。顔見ないと本人かどうかわからないですがー」
「彼女を、捕獲できる?」
「自分がですかー?」
「汚名返上のチャンスだよ」
蓮は、杏奈に向けてわきっと指を蠢かせて見せた。
「……わっ、わかりました。ま、まかせてくださいよーっ!!」
杏奈はうずっと身体を震わせながら、声を上げた。

「逃げた」
葵は本から目を逸らさずに言う。

「かっ、必ず!! 追いかけて捕まえてみせますよーっ!」
杏奈はグッと拳を握り締めると、足早に部屋を出て行った。

◆◆◆

「待ってくださいよーっ!! なんで逃げるんですかーっ??」

林の中、大きなバッグを肩から提げて、杏奈から逃げているのは、清水希(しみずのぞみ)。
身長はおおよそ156cm。
ジャーナル部の一年生で、腕章には『ジャーナル部 記者』とある。

「ちょっとーっ、希さーんっ? 自分は、佐々木先輩ですよー?」
「せ、先輩がっ! なんでっ!! あの家にいるんですかっ!!?」
ゼェゼェと息を切らせ走りながら、希は声を上げた。
「それはこっちの台詞ですよーっ! 佐藤蓮は、自分の取材対象ですよーっ?」
杏奈は余裕を持ってジョグしながら、徐々に希との距離をつめる。
「だっ……だったらっ!! なんでっ……きゃぁぁぁっ!!!?」
あまり走ることは得意でなかったのか、希は足をもつれさせて転倒してしまった。

「痛っ!! いたた……」
足を押さえる希にじりじりと近づく杏奈。
「大丈夫ですかー?」
「足、ひねったみたいです……」
「カメラの話ですー」
「ああぁっ!!?」
希があわててバッグの中身を確認すると、幸いカメラは無事だった。俊敏な動きからして、足をひねったというのは嘘のようだ。
「希さーん。いけませんねー! ジャーナリストたるもの、カメラは命の次に大事にしないとー。足や手なんかはいざとなったら切り捨てましょうねー?」
杏奈は尻餅をついた希の前に仁王立ちをすると、ふふんと鼻を鳴らし、希を見下ろした。
「せ、先輩。……な、なんで、追ってきたんですか?」
「自分のテリトリーに同業の侵入者見つけて黙って放置できますかー? 希さんこそ、なんですかー? 他人のネタを横取りしようとしてたんですかー?」
「わ、私はっ! 部長の指示で、ここに来たんです……。そ、その……佐々木先輩が今日は風邪で早退したから代わりに行けって……」
希は怯えたような顔で杏奈を見上げた。
「あーなるほどー。部長にはちゃんと本当のこと言っておいた方がよかったですねー」
「え?」
「ほらー、佐藤蓮が帰宅する瞬間から家に張り込んでおいた方が、決定的な写真取れるかなーと思いましてー。佐藤蓮って意外と慎重派なんですよー」
「……そ、それで、家、に?」
希は怪訝な表情をした。
「ええっ。ですから佐藤蓮が帰宅したところから、続々とクラスの女子が集まってくる写真がたくさん撮れましたよー。最後に自分が、何食わぬ顔で登場、飛び入り参加の振りをしたらー、佐藤蓮は大層喜んでましたよー」
「……っ!!?」
「乱交パーティという読みは当たって――……希さん? どうしましたー?」
希は、じりじりと後ずさりをしていた。
「せ、先輩。な、なんで、今、そんな嘘、言うんですか?」
「は?」
希の顔は恐怖で歪んでいた。
「せ、先輩、一番初めっから、家の中、あの部屋で待ってたじゃないですかっ!! なんで、『飛び入り参加』とか『最後』なんて嘘……」
「…………。一年生、今日は七時限まである日じゃ?」
「じ、時間割変更で、昨日と今日、時間割入れ替わってるんですっ! えっ? ま、……それ知った上で、今の、嘘を……」
「あー……無理ですねー、あはははははは、もー無理ですねー、あはははははははははははっ!!!」
杏奈の高笑いに、希は絶句した。
「あー、もー、あれですよー。自分に追いつかれた時点で、希さんの運命は決まってたんですよー。せっかく穏便にお連れしようと思ってたのにー、残念ですー。……ってか、最初からこうした方が手っ取り早かったですねー」
杏奈はすばやくポケットから催眠スプレーを取り出し、希の顔に吹き付けた。
どさっと倒れた希の姿を見て、杏奈はぽりぽりと頭を掻いた。

「あちゃー……。この状況。一人じゃ運べませんねー……。うーん……応援、呼びますかー。こりゃ、ご褒美はお預けですかねー、残念ですー」

▼▼▼

「――希さーん、起きてくださーい」

「んぅ……ぐ……。……っ!?」
希が目を覚ますと、すぐに自身の身体がX字に拘束されていることに気付いたらしく、驚いたような表情で目の前の杏奈を見た。

「せ、先輩……。ここ、どこですか?」
「ボスの家ですよー」
「ボス……?」

「ようこそ、清水希さん、だね?」
ソファから立ち上がった蓮は、ゆっくりと希を拘束したベッドへ近づく。
「さ、佐藤蓮……」

「希さーん、いけませんねーっ!! ボスに向かってフルネームで呼び捨てるなんてー」
杏奈は「ノンノン」と人差し指を左右に振った。
「さ、佐々木先輩……。ど、どうして? ジャーナリストの誇りはどうしたんですかっ!! こんな、……こんな奴に、か、懐柔されるなんてっ!!」
「おやおや、ボスを『こんな奴』呼ばわりとは――」
「杏奈」
蓮は、杏奈を優しくなだめた。
「清水さん? 悪いけど、今日はあんまり会話を楽しんでいる時間はないんだ。美咲? 時間は?」
「完全下校時刻まで、2時間を切りました。正確には残り、1時間と57分34秒です」
「完全下校時刻までに一旦部室に戻らないといけないだろう? 悪いけど、今日は速攻で落とさせてもらうよ」
言うと、蓮は仰向けで動けない希のブレザーの上着ボタンを外す。

「えっ、な、何するつもりですかっ!! や、やめてっ! やめてくださいっ!!! さ、佐々木先輩っ!! 助けてくださいっ!!」
「んー、心配しなくても大丈夫ですよーっ! 一時間以内には、希さんもこっち側の人間ですー」
「い、嫌っ!! さ、触らないでぇぇっ!!」
「あ、そうだ、さっき希さん『懐柔』って言ってましたけどー、それは語弊がありますよー」
「イヤッ!! やめてっ! 私、男の人に体、触られたこと……っ」

「こういうのは、『調教』って言うんですよー」
杏奈の言葉と同時に、ワイシャツ越しに、蓮の指が希の肋骨の上で踊り始めた。

「きゃぁぁぁんっ!!!? きゃっ、あはっ、あはははははっ!? へぇぇっ!!!? な、何っ!! ひひひひひひひっ、な、何するんですかぁぁぁあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~っ!!」
突然の刺激に、希の身体はびくんと飛び跳ねた。

「僕の指くすぐったいかい?」
蓮はゴリゴリと希の肋骨をほぐすようにくすぐする。
「ぎぃぃぃひひヒヒひひひひひひっ!!! くすぐっ……くすぐったいですよぉぉぉあぁぁぁはっはっははっははっはっはっ!! やめてぇぇぇぇへへへへへへへへへっ」
蓮は徐々に指の運動を激しくしていく。
「あぁぁぁぁっはっはっはっはっはっ!! やめぇぇぇっ! せんっくひひひひひっ!! 先輩っ!!! た、たすけてぇぇぇひゃひゃひゃひゃひゃ、あはははっ、いっひっひっひっひっひっひ~~!!」

杏奈は、涙を流しながら助けを求める希を見て、ハァとため息をついた。
「この状況で、まだそんなことを言いますかー。素直に落とされてしまった方がラクですよー?」
「いひゃはははははははははっ!!! おとっ!? 落とされるってぇぇぇひひひひひひひひ、いひぃ、意味があっぁっはっはっはっはっは、わかりませんっ!!!」
「ほ~ら、意識をボスの指に集中させてみてくださーい? ボスの指からだんだん気持ちのい~いオーラが送られてくるのがわかりますかー?」
「うひひひひひひひひひひっ!!! わかっ!!? わかりませんよっ!!! くひゃっ!? いやぁぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!! せ、先輩、おねがいぃぃひひひひひひひひひひひっ!!! たすけてぇぇぇぇっ!!! 死んじゃうぅぅぅひゃっひゃっひゃっひゃっ!」

●●●

「ここに、ボスのお楽しみを止める人間がいるはずないじゃないですかー? まーだ、わかりませんかー?」

「杏奈さぁ~」
ソファに寝そべっていた凛が声を上げた。
「なんですかー?」
「ちょっとうっさい」
「な、ななっ! なんですとー」
「小林さんにうるさいと注意されるなんてよっぽどですね」
腕組をして時計の前に立っていた美咲が、便乗するように鼻で笑った。

「黙って蓮に任せときなよ~。こないだは杏奈だって、いつまでも『助けて助けて』泣きながら喚いてた癖に~」
凛が漫画のページをめくりながら「ヒヒヒ」といたずらっぽく笑う。
「い、いやいやっ……あ、あれは、だって、ほらアレですよー……」
杏奈はうだうだと言い訳をしながら、凛がだらんとうつ伏せに寝そべったソファに近づく。
「やられてるときは、……ほら、頭が真っ白になると言いますかー、凛さんも経験あるからわかるはずで――」
「だかっ、うっさいって! 読んでるからっ」
杏奈は「クッ」と、ソファに寝そべった凛を見下ろす。
「……あれはうるさいって注意しないんですかー?」

「いぃぃぃぃひひひひひひひ、先輩っ!! 助けてっ!! 助けてぇぇぇぇいぃぃっひっひっひっひっひっひっひ~~っ!!!」
希は蓮に腋の下をぐりぐりとほじくられ、ギシギシとロープを軋ませながら大笑いしていた。

「杏奈さぁ、揚げ足とんなよぉ~。あれは、BGMじゃん?」
凛は、傍らの杏奈に目もくれず、「にしし」と笑いながらページをめくった。
「BGM、ですかー……」

杏奈は凛の後頭部をにらみつけ、しばし沈黙していると、いきなり両手を凛の腋の下に差込み指を動かし始めた。

「わわわっ!!? ちょっ、杏奈っ!!? にょぁはっ!! にょぐゎはははははははははっ!! こんのっ、ばっか……っ!! くっそ、いきなりっ!! ぃぃぃうはははははははははははははっ!!!」
凛は漫画を取り落とし、両手をつっぱり起き上がろうともがく。
「させませんよー」
杏奈は凛の腰辺りに勢いよく乗っかり、馬乗りになった。
「ぐはっ!! おもっ!! 体重かけんなっ」
「口答えできる立場ですかー?」
杏奈は、凛の腋の下で計十本の指をぐちゃぐちゃに掻き動かした。
「ぐひゃっあぁぁーっはっはっはっはっはっはっ!!! ちょっ、もうっ!! 杏奈っ!!! こんのっにょはっははははははっ!! 馬鹿杏奈っ、やめぇぇぇっ!! くそっ!! あほぉぉぉいひひひひひひひひひひ~~っ」

凛はバタバタと両足を蹴り上げ、杏奈の背中を蹴りまくる。
「痛っ、痛いですってー。……ってか、凛さん、よくこの状況で暴言吐けますねー」
言いながら、杏奈は両手を凛の脇腹に移動させる。
「うひひひひひひひひっ!!! にょぉぉぉぉほほほほほほほほほほ~~~っ!! こんのっ!! 杏奈っ、強いっ!! それ、強いんだってぇぇぇへへへへへへへへへへっ」
凛は両腕を左右上下に振り回しながら、必死に杏奈の手首を捕らえようとしている。
「ぐはっ!!? あ~~っはっはっはっはっはっはっ!! 杏奈っ!! へたくそっ! へたくそっ!! 痛いんだってぇぇへへへっへへ、痛くすぐったいっ!! 痛くすぐったいのぉぉほほほほほやめぇぇれぇぇぇぇひっひっひっひっひっひっ!!」
「へたくそって、せめて言葉選んでくださいよーっ」
「ま、マジでくるしぃぃひひひひひひひひひひっ!! ほんっと、ほんとにひゃひゃひゃっ! 体勢きついっ!! うひひひっひひひひひっひっひっ!! 窒息死するぅぅぅあははははははははははは~~っ」

凛は目に涙を浮かべ上半身を弓なりに仰け反ったり、ねじったり、激しくもがいた。
「あぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっ!! 死ぬぅぅっ!! 葵っ!! ボーっとしてないで助け――」

凛が片目を開いて見ると、葵は、二人分の激しい笑い声が響く部屋の真ん中、凛と向かいのソファで、こっくりこっくりと居眠りをしていた。

「にゃぁぁぁっはっはっはっはっはっ!!! なんでこんな場所で寝られんのよぉぉぉぉははははははは~~っ!! 葵ぃぃぃっ!! 起きて助けてぇぇぇっひっひっひっひっひっひ~~!!」

「佐々木さん、小林さん、お二人とも、あんまり調子に乗って、体力消耗しすぎないようにしてください」
美咲は、ため息をつきながら、淡々と言う。
「ちょぉぉほほほほほほほほっ!! 図書委員っ!! 私ぃぃひひひ、被害者っ被害者じゃんよぉぉぉっはっはっはっはっはっはっはっは~~~!! 全部っ!! 馬鹿杏奈……っ、バカンナのせいじゃんかぁぁひゃっはっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~っ!!」
「まーだ、『馬鹿』言いますかー? てか、変な繋げ方しないでくださいよー。あ、意外と腰周り弱いですかー」
「うふぉほほほほほほほほっ!! やめっ!! ほんとにひひひひひひひっ、息できっ……息できにゃってへへへへへへへへへへへ」

「お二人とも、そろそろふざけるのは」

「だからっ!! 図書委員っ! はははははははっ! 助けっ!! うぅ~ひひひひひひひひ、悪いのはバカンナだけだってぇぇえっひゃっひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~っ!」
凛はほとんど飛び跳ねる勢いで暴れる。

「あ、ちょっと待ってください」
美咲は蓮に呼ばれた。

「待ってってー、このままくすぐり続けてろってことですかねー?」
「杏奈ぁぁぁぁっ!! もういい加減にっ!! いひゃははははははははっ、やめろってぇぇあっはっはっはっはっは~~……」

美咲は、杏奈と凛の元へ駆け寄る。
「委員長から、こっちはこっちで続行しろとお達しがありました」
「ホントですかー?」
杏奈が指を止めた。
「……はぃ?」
凛は、肩で息をしながら口をぽかんと開け、美咲の顔を見上げた。
「こちらの笑い声が、向こうの清水希さんの笑いを誘発して、作業効率が上がるそうです。よって、続行します。ロープもってきました」
言うと、美咲は凛の両手を持って万歳させ、すばやく手首を縛った。
「……は? と、図書委員? えっと、また私をっ!? ひ、人変えないの?」
「佐々木さん、足お願いします」
「靴下脱がしますねー」
「無視やめれって!! この体勢ホントきつい」

杏奈はうつ伏せの凛に馬乗りのまま方向転換し、凛の両足から白いハイソックスを脱がし取った。
白いギリシャ型のハイアーチが露になる。

杏奈は凛の左足首を持って、ぐいっと引き寄せた。
「ちょっと汗かいてますかー?」
「こらっ!! バカンナっ! エチケットっ!」
「それこっちの台詞ですよー。……その呼び方、気に入ったんですかー?」
言うと、杏奈は、右手で凛の素足をくしゅくしゅといじり始めた。
「うはっ!! うはははっ、ちょ、も~~~っ!!! ははっ、ダメだってぇぇぇっ!! この体勢でっ!! ひひっ、笑うのしんど、あはははっ」

「では、こっちも失礼して」
美咲は、手首を縛られ万歳させられた凛の腕に座り、凛のがら空きの腋の下をくすぐりはじめた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! ううぉぉぉっ!! いきなりっ!? いきなり全開っ!?? いやははっはあははっはっはっはっはっはっははっはっは~~っ!!!」
「委員長の作業効率のためです。しっかり笑ってください」
「図書委員っ!!! まじきついっ!! マジ息すえないいぃぃひひひひひひひひひひ~~っ!! うわっくわっくあっふわっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
凛の身体は上下にびくびく痙攣するように動くが、二人分の重みで、まったく身動きが取れないようだ。
「笑い死ぬぅぅぅぅぅ笑い死ぬってぇぇぇぇぇっ!!! あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~~っ!!」

「凛さんの足の裏って、意外とえろーい形してますよねー」
杏奈は言いながら、凛の左足の側面に人差し指を這わせる。
「うひひひひひっ、ひひひひっ!! や、やめっ」

「アーチがものすごーく綺麗ですよねー」
言うと杏奈は、揃えた指先を8の字に泳がせるように、凛の土踏まずを撫でた。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! そ、そんな撫で方っ!!! やめろぉぉぉくひひっいぃぃ~っひっひっひっひっひっひぃぃ~~っ!!!」
「おやおやー? 引っかく方がお好みですかー?」
杏奈は、人差し指で鍵爪のような形をつくり、爪でガッガッと縦に切り裂くようにして、凛の足裏をくすぐる。
「ぎゃはっ!? ぎゃはっはっはっはっはっはっはっはっはっ~~~!! ひぃぃひひひひひひひ、もうダメっ!! ホントムリィぃぃひひひひひひひひ~~~っ」

▼▼▼

一方、蓮はひと段落して、希の足下に移動していた。

「い……ひひひ、も、もう、許して、ください」

希は顔を真っ赤にして歪め、涙をぽろぽろ流しながら訴える。
息も絶え絶えで、口周りは涎と鼻水でテカテカと光っている。

「もう少しの辛抱だからねっ! ハハッ」
蓮は、希の左足から、林の中を走ったせいで汚れてしまった白いハイソックスを抜き取った。
「や……っ」
現れた素足は、エジプト型の偏平足だった。
かなり汗ばんでいるようだ。
「運動不足かな?」
希の足の指がぎゅっと閉じ、素足の中央に皺がよる。
蓮は、人差し指で希の足の皺をのばすように動かしてやる。
「うひっ!!? いひひひひひひひひっ!! だ、ダメっ!! やぁぁんっ! やめてくださぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひ~~」
希の足の指が開いたり閉じたり、くねくねとくすぐったそうに動く。

蓮は、希の右足のソックスも脱がし、希の両足の裏に人差し指を優しく這わせた。
「ひゃんっ!! うひゃんっ!!? あひゃぁぁんっ、ひゃめっ! ひゃめぇぇっ!! いひひひひっ、ひひひひ、うひゅぅぅ」

「清水さんは、しばらくこれを続けるのと、一気にかきむしるのはどっちが好きかな?」
蓮は焦らすように希の足裏をなぞりあげる。
「ひゃぁぁんっ!! ひゃははっ、あぁぁぁはっはっはっ……んふふっ!! き、気持ち悪いっ、あひゃはははは」

蓮は希のかかと辺りをくるくる人差し指で円を描くようにくすぐった。
「ひゃはっ!! あははははっ! もぅっ、ひひひひ……ひひ」
希の足が左右によじれる。
希の目からぼろぼろと涙が溢れる。

「どうだい?」
「いひぃひひぃひっ……ひひひひひっ! くひぃひひひひひひ」
「おねだりしたくなってきた?」
希の足の指が、ぴくぴくと痙攣するように小刻みに動く。
「あぁぁぁぁっ、あはははっ、……ひひひひ、もぅ」

しばらく希の足の裏を焦らすようにくすぐっていると、堪えられなくなったのか、希はぶくぶくと泡を吹き始めた。
「ぐしゅっ……くふふふふ、いあははっは、ひひひ……お願い……ぐひひひ」

蓮は時間を確認する。新記録達成である。

「うひひひ、も、ぅくくく、一気に、あはあは、……やって、くらさい、くひひひっ! おにぇっ、お願いします」

「よくおねだりできたね! えらいよ希」
言うと、蓮は希の右足の親指を持って、引っ張りそらす。右手でがりがりと親指の付け根のふくらみを思い切りひっかいてやった。

「ぎゃはっ!!!? あははっはははははっははっはっはっはははっはっははっ!!!! あぁぁ~~~っはっはっはっはっははっはっはっはっは!! いぃひひひひひっ!!」
希は身体をびくんと波打たせ、笑い悶える。
「あははっははははっ!! いはははっははははっ!! ぎゃっははっはははははははははっ」
「じゃぁ、いくつか質問に答えてね? ちゃんと答えないと、コレやめちゃうからね?」
「あひひひひひひひひひっ!!! ひぃぃぃっひっひひっひっひっひっひっひっひ~~」
希はなんとか首を上下にガクンガクンと揺らし、肯定の意を表したようだ。

「ジャーナル部の部長は、どうして希をここによこしたの?」
「あははっはあはっははははひゃひゃっ!! きひひ、昨日っ!! しゃはっ!? 佐々木先輩がっ! ががが、も、持ってきた記事ひひひひひひひひ~~~」
「記事が、どうしたの?」
蓮は、希の足の人差し指と中指の間をいじる。
「くわっはっはっはっはっはっ!!! 信憑性確認っ!!! うひゃひゃひゃひゃっ!! たひゃぁぁっ!? 対象とクラス一緒の、佐々木先輩だけじゃ信用できないぃってっふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~っ」

なるほど。やはり、伝統あるジャーナル部の最高責任者というだけあって、侮れないようだ。

「ふぅん。部長は他に、何か言ってた?」
蓮は、希の足の指を、それぞれつついてやる。
「きゃははははっ!! 写真っ! ひひひひ、家の写真っ!! くひひひっ!! 部屋の写真とってこいってひひひ、合成に使うってぇぇあっはっはっはっはっはは~~」

合成とは……。

「合成ってどういうこと?」
蓮は、ちょうど希の足の指の付け根をカリカリとひっかく。
「かははははははっ!!? 部長は、よほぉぉぉ、よくやるんですぅっ!! きゃははっ! 確実に対象を、ひゃはははっ転落させるためのっ!! アダルトっ、きひひひひひ、ヴィジュアルの、ひひひひ、俳優のひょよ、コラージュとあかぁぁっはっはっはっはっ! 保険んんひひひひひひひひひひ~~っ」

蓮は、ゾクリとした。
恐怖からではない。
やり手の戦略家を味方につけることができるかもしれないという、期待による高揚感だった。

「その合成技術は? 部長が自分でやってるの?」
蓮は両手で希の右足を掴み、足裏マッサージをするように、親指でぐりぐりと足の側面を刺激してやった。
「ひゃははははははははっ!! で、データ管理のっ!! 一年生いひひひひひひひひっ! 得意な子ががががはっははは、いるんですぅぅ」
「名前は?」
「きゃはははははっ!! よ、ヨシダっ、ココナっ!! ひゃっぁ~っはっはっはっはっはっはっはっ!! 現部長にょほほほほほっ、側近ぃひひひひひひひひひひ~~っ!」

ヨシダ、ココナ、ね。

「他、ジャーナル部の内情について、僕に教えてくれることがあったらなんでも言ってね? そのたびに、くすぐリ方変えてあげるから」
「きゃはははははっはははっ!!! あぃひひひひひひひひひひっ!!!! 部長はっ、きゃははっ、一ヶ月前――」

◆◆◆

希の調教に成功したことで、ジャーナル部の情報をかなり仕入れることができた。
というのも、希はかなり部長の信頼が厚い人材らしく、裏事情に精通していたのだ。
希によると、部長は裏で、杏奈のことをを『ゴミ収集車』と揶揄しているらしい。ゴミネタばかり集めてくるくせに、口だけは達者で――と、ひどい言われようだ。
そんな杏奈が有望な記事を書いてきたせいで、部長は不審に思ったらしいのだ。
杏奈の言葉を全面的に信用して、ジャーナル部をなし崩しに落とそうとしたのは、ちょっと軽率だった。
が、その一方で、杏奈を泳がせたおかげで希という切り札を得ることができた。

データベースの吉田心愛と、それを操る田中美羽、か……。
蓮は、二人のターゲットを確定したことによって、期待に胸を躍らせた。



◇◇◇

佐々木杏奈は目を覚ました。
「えっ?」
何が起こったのかわからないのか、盛んにきょろきょろと辺りを見回す。
杏奈の身体は四肢が目一杯引き伸ばされ、仰向けX字の状態で、両手首足首を縛られていた。

「おはよう、佐々木さん」

蓮の声に、びくんと肩を震わせる杏奈。

「佐藤蓮……っ。ここは……」
「わかるだろう? 君が覗き見していた例の部屋だよ! ハハッ」
「……そのようですねー……」

ブレザー姿の杏奈の肩には『ジャーナル部 記者』の腕章。両腕両脚に力をこめると、ギシっとロープが軋んだ。

「葵をそそのかして、僕を尾行してくれたようだね?」
「…………」
杏奈は黙って渋面を作る。
が、すぐに思い出したように、ハッとした。
「あ、……葵さんは、どうしたんですかー……?」
「気を失う前の記憶が無いのかな? 葵が君に催眠スプレーを吹き付けたはずだけど……」

「……え、まさかっ、葵さんがっ?」
「葵はもう、僕の味方だよ。相手に気付かれずに眠らせるなんて、葵もなかなかやるね。……それにしても、佐々木さん、ちょっと警戒が足りなさすぎじゃないかい? 今日は葵の方から誘う予定だったのに、まさか、先週と全く同じように、君から葵を誘って僕を尾行しようとは」
杏奈は「くっ」と歯軋りした。
「佐藤蓮……。自分を、どうするつもりですかー……?」

「僕の力になって欲しい」
「嫌だといったら?」
「身体にお願いしようか」

蓮は、杏奈に馬乗りになると、杏奈の上着のボタンを上から順に外し始めた。
「……佐藤蓮……おろかですよー」
「なんだい?」
「ジャーナリストをレイプするなんて、頭がイカれてるとしか思えませんよー……」
杏奈は眉をひそめ、目を閉じた。

「レイプなんてしないよ。ただ、僕は君が必要だし、君も僕が必要になる」

蓮は、ワイシャツ越しに杏奈の腋の下にずんと両手を突きたてた。
「あひゃゃぁぁっ!! なっ!? な、ひっ!! なんですかーっ!!!?」
杏奈は目を見開き、蓮に抗議する。
「ひゃっ、ひっ、なっ、ひひっ……佐藤蓮っ!! どういうつも、きひぃぃんっ!!?」

蓮は杏奈の腋の下で、ゆっくりと指を動かす。
「うはぁぁっ!!? くっ……や、やめっ!! なんでっ! ひひひっ、くす、こんなことをっ!?」
杏奈は肘をガクガクと振るわせ、首を左右にぶんぶんと振った。小さなツインテールが揺れた。
「我慢しなくていいんだよ? ほら、笑ってごらん」
蓮は人差し指を杏奈の腋の窪みに差し入れ、くいくいと撫でた。
「あはぁぁぁっ!? このっ……ひひひっ、いひっぃぃん、やめてっ、くださいっ!! くはぁぁ」
杏奈はぎゅっと目をつむり、奥歯をかみ締めている。

「さて、このまま3時間人差し指でなぞり続けると、佐々木さんはどうなっちゃうかな?」
「ひっ!? ひひひっぃいんっ!! そ、そんなことっ、されたらっ……くひぃ、狂っちゃいますよっ、ひひひぃぃ」
杏奈は目尻に涙を浮かべた。
「もどかしいかい?」
「くくくくく……いやっ、くくくっ、ひひひひ、やめ、……やめて、くださいぃ」
「もっと笑いたい?」
「うくくくくく、だ、ダメ、ですぅぅ、ひひひひっ……やめて……」
「本当はもどかしくて、もっと強くくすぐって欲しいんだろう? 我慢できないぐらい笑わせて欲しくなってきてるんだろう? 僕の指で」
「そ、ひひひひひっ、そんなこと……っ、くくくく、ダメ……頭が、変に……くひひひ」

五分ほど腋の下を人差し指でなぞり続けると、杏奈の腋はすっかり汗でびしょびしょに濡れてしまった。
「んくくくく、ホントに、……ひひひ、だめ、やめ、……ひはぁぁっ!!? ひひひ、うくくひひひひ」
杏奈は荒い息を立てる。

「なかなか辛抱強いね。良いよ、佐々木さん? ……でも、そのせいで、この後少し辛くなるだろうけど」
「ひ、ひひひ、ど、どういう……?」

その時、ガチャリと部屋の扉が開き、紙袋を持った凛と葵が入ってきた。

「えっ!? まだ落ちてなかった!?」
凛が素っ頓狂な声をあげた。

「まぁずっと、こうやってただけだしね」
蓮は、再度杏奈の腋の下で人差し指を優しく動かして見せた。
「ひぃぃっ、ひひひ、もう、やめて……」

「うっわ……生殺しとか、蓮――」
「鬼畜」
葵が凛の言葉に繋げた。

「葵、言うね?」
蓮は微笑み、指の動きを止めると、ベッドから飛び降りた。
「……お、あ、葵さん……、た、助けて、ください……」
杏奈が肩で息をしながら声を絞るが、葵はまったく気にも留めず、蓮の元へまっすぐ寄って行った。凛もそれに続く。
蓮が凛から紙袋を受け取り中身を確認していると、葵が蓮の袖を掴んだ。
「……だから好き」
葵はぽそりと呟き、食い入るような目で蓮の指を見つめた。
蓮は、右手を葵の首筋に這わせてやった。
「ん……っ」
「あぁっ! 葵ずるい」
凛が抗議する。蓮は紙袋を持った左手の人差し指を立て、凛の脇腹をつついた。
「あにゃんっ!!」

「大丈夫。せっかくテスト中手伝いに来てくれたんだから、後で二人ともゆっくりやってあげるよ! ハハッ」

▼▼▼

蓮は紙袋を抱えたまま、杏奈に近づく。
「さて……」
蓮は、片手で杏奈のワイシャツのボタンを下から数個外す。
「……さ、佐藤蓮……、な、なにを……」
ペロンとワイシャツの裾をめくり、杏奈の引き締まったウエストを露出させた。
「ひぃっ」
急にお腹を外気にさらされ、高い声を出す杏奈。
蓮は微笑みながら、紙袋から羽箒を取り出した。
「ひぃぃぃっ!!?」
杏奈は悲鳴を上げた。
「これから何をされるか想像したのかな?」
「……お、お願いですよー……、そそ、それは、勘弁してください……」
杏奈は涙目で訴える。
「佐々木さん。きっとその想像は一部間違っているよ? きついことに変わりはないけれど、きつさの意味が違うんだよ?」
「……え?」

「もし、指でやって欲しくなったら、いつでも言ってね?」

蓮は、杏奈が言葉を飲み込む前に、杏奈のお腹に羽箒を這わせた。
「うひゃぁぁっ!!!? ひゃっ!! ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! あひゃひゃひゃっ、ひゃぁぁ~っはっはっはっはっはっはっはっはっは~~っ!!!」
杏奈はお腹を引っ込めようと身体をよじる。
「あひっ!! いひひひひひひひひっ!!!? ぞわぞわってあぁぁっひゃっひゃひゃっはっはっはっはっはっは~~っ!!! 気持ち悪いぃぃぃひひひひひひひ」

蓮は、杏奈のへそと脇腹を往復するよう羽根をサワサワと動かす。
「うひっぃぃうひひひひひひひひひっ!!! あぁぁあっはっははっははっはっ、やめぇぇお願いっ!! やめてくださいぃぃぃっひっひっひっひっひっひ~~っ!!」
杏奈はお尻を打ちつけながら笑い暴れる。
「どう? 楽しいかい?」
「ぎぃひひひひひひひひっ!!! なひゃぁぁぁっはっはっはっはっはっはっ!! 楽しいわけないですよぉぉぉひゃっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

「僕の指が欲しくなったらいつでも言っていいからね?」

「いひひひひひっひっひっひっひっひっひ~~っ!! わけわかんないですよぉぉぉはっはっはっ、やめてぇぇぇっひっひっひ!! うひっきひぃっひひっひゃっひゃっひゃ!!!」
杏奈は涙と涎を撒き散らす。
四肢に力が入っているのか、ギシギシとロープが激しく音を立てた。
「おほほほほほっおへそっ!!! おへそぉおぉぉひひひひひひひひひひ~~」
「もっとおへそをくすぐって欲しいのかい?」
蓮は羽根の先端を杏奈のへその穴に当ててやり、かき回した。
「ぐひひひひひひひひっ!!! だはぁぁぁっ!!? だめですっ!! あひゃひゃひゃ、ひゃひぃぃぃひひひぃぃん!!! 死んじゃうっ!! 死んじゃいますよぉぉぉほほほほほひひひ~~っ!」

「凛、葵」
蓮は、しばらく杏奈のへその反応を楽しみ、二人を呼びつけた。
紙袋から二つ羽箒を取り出し、二人に分け与える。
蓮の指示に従い、凛と葵はそれぞれ杏奈の左右に立ち、杏奈の短めのスカートからはみ出た、太腿から膝付近に羽根を這わせた。蓮は、その隙に杏奈の足下へと移動する。
「うひゃぁっ!! きゃはははははははっひひひひひひひ~~っ! やはぁ、葵さんっ!!! なんでですかあぁぁっはっはっはっはっ!! 助けてくださいぃぃひひひひひひ~~」
葵は、チラリと杏奈の顔を見ると、こてんと首をかしげた。
それを見た凛は吹き出した。
「ぶはっ、『助けるって何?』って、その発想すらありませんってか!」
「お願いですよぉひひひひひひひひひひっ~~、助けっ、きゃはぁぁっはっはっ! どちらでもっ!! どちらでもいいのでぇぇっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~っ!!」
杏奈は泣きながら叫ぶ。
「ダメダメっ! 蓮が満足してくれないと、私らに回ってこないんだからっ! 徹底的に責めさせてもらうかんね~~っ?」
凛は、杏奈の内股でわさわさと羽箒を動かせた。
「ぐひゃぁぁやははははははっ、おかしひですよぉぉっひひひひひひひっ!!! やめって!!! もうきつっ!!! いぃぃっひっひっひっひっひ~~っ!」

足下に移動した蓮は、杏奈の右足からゆっくりと白いハイソックスを脱がした。
よく動き回るイメージもあって、ソックスの足裏部分はかなり汚れていた。
ソックスを脱がし取ると、人差し指がかなり長い、厳格なギリシャ型の素足であった。土踏まずのアーチはなかなか綺麗な形をしている。
外気に触れた杏奈の足の指がグー、パーと動く。

「綺麗な形だね」
蓮は、羽箒を、杏奈の素足の足裏に這わせた。
「ぶひゃぁぁっ!!! ひゃはははははははっ、ひひひひひひっ、や、ダメですよぉぉぉっはっはっはっはっはっは!」
杏奈の足がくねくねとよじれた。
「あはぁぁっふわぁぁっ!! ひぃぃひひひひひひっ、助けてっひひひ、助けてくださいよぉぉっ」

「じゃあ、私、首とかやってみよっかなー」
凛は杏奈の頭上へ移動すると、首筋へ羽箒をそっと忍び込ませた。
「きゃはぁぁんっ!!!? だ、やぁぁっはっはっはっはっは、ひひひひ~、やめてくださいぃぃひひひ」
「結構感度上がってんね~~? ほれほれー」
「うひひひひひひっ!! だめぇぇへへへへへへへっ! ひっひっひっひっひっひ~~っ」
凛の動かす羽根にあわせて、杏奈は嫌々と首を振る。
「ぺっ!? ぺぇぇっ!! ひひひひっ、口にひひひひひっ!! 入って……っ、ひゃぶぇぇっ!! 羽根がががははははははは~~っ!」

「どう? そろそろ指が欲しくなったんじゃないかい? 正直に言ってごらん?」
蓮が、杏奈の足の指を羽箒の羽根先でこそこそくすぐりながら言う。
「ひゃははははっ、だからっ、わけがっはっはっはっはっはっ!! わかりませんってひひひひひひひ~~」

「そう? 身体は正直なはずだよ? 試してみようか?」
蓮は言うと、羽箒を投げ捨て、左手で杏奈の素足をがっちり握ると、右手二本の指で杏奈の足裏中央辺りをがりがりとひっかくようにくすぐった。

「びゃぁぁっ!!? がははっははははははっ!!!!! あぁぁ~~っひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! だひゃぁぁぁひゃひゃひひひひひひひひっ!!! ぎはぁっだは、あひゃぁぁっ!!?!?」
杏奈はびくびくっと四肢を震わせ、奇声を上げた。

「うわっ!? 唾散った! ……てかすごい顔」
杏奈の首をくすぐっていた凛が感心する。
目を見開き、舌を出して笑う杏奈の表情は、キュビズムを彷彿とさせた。
「ぎぃぃぃ~~っひっひっひっひっひっひっ!!! ぐぎ、ひっひっひっひっひひひっひっひ、うきゃぁぁっはっははっはっははっはっはっは~~っ!!」
「この箒、涎でべっとべと……もう羽根として機能しないじゃんよー! 蓮ー!! 私も指でやっていい~~?」
凛が、杏奈の足元の蓮へ叫ぶ。
「もちろんだよっ! ハハッ」
「ちょ、いきなりキャラ変えんなよーっ! 混乱するって」
「葵も指つかっていいよ」
こくんと頷く葵。

「じゃぁ、腋の下やっちまうぜぇ~っ!」
凛は、杏奈の頭上から覆いかぶさるような形で、杏奈の両腋をかきむしった。
「ぎゃははははははははっ!!! だっははっははっははははぎひっ!!? っぎひぃぃっ!!! いぃひひひひっ!! あひゃぁっぁひひいひぃぎぃひゃひひひひ~~」
凛は、杏奈の歪んだ表情をさかさまに楽しみながら、指を激しく蠢かせる。
「ぐひぃひひひひひひひひっ!! たったったっぎゃっはっはっはっはっはっ!!! あばっ、あばばっ! ひぃぃっひっひっひっひ~~」
「んぁ? なんか言いたいん?」
「たずっ!! ひひひひひひひひひっ!! たっ、たっ、ひゃっひゃっひゃっひゃっ! たすけっ!! たすっ、ぎひひひひひひひひ~~~っ!!」
白目をむきそうな勢いで、杏奈は必死で言葉を発している。
「蓮ーっ!! まだ『助けて』って言ってるよ~~!? めっちゃしぶとくねぇ?」

足下では、蓮が杏奈の左足のハイソックスを脱がし終えたところだった。
「最後の理性かな? 大丈夫。心配しなくても、すぐ真っ白にしてあげるよ」

蓮は、杏奈の両足の裏に指をつきたて、バラバラに撫で回すようにくすぐった。
「ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!! あぁぁ~~~っひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! ひぃぃひひひひひひひひひひひひ、あがががががががが~~~っ!!!」

「ほら、本当はおねだりしたくなってるんじゃないかい? 正直に言ってごらん?」
蓮は、杏奈のかかとをひっかく。
「あぁぁっはっはっはっはっはははっははっはっ!!! ひっひっひっひっひっひ! ぎぃぃぃぃひゃひひひ、ぐがぁぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

「好きな場所を言ってくれたら、そこをくすぐってあげるよ?」
蓮は、杏奈の足の指と指の間を無理矢理こじあけ、指をねじこむ。
「うぎひひひひひひひひひっ!!! いぃぃぃっひっひっひっひっひっひ!! あぁぁぁっ!!? がぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~ひゃぁぁぁっ!!!!」

「指の間が好きかい?」
蓮は、杏奈の左足の親指と人差し指を左手で持って、ぴんと引っ張って反らし、左足の指の付け根の部分を重点的につついてやった。
「あひゃっ!? あひゃっあひゃっあひゃっ!!! ひぃぃっひっひっひ、ふきゃっきゃっきゃきゃ……ああぁぁひひひぎぎっぎ、わはははははっ……おひゃひゃひゃっ!! お願いっ……ぎひひひひ、お願いしますっひゃひゃひゃひゃっ!! 腋の下をぉぉっひょっひょっひょっひょ、もっかいぃぃひひひひひひひっ!!! ちゃんとくすぐてぇぇっひっひっひっひっひっひ~~っ!!!」

◇◇◇

◆◆◆

「――って感じだけど、使えそうかい?」

蓮はリモコンの停止ボタンを押した。
蓮の家のリビング。録画した調教シーンの鑑賞会……というわけではなく、対ジャーナル部作戦会議である。
集まった女性メンバーは、美咲、凛、葵に、ジャーナル部の二名、杏奈、希を加えた、五名である。
作戦会議には美咲とジャーナル部二人で充分だというのが本音だが、凛の話によると葵が必要最低限に全く達しない語数で「蓮と一緒にいたい」という趣旨の駄々をこねるのだそうだ。結果、凛も保護者として付いてくるのだ。

「台詞の一部をカットすればなんとかなりそうですね」
美咲が腕を組む。

「あと、うちの所持するカメラだと、こんなに綺麗に映せないかもです……」
希がおそるおそる意見する。

「えっとー、……やっぱ本気で、これ、公開するんですかー? ですよねー……。そう、ですよねー……」
杏奈は若干赤面しながら、頭を掻く。

「見るのは、田中美羽さんと、最悪吉田心愛さんだけですよ。どうせ二人とも落とす予定なので、心配ありません」
「う、上手くいきます、……かね?」
希が上目づかいに、美咲の顔色をうかがう。
「後は清水さんの受け答え次第ですよ」
「……ちょっとプレッシャー、です。……編集は、いつごろ完了しますか、ね?」
「明日朝には。タカハシさんが、一晩でやってくれます」

蓮は、美咲と希の会話を傍観しながら、頼もしく思った。



◆◆◆

「ミイラ取りがミイラにって、まさにこのことね」
放課後。T高校第一共用棟最上階、ジャーナル部編集長室。
美羽は回転椅子の肘掛に肘をついたまま机に足をのせ、PCモニターに映し出された杏奈調教動画に目をやる。
机上には希の提出した『発覚! 真面目一筋明朗活発委員長の異常性癖』という記事が置かれている。

「杏奈を囮に使うなんて、よくやったわね。希」

美咲の計画は上手くいったようだ。
美羽は、杏奈を泳がせた上で極秘に希を動かしていた。そこから考えて、美羽が杏奈に期待していないことは自明であった。
美羽は、できそこないの杏奈が有望な情報を仕入れたことを不審に思っている。
その警戒を解くにはどうすればよいか?
杏奈に「きちんと」失敗させればよい。

「佐々木先輩は、自滅しただけですよ」
希が、薄ら笑いを浮かべる美羽に言う。
杏奈は「昨夜尾行に失敗して尋問された」ことになっていて、本日は学校を休んでいる。
「希は、こうなることを見越して、隠しカメラを設置したんでしょう?」
「まぁ……」
「期待通りのはたらきよ。希」

希は内心拍子抜けしていた。
もっとつっこまれるかと思い、美咲の考えた言い訳をしっかりと練習してきたのに、美羽はあっさりと希の言い分を信じたのだ。

「早速掲載許可が必要ね」
美羽は、記事を手に持って立ち上がる。
「あ、……あの」
「どうしたの? 希」
「佐々木先輩のときのように、怪しんだり、しないんですか?」

おそるおそる声をかけた希に、美羽はやれやれとため息をついた。
「私は、同じ志を誓い合った子を疑ったりはしないわよ。あなたや、心愛のようなね」
「部長……」
部屋の隅で、心愛がノートPCから目を離し、呟いた。
「同じ、志……」
希は、怪訝な表情で復唱した。
「そう。情報は力よ。我々や生徒会が管理している情報は膨大かつ繊細。当然それを悪用しようと狙う輩が現れる。私達の使命は、そんな奴らから、このジャーナル部の伝統にかけて、データを守り抜くこと。どんな手段を使ってでも! 前ジャーナル部長はどうも頼りなかった。人が良すぎたのよ。だから、外部の人間につけ込まれる前に、私がつぶしたの」
「…………」
「不穏な動きをする奴は、芽を出す前につぶしましょう。ジャーナル部の誇りにかけて。……心愛」
「はい」
「動画。証拠として使えるように編集しておいてね」
「わかりました」
再び心愛は自身のPCに向かう。
「……部長。どこまでもお供します」
心愛は顔を液晶画面に向けたまま、凛とした声で言った。
「もちろんよ。信頼しているわ」
美羽は不適な笑みを浮かべ、希に向き直った。
「いきましょうか。希」
「え、あ、……はいっ」

先導する美羽を希はとことこと追いかけた。胸を張って歩く美羽の背後で、希は小さくガッツポーズをした。

▼▼▼

第一共用棟から無防備に出てきた美羽を捕らえるのは造作もないことだった。
生徒会室のある本部棟までの渡り廊下に潜伏した蓮と、同じK組学級委員長である斉藤陽菜(さいとうはるな)は、通りがかかった美羽をすばやく眠らせ、リアカーにのせて布で覆った。
文化祭準備期間、学級委員長が雑用として、器材を運搬するのはありきたりな光景である。
二人は、美羽を本部棟一階の放送室まで運び入れ、マットの上に仰向け大の字に拘束した。
文化祭準備期間中でも図書館は開放されているため、今回図書館は使用できない。
校内で他に防音設備が整っている場所が放送室しかなかったのである。
K組放送部員高橋結衣(たかはしゆい)のコネクションで、すでに放送部員は全員調教済みであるため、放送室の出入りはフリーパスである。

「く……っ。……!?」

目を覚ました美羽は、四肢に力をこめた。
手足に結び付けられたロープは固く、肘膝をわずかに曲げる程度の遊びしかない。

「おはよう、部長さん」
「…………」
優しい声を出した蓮を、美羽は睨みつけた。
蓮はゆっくりと美羽の傍、マットの上に腰を下ろす。
「僕のことは知っているよね?」
「…………」
一瞬怒りをあらわにしそうになった美羽だったが、大きく一回まばたきをすると、不敵な笑みを浮かべた。
「佐藤蓮。二年K組の委員長さんが、私に一体なんのようかしら?」
「心当たりはないかい?」
「まったくないわ」
「これから何をされるのか、わかるね?」
「……っ。いいえ」
美羽の頭に、杏奈調教の動画がよぎったことは明白だった。
「そうそう。さっき、君が寝ている間、君の携帯電話が二度ほど着信したんだ。とらずにいると、直後、一通メール受信」
「…………」
「送信者は『吉田心愛』さん、だってさ。とっても興味深いんだけど、暗証番号ロックがかかってて、内容がわからないんだよね」
「…………」
「確認して、僕に内容を教えてもらえないかな? ついでに彼女も、ここに呼んでもらいたいんだけど?」

美羽はため息をついた。
「……あなた、拷問狂か何かかしら?」
「んー?」
「バレバレよ? 口を割らせる過程を楽しみたいんでしょう? 私は何をされても、何を言われても、あなたの望むような反応をするつもりはないわよ?」
「拷問なんてとんでもないっ! 僕は、君にも知って欲しいだけだよ」
蓮は、言いながら美羽のブレザーの上着のボタンを外す。
「僕の指……僕に捧げることによって得られる代価」

蓮はゆっくりと美羽のお腹に、指を置き、揉むように動かした。
「くっ……つ、うくく」
「耐えたね。えらいね」
蓮は指をゆっくりと、ワイシャツ越しに美羽の脇腹へと這わせていき、ばらばらに動かし始める。
「ぬっ、うくっ、くくくっ、ん……んく」
美羽は片目をつむり、顔を顰めた。
「くくっ、んーっ、ぬ、んんんっ!」

「本当はすごく効いているに、精神力で必死に耐えてる感じだね?」
蓮は美羽の脇腹で指をわしゃわしゃと蠢かせた。
「ううぅぅっ! んくっ……きっ……くく、んんん」
美羽の額には汗が滲んでいる。

蓮は指をくりくり動かせながら、徐々に美羽の脇腹、肋骨となぞっていった。
「うふっ、んくくっ……んーっ! うぅぅぅ、んんんっ!! くぅぅぅん」
「さっきまでの余裕の表情はどうしたのかな?」
「んぐっ!? くくくっ、……んんんーっ」
美羽は目をぎゅっと閉じ、ぶんぶんと顔を左右に振った。

「あいにく時間も無いし、そろそろ君の笑い声を聞かせてもらうよ」
蓮は、美羽の腰辺りにまたがり、両手をゆっくりと美羽の両腋に差し込んだ。
「きゃぁぁんっ!?」
美羽は、甲高い声を上げた。
「そんな声もでるんだね」
「うぅぅ……くっ」
美羽は、肘をがくがく震わせながら、顔を真っ赤にした。
美羽は、目尻に少しだけ涙を浮かべ、口をパクパクさせている。
「ん? 何か、言いたいことが、あるかい?」
「う、く、う……、動かさないで」

「無理な相談だったね」
蓮は、美羽の腋の下に差し込んだ両手の計十本の指をこちょこちょと動かした。
「くっ!!? ふくっ!!? あぁっぁぁっ~~~~っ!! あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
美羽は絶叫を上げ、びくびくと身体を震わせて笑い始めた。
「んんんんっっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!! きゃっぁっはっはっはっはっは、んふっひゃっはっはっはは~~っ」

「僕の指、くすぐったいだろう?」
蓮は美羽の腋の窪みをぐりぐりとほじくった。
「くひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!? いぃぃぃぃっ、くわっ! こんな奴にっ!!! こんなやつにぃぃっひっひっひっひっひっひ~~っ!!」

「じゃぁ、皆にも手伝ってもらおうかな?」
蓮の合図で、準備室に待機していた杏奈と希が駆けつける。

「うわ……部長。こんなに笑うん、だ」
希は、だらしなく口を開けて哄笑する美羽を見て、若干引いたような声を出す。
「いぃっひっひっひっひっひっ!!! の、希っ!!? なぁぁっはっはっはっはっはっはっ、なんでここにぃぃひひひひひひひ」
「自分もいますよー!」
杏奈がにっこり笑って、美羽の枕元にしゃがみ、顔を覗きこむ。
「普段クールでちってきぃなキリリと引き締まった顔が台無しじゃないですかーっ」
「あぁっぁっはっはっはっはっはっ!!! あ、杏奈ぁぁぁひゃひゃっひゃっひゃっひゃっはっはっはっはっは~~っ!」

「じゃぁ。上半身はしばらく二人に任せるよ? 一旦」
「一旦。ですねー?」
「ま、任せてください」
蓮が、マットから降りると、すぐに希は美羽のお腹をくすぐり始めた。
「あはっ、あはははははっ!! あ、の、ひひひっ希っ!!? な、なにをぉぉぉっいやっぁっはっはっはっはっは」
「じゃぁ自分はー」
杏奈は、指先で美羽の首をこしょこしょと小刻みにくすぐり始めた。
「ひひひひひひひひっ!!? いひひひひひひ……っ、あ、杏奈ぁぁぁぁっ!! きひひひひ、なんなのよぉぉぉっひっひっひっひっひっひ~~」

「説明しましょうかー? 自分や希さんはー、心も体も、すっかりボスのものなんですよー」
「ひひひひ、ボスって!!? ぃひひひっひひひひ、さ、佐藤、くふふふ、蓮っ!!?」
杏奈が得意げに言う中、希は美羽のワイシャツのボタンを下から数個外し、素肌の脇腹に指を這わせ始めていた。
「うはっははっはははははっ!!! ちょぉぉっ!! のぞっ、希ぃぃっひっひっひっひっ!! やめっ、やめなさいぃぃひひひひひひひ」
「無理です。部長……早く落ちてください」
希は、淡々と言い捨て、美羽の脇腹を揉み解す。
「くはぁぁっはっははっはっは、あんなぁぁぁっはっはっはっは、たは、助けなさいよぉぉぉひっひひっひっひっひひ~~」
美羽は涙を浮かべ、枕元の杏奈に目をやる。
「『ゴミ収集車』に一体全体何ができるんですかー? ぶっちょーさーん?」
「くふふふふふ、ご、ごみっ!? の、のぞみぃぃっひっひっひっひっひ!!! あんた、漏らしたのっ?! ぃぃひひひひひひひ」
「当然ですよーっ! 情報を出せば出すだけ、ボスに気に入ってもらえるんですからねー。部長だってすぐに――」

「佐々木先輩」
美羽のお腹周りをくすぐりながら、杏奈を静かに睨む希。
「少し黙りませんか?」
杏奈はニッと不敵な笑みを浮かべた。
「言うようになりましたねー、希さん? 先輩として一つ。言葉で翻弄するのも、ジャーナリストの常套手段ですよー?」
「……それで墓穴を掘ったら、本末転倒じゃないですか」
「おやおや」
二人は美羽の身体をくすぐりながら、にらみ合う。
「あぁぁっひひひひひひひ、二人ともやめてぇっぇぇっはっはっはっはっは~~」

▼▼▼

足下でしゃがんだ蓮は、美羽の右足のハイソックスに手をかけた。
白いソックスの足の裏は、蒸れて若干汚れている。
ひっぱって脱がし取ると、美羽のスクウェア型の素足が現れた。
教科書に載っていそうなほど綺麗なアーチ型の土踏まずを持っていた。

蓮は人差し指の爪でカリカリと美羽の右足の土踏まずをひっかいた。
「きゃはっはあははははっ、はははははっ!!! やっ、やめ、あぁっはっはっはっはっはっは」
綺麗なアーチを人差し指でなぞってやる。
「ひひひひっ、くひひひひひひっ、だぁぁっ」
美羽の足の指がエロティックにひくひく動く。

「どう? 気持ちよくなってきたかい?」
蓮は、美羽の素足を撫で回しながら言った。
「いはっはははっははっははっ!! そ、そんなわけないでしょうぉっぉはっははっははははっはははははっ!」
「そう?」
蓮は人差し指を、美羽の足の指の間につっこむ。
「くはっ!!! いやぁぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~~っ」

「じゃぁちょっと遊んでみようか。二人とも一旦ストップ」
蓮は美羽の上半身をくすぐっていた二人を制止させると、立ち上がった。

「くぅ……ひ、あぁ」
美羽は目に涙を浮かべたまま、肩で息をする。
「二人とも、……今のうちに、……助けてよ」
蓮が見えなくなると、美羽は杏奈と希に顔を向けた。
「まだ言うんですかー! 往生際が悪いですねー」
「部長。早く落ちてください」
「……うぅぅ、裏切りものぉぉ」
美羽の普段なら決して出さないようなしおらしい声に、二人は思わず吹き出した。
「ぶ、部長の、こんなところ、私、初めて見ました」
「自分もですよー」
「くそぅ……」

蓮は、アイマスクとゴム手袋を持って戻ってきた。
ほとんど抵抗もできないうちに、美羽は目隠しをされてしまった。
「こ、この、状態で……?」
美羽は、視界を奪われ怯えた声を上げる。

「これから一人ずつ順番に、二分間くすぐっていくから、誰が一番のお気に入りか選んでね」
「……は? わ、わけが……。か、解放してぇ」
アイマスクの隙間から、涙が流れた。
美羽はかなり限界のようだ。
杏奈と希は、普段の美羽とのあまりのギャップに驚き顔を見合わせた。
「あ、くすぐる方はお喋り禁止だからね」
「わかりまし、た」
希は蓮のお達しに返事をしながら、じとっと流し目で杏奈を見た。
「なんですか希さん、その目はー?」
「別に……なんでも、ないです」

●●●

希がゴム手袋を両手にはめながら、ゆっくりと美羽に近づく。
「や、だ、誰!? いやっ……もう、やめて」
気配を感じたのか、美羽はギシギシと四肢に力をこめて暴れだした。
希は美羽のワイシャツの残りのボタンも全て外し、観音開きにした。
「きゃっ!? やめて、お願いよぅ……」
美羽のキャラに似合わぬ可愛らしい薄桃色のフリルの付いたブラジャーが露になる。
アイマスクで顔の上半分が見えなくとも、美羽が顔を真っ赤にしていることがわかった。

希は、笑いを堪えながら両手で美羽のアバラを一揉みした。
「きゃははははっ!! や、やめっ!! いぃぃぃひひひひひひひひひひひひっ!!! ふひひひひひっだ、だめっ!!! あ、あんな!? のぞみっ!!? やめてっ!! いやっぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~」
ゴム手袋の独特の刺激に、身体を波打たせる美羽。
「いぃぃぃっひっひっひっひ、くすぐったいぃっ!!! もうだめっ!! だめだってぇぇっはっはっはっははっはっはっはっ!!」
希は人差し指で美羽の肋骨をかき回す。
「ぐはははっははははははははっ!! だめぇぇっ!!! 杏奈っ! 希っ!!! 助けてっ!! やめてぇぇっはっはっはっはっはっはっは~~」

希がいきなり手を止めると、美羽は「ひぃぃんっ」と身体をびくっと震わせた。
「ひっ……や、っやめてっ、あぁぁぁ、いやぁ」
目隠しをされているせいで、いつくるかわからない刺激に怯え、悲鳴を上げる美羽。
希が両手を美羽の素肌に近づけたり離したりすると、わずかな風や温度変化で気配がわかるのか、美羽はおもしろいように反応した。
「いひゃぁぁっ!!! やめてっ……ど、どこを、ぃぃはははっ、ちょっと……どこっ!!!? やめてっ」
希は、つんと両手で美羽の脇腹を突いた。
「いやぁはっはははっははっはっはっ……ははっはははは、あれ……? くひひっ、やめてっ、いや……あぁぁぁあぁ、あははっはははは……いや、だめっ、ふひひひひひひ」
たった一度ついただけなのに、美羽の身体は勝手に刺激を予想してしまうらしい。
希が手を離しても、しばらくの間断続的に笑い声を上げる美羽。
「ひひひひひっ……お願いっ! やめてっ、ひひひひっ……あぁぁぁ、苦しっ!! ははは、だめ、どこっ!!? やめぇぇ」

希は、何も触れていないのに、引きつった笑い声を上げる美羽に、思わず吹き出してしまう。
「くくくく、の、希!? 希、希なのっ? お、お願い、ひひひひ、もう、……やめて、ひひっ」
希は「あ、ヤバ」と表情を引き締めた。誤魔化すように、美羽の素肌の腋の下をこそこそとくすぐり始めた。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! だめっ!! いやぁっぁっはっはっはっはっはっはっはっ!! しんどっひひひひひひひひ、きついぃぃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~」
素肌をゴムが擦れ、キュキュキュと音を発する。
美羽は、髪の毛をぶんぶんと振り回し、だらしなく口を開けっ広げ笑い続けた。
「ぐヒヒヒひひひひひっ!!! いやぁぁぁっ!!! あぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」

●●●

次順の杏奈もゴム手袋をはめ、先ほどと同様、美羽の首筋をくすぐった。
「いぃぃぃいっひっひっひっひっひっ!! あんなぁぁっ!! 杏奈なんでしょぅぅぅひひひひひひひひひっ!!? やめっ!!! やめなさいぃぃってっはっはっはっはっは!! いぃっひっひひひひひひひひひ~~」
「ダメですよー部長ー。そういう詮索したら! 責め手はお喋り禁止なんですからー」
普通に喋り始めた杏奈に、唖然とする希。

杏奈はひとしきり美羽の首を愛でると、美羽の鎖骨に両手を置いた。
「いやぁぁぁぁ、うぐっ!!? 動かさないっ!! ひひひひひひひ、……お願いっ!! くひひひひひひ、動かさないでぇぇぇひひひひひひ~~……」
置いているだけで、まったく杏奈の指が動いていないにもかかわらず、美羽は歯を食いしばって笑い悶える。
「この状況で自分が指を動かさないなんて、微塵にもあり得るとお思いですかー?」
杏奈は言うと、ゆっくりと指を動かし始めた。禁止事項……?
「ひひひひぃぃんっ!!? だめっ!!! だめだって!!! とめとめとめっきゃっぁっはっはっはっはっはっはっは!!!! とめなさいっ!! とめなっいやぁぁっ!!? やめっ!! だぁぁぁっはっははっはっはっはっはっはは~~!!」

杏奈は、美羽のやや膨らんだ乳房の付け根辺りに親指を当て、くりくりと動かす。
「ぎゃっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっ!!!! やめぇぇぇぇぇぇっ、いやぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁっぁぁああああっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
「良い声ですよー、部長っ。MP3で配信したいくらいですよーっ」
「いやぁぁっぁぁっははっはっはっはっははっはっ!!! ふじゃけなっ、ぎゃっぁぁひひはははっひひひひひひひひひひ」
美羽は首を激しく左右に振り乱した。涎が、杏奈の顔に飛び散った。
「あ、WAVの方が良かったですかー? そんな唾散らしてまでご所望とはー」
杏奈は、禁止事項などまったく無視して、心底楽しそうに美羽を挑発し続けた。

杏奈は言葉尽きると、美羽のブラの縁に沿って人差し指をキュキューっと這わせた。
「ぬぁぁあぁぁぁぁあぁぁっ!!! やめなさいっ!! お願いっ、もうやめてぇぇぇぇぇあぁぁぁぁひひひひひひひ、いひひひひひひひひ」
美羽は、四肢をガクガクと震わせ、身体をマットに打ち付けるようにして笑い悶える。
「お願いっ!!! 死んじゃうっ!! うひひひひひひひひひっ、ほんとにっ!! だめぁぁぁはひぃぃ!!? うくひひいひひっひっひっひっひっひ~~」

美羽の身体が限界を迎えていることは、傍から見ても明らかだった。
「……容赦ないですね」
杏奈の執拗な責めを見て、希が蓮に囁く。
蓮は、杏奈の様子を眺めながら、満足そうに頷いた。

▼▼▼

最後の蓮は、ほとんどインターバルを置かず、いきなり美羽の素足の右足の裏を五本の指でかきむしった。
「だっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!! やめぇぇっはっはっはっははっははっははっはっムリィぃぃっひっひひっひひひっひっひっひ~~っ!!!」
キュッキュッと音と一緒に美羽の足の指も激しく蠢く。
蓮は人差し指を立て、美羽の土踏まずをほじる。
「ぐひひひひひひひひひひひひっ!!! むほいぃひひひひひひひひひひひっ!!! やむほひぇぇぇえぇぇっぇぇあっっあっあぅっはっはっはっはっはっはっは~~」

蓮は美羽の左足のソックスも脱がし取り、両足の裏を同時にひっかく。
「くひひっひひひひひひひひっ!!! やめっ、やめぇぇっはっはっははっはは!! たぁぁひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!! ホント死ぬぅぅひひひひひひっ!!! 死んじゃうっ!!! しぃぃぃぃきききひひひひひひひひひひひひ」
美羽は髪の毛を振り乱し、口元からだらだらと涎を流して笑い続けた。


全員がそれぞれくすぐり終わり、蓮は美羽の腰に跨った。
「どうだった? 誰が一番くすぐったかったかな?」
「ひひひひっ、……ひひひひひっ!!! もうやめてっ、……ほんとにぃぃ……ほんとにっ!」
何も触れていないにもかかわらず、美羽はガタガタと身体を揺らし、暴れ、断続的に笑い声を上げる。
「誰が一番くすぐったかったかい?」
「いくっ……ひひひ、言えないっ!!!」
「どうしてかな?」
「言ったら、ひひひひひ……終わらないぃぃひひっひひっ……」
美羽は口をパクパクとさせ、涙を流す。
泡を吹いていた。
とっくに身体は限界を超えているはずなのに、たいした精神力だと、蓮は感心した。
「どっちにしても、終わらないけどね」
「いひひひひ、いやぁぁぁっ!!! もうやめてぇぇぇぇっ!! ひひひひっぃぃぃ……」

「こんなことされても、まだ意地を張るかい?」
蓮は、ゴム手袋をはめた両手の人差し指で、つんつんと美羽の素肌のアバラをつっつき始めた。
「あひゃっ!!!? ひゃんっ! くひぃぃぃんっ!! んひゃぁぁんっ!! ひゃめっ! ひゃめっ、ひゃめぇっひぃぃんっ!!!?」
つっつく度に、びくん、びくんと、美羽の身体がはじける。
「あひゃぁぁあぁっ!! やめぇぇ……だめぇぇ、くひぃぃんっ!!!? しぃぃひいひひんっ!!!」

「じゃぁ次はお腹を撫でてあげるね?」
言うと、蓮は美羽の腋の下で指を蠢かせた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! おなぁぁぁっ!!? うひひひっひひひひひひひひひっ! きゃぁぁっはっはっはっはっはっはっはっは~~っ!!!」

「素肌だと、よく感覚が伝わるだろう?」
蓮は指先を美羽のブラ紐あたりまで移動させ、ひらひらと優しくくすぐる。
「くあっぁっはっはっはっはっはははっははっ!!! ひゃめってっ!! ひゃめてぇぇぇっひっはっはっははっはははっははははっは」
指先でブラ紐をなぞる。
「うひっひひひひひひぃいひひひひひひっ!!! だめぇぇっ!! 指っ!! ひひひひひ!! ひひゃぁっぁ、やめっひひひ」
「なるほど。ゴム手袋は外して、直に僕の指が欲しくなったんだね?」
「ちがっ!!? いひひひひひ……」
蓮はゴム手袋を脱ぎ捨てると、美羽のお腹を撫でた。
「ぷはぁぁぁぁぁははははははははははははは!!!? あぁぁぁあはっははっはっははっはははっ!!! おなかぁぁあっ!!!? おなかぁぁぁっははっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! しぬぅぅぅひひっひひひひひひひひひ!!!」

「おへそを掃除してあげようか?」
蓮は人差し指を美羽のおへそへ入れ込む。
「むほぉぉぉぉっ!!! んほぉぉぉぉほほほほほほほほっ!!! くひほひひほひおひ」
美羽の口から、だらだらと涎が垂れる。

「次はどこを触って欲しいかな?」
言うと蓮は、美羽の脇腹を、指先で小刻みにくすぐった。
「あっぁはっはっはひゃっひゃっひゃ……はひゃぁぁぁぁっ!!? ひひひひっひひっひひひひっ!!! うぎひひひひひひひひひひっ!!!」
美羽は舌を出し、頭をぐるぐると揺らしながら笑う。
「はひぃぃぃ、はひぃぃぃあはっははっはははははっ!!! はひゃひゃひゃひゃひゃ~~っ」

蓮は、美羽のアイマスクを外した。
「ひひひっひいひひひっ……いぃひひひひひいい……」
くすぐる指は止めているが、目をひん剥いて笑い続ける美羽。
泣き腫らした目。
光を失いきった瞳を見て、蓮は勝利を確信した。

「さて、美羽?」
「ひひひひひひ……えひひひひひ、あぁひひひひ」
「次はどうやってくすぐって欲しいかな? 肋骨をごりごりするか、内股をなでなでするか」
「あひひひひひ、肋骨、ごりごりでぇぇ。あひひひひひひ」

◆◆◆

終わってみると、強敵に思えた美羽も案外あっさり落とすことができたな、と蓮は思った。
予想外だったのは、杏奈のテクニックだ。加減調整がまだまだ未熟ではあるが、かなりツボを押さえている。
口が軽いことや、いい加減な性格に難はあるものの、実践で活躍できるメリットは大きいかもしれない。

美羽の調教に成功したことで、これで残すターゲットは吉田心愛のみ。
蓮は、期待に胸を膨らませた。

◇◇◇

From:吉田心愛
To:田中美羽
Subject:【至急確認】提出動画矛盾あり

部長。
清水さんは嘘をついています。
清水さんを信用するのは危険です。

気になる事実。
1.動画がすでに編集済み。
2.動画内の映像が少なくとも校内模試以前のもの。

1は明白。不自然な音トビ散見。カットは少なくとも3箇所。
2は、佐々木先輩の腕章。テスト後、部長交代と合わせて、腕章のデザインを新調、文字フォントを変更しました。動画内で佐々木先輩がしている腕章は間違いなく旧デザイン。末端記者はよほどの注意力がない限りデザイン変更に気付きません。

動画内容は、佐々木先輩が『佐藤蓮』の名前、スキャンダルをジャーナル部に持ち込む遥か前。
それを、佐々木先輩は隠したまま記事にし、部長に提出。
清水さんは、その動画を昨日のものだと提出。

二人ともグルの可能性があり危険です。ご注意を。
清水さんの記事掲載許可願については無期延期を推奨します。

心愛。

◇◇◇



◆◆◆

「心愛、昨日はありがとう」
休日。第一共用棟最上階、ジャーナル部編集長室にて、美羽と心愛は対峙する。
「…………」
「不審な点を見つけて、すぐ私に連絡をよこした迅速な対応は見事だった。流石だわ。ただ……」
美羽は、回転椅子に座った心愛の肩に後ろから手を置いた。
「気付くのが一分遅かったわね」

心愛、部屋の中央で、回転椅子に腰掛けた状態で拘束されていた。
両手を肘掛に、両足は揃えて縛られている。美羽用に合わせた椅子のため、小柄な心愛は床にかろうじてつま先をひっかけているだけである。
「部長……」
「心愛。あなたの敗因は、最初の電話から一時間も経って折り返した私の言葉を、まるまる信用したこと。……少しも不審には思わなかったのかしら?」
美羽は心愛の耳元で囁いた。
「……部長が懐柔されるなんてありえないと、信じていました」
「そう、残念だったわね」
美羽はため息をついた。
「…………」

「さて、と」
美羽は、ゆっくりと机上のノートパソコンに近づき、液晶画面を心愛の方へ向けた。
「ジャーナル部のデータ管理責任者の心愛に、部長からお願いがあるの」
「…………」
「データベース閲覧用のパスワードを教えなさい」
美羽が不敵な笑みを浮かべ、心愛を睨む。
「部長。……それは、規則違反です」
心愛は、怯えを必死に押し隠すような表情で言った。
「部長が、私に命じたんです。何があっても、データベースを守れと。創部以来、自由にデータベースを閲覧編集する権利が引き継がれるのはデータ管理責任者のみ。だからこそ、部長の側近として部長ポストの人間を監視することができる。データベースを守る最後の砦、データ管理としての誇りを持てと言ったのは、部長です」
「その部長が、今こうしてあなたにお願いしているんだけど?」
美羽はフフンと鼻で笑った。
「部長……。本当に、どうしてしまったんですか? ジャーナリストの誇りを、忘れてしまったんですか?」
美羽は、心愛の言葉にただ薄ら笑いを浮かべるだけだった。
心愛は、ゾクリと背筋を震わせた。

●●●

「これから、何をされるかは、わかるわね?」
美羽はゆっくりと心愛に近づきながら言う。
「……や、やめてください」
「わかっているみたいね。心愛。私はあなたがうらやましい。今日は時間がたっぷりあるから、じっくり遊んでもらえるらしいわ」
「……っ」
美羽は心愛の後ろに回る。
「器材を運んでくるまでに、弱点を見つけろって言われているの。どこが弱いか、教えてくれるかしら?」
「……弱いって、く、くすぐられるのが、ってことですか?」
「他に何があるの?」
「……部長。完全にあの人の手中に落とされてしまったんですね……」
心愛が無念そうに肩を落とす。
「質問に答えてくれないの?」
「……し、知りません」
「なら、どこが一番、くすぐられたくない?」
「……だ、そんなところ、わかりません」
「なら、一箇所ずつ確かめていこうかしらね。教えてくれる気になったらいつでも言ってね? 心愛」
美羽が心愛の顔を後ろから覗きこむと、心愛は顔をそらした。

「そこを集中的にやってあげるから」

美羽は、指先を心愛の首筋に当てた。
「ひぅっ!!?」
心愛の首が亀のように引っ込む。
「あら、鳥肌だってるわよ? 心愛?」
「やっ……ぶ、部長……ぁ、やめて、ください」
美羽が心愛の首でちょろちょろと指先を動かすと、心愛の肩がびくびくと痙攣するように震えた。

美羽は右手をゾゾゾと心愛の胸元へと這わせていき、上着の内側、ワイシャツ越しに心愛の鎖骨あたりを撫でた。
「ぁ……ひっ、……部長。……んくっ! ……んぁ、や、やめて」
心愛は額に汗を滲ませていた。

「敏感ね」
美羽は一旦手を引っ込めると、心愛の背後から両脇腹に手を置いた。
「っっ!!?」
びくっと一瞬心愛の身体が跳ねるように動く。
「上着の上からでも、こんなに効くなんて」
美羽は指先をこちょこちょと動かせ始めた。
「くっ……ぎっ……っ、っ、っ」
心愛は身体をびくびくと震わせながら、歯を食いしばった。
「あら、堪えるのね? どう、心愛? どこが弱いのかしら?」
「……っ、っ、っ……っ、っ!! ……!? ……っ」
心愛は片目をぐっと閉じながら、美羽を見やる。
心愛の口は固く一文字に結ばれており、口元がぴくぴくとわずかに動いていた。

「喋る余裕はない、ってことね? ずいぶんと敏感なのね。じゃぁ、もう少し……」
美羽は指で、心愛の脇腹を揉むように動かした。
「んぅっ!!? くぅ……っ!! ……っ、っ!! っ、……っ」
心愛は身体を左右に振って悶える。
揃えて縛られた両足が貧乏ゆすりをするようにがたがた震える。
「我慢しなくていいのよ? 笑いたかったら笑ってもらって」
美羽は人差し指で心愛の肋骨辺りをつつく。
「くひぃんっ!!?」
びくんと心愛の身体が跳ねる。
「あら、おもしろい」
美羽が両手の人差し指でつんつんと、心愛のアバラをつっつくと、びくん、びくんと、心愛の身体が反応した。
「ぶ、部長……、んぅんっ!? ……やめ、っくんっ!!? やめて、くださいっ」

「ここは、誰でも弱いって相場が決まっているかしら?」
言うと美羽は、両手を心愛のがら空きの腋に差し入れた。
「んぉっ!!? ……っ、い、やめっ……」
美羽が、心愛の腋の下でわきわきと指を動かすと、心愛の縛られた両足がぴんと宙に浮き立った。
「んくぅぅ……、っ、っ、ひっ!! ……っ」
椅子の肘掛に縛り付けられた心愛の両手が、グーとパーを繰り返す。

美羽は、心愛の腋の下を人差し指でぐりぐりと押しこむ。
「んんんんっ!!? や、……ひぃ、ぁぁ、あっ、……」
心愛は目に涙を浮かべぶんぶんと首を左右に振る。
必死に腋を閉じようと力をこめているようで、両手のロープがギシギシと音を立て、肘が前後に揺れている。

「これが最新の腕章ね」
美羽は心愛の腋の下をほじりながら、心愛の右肩を見た。
「私もうっかりしていたわ。こんな小さな違いに気付くなんて、心愛は本当に、できる子ね」
「ひぅっ……んぅ……、や、やめて、ください」
心愛は、目をぎゅっと閉じ、顔を真っ赤にして言葉を発する。
「さっきからあなた、同じことしか言ってないわよ? 心愛? 弱点は?」
「……んぅ……、知りません」
「じゃぁ、パスワードは?」
「言いませんっ……んくぅ……、っ、っ、くぅ」
美羽は深いため息をついた。
「パスワードは別にいいのよ。後で嫌でも言いたくなるから……。でも、弱点は、今教えてもらわないと困るのよ」
「……っ、……くぅ……、……?」
「蓮くんが来る前に見つけないと、私のご褒美がなくなっちゃうのよ」

美羽は指を動かしながら、再び心愛の脇腹辺りまで両手を移動させた。
「……っ、っ」
「さっき触った感じだと、お腹辺りが弱そうなのよね」
美羽は言うと、心愛の上着の裾から両手を差込み、ワイシャツ越しに心愛のお腹を撫で始めた。
「ひゃっ!? ……んぅっ! ちょっ、……ぶ、部長っ!! ひぅっ!!? ……くっ……」
心愛は下を向き、歯を食いしばって堪えた。
「どうやるのが効果的なのかしら?」
美羽は指先を弦を弾くように動かし、心愛のお腹をくすぐる。
「ひゃっ、あぁっ!! や、……く、ぶ、部長っ……んぅ」
心愛はつま先をぴょんぴょんと浮かせた。

「お、お願いです……んぅ、部長、やめ、てください」
しばらくお腹を撫でられた心愛は、荒い息を立てた。
「私はもっとテクニックを磨かないとダメね。これだけやって、笑い声一つ上げさせられないなんて」

美羽は手を止めて、両手をゆっくりと心愛の太ももに這わせた。
「ふひぃっ……、部長っ!! ……んぅ」
「こんな私でも、笑わせられるような部位が、弱点ってことよね?」
美羽は心愛の右脚膝小僧を軽く掴むように指先を上下させた。
「ふひゃぁぁ、ひぅっ……はひぃぃ、や、きっ……やっ!!」
心愛の両手のロープが激しく軋む。
心愛の口元は今にも吹き出しそうに緩んでいる。
「脚が弱いの?」
美羽は心愛の内股に向かって指を這わせる。
「ひぃぃぃんっ!! おね……っ、ちょっ……部長!! やめてくださいっ! ひぃ」

「心愛。身体が火照って敏感になってるのかしら」
真っ赤な顔で涙を堪える心愛の顔を覗きこむ美羽。
美羽は心愛を拘束した回転椅子をくるりと回す。美羽はしゃがんで、心愛の両足を縛ったロープを左手で持ち、自身の膝の上に心愛の両足を乗せた。
揃えられた両足からカポンとローファーを脱がすと、白いハイソックスで包まれた小さな二つの足が現れる。
「……あ」
心愛が声を上げた。
「あ?」
美羽が目線を心愛の足元へ向けると、心愛の両足は指先をぎゅっと縮こまらせ、足の裏を隠そうとしているように見えた。
「なるほど。足裏見られるの恥ずかしいのね?」
心愛は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……他人に見せることなんて、めったに、ありませんから」
「そういえば心愛。今年の夏、かなり暑い日でも、靴、脱いでなかったわね。親睦会で温泉宿貸し切ったときも、一人だけ足湯につかるのしぶってたし。人前で靴脱ぐのは恥ずかしいって性質かしら。……敏感そうね」
美羽は、薄ら笑いを浮かべ、右手の人差し指を立てた。
「ぶ、部長……本当に、やめてください。き、昨日までの部長ならっ、私の嫌がることなんて、しなかったじゃないですか」
心愛は怯えた声を上げた。
「その反応。弱点を自白しているようなものね……」
「ど、どうしてっ、部長、変わってしまったんですか? 私、本当に部長のことを尊敬していたんですよ!」
心愛は、今にも泣き出しそうな顔で、美羽を睨みつけた。
「別に変わってないわよ? これだって、心愛のためを思ってのことなんだから。それに……」
美羽は、左手で心愛の両足を縛ったロープをぐっと押さえた。
「時間稼ぎが見え見えよ?」

美羽は、人差し指で心愛の右足の裏を踵から、中央の少し薄茶色に汚れた部分へ向けてツツーっとなぞった。
「ぷひゅっ!!?」
心愛の足が弓なりに反る。吹き出した瞬間、口から少し涎が散った。

「ホント弱いのねぇ」
言いながら美羽は、心愛の足の裏に乗せた人差し指を上下に往復させた。
「ぷひゃっ!? ひゃひっ、ちょっと、部ちょっひゃはっ!! きゃははっ、あはっ!? ひはっ!! やめぇ」
心愛は、身体をガクガク揺すりながら、笑いを必死に押し殺そうとしているようだ。
「ひぃひっ、きゃはっ!!! あははっ、もぅやめっ、ダメですっ!! ひひっ、あひゃぁ」
真っ赤にした顔は汗でぐっしょり。
目をグッと閉じて、口をパクパクとさせた。

美羽は、人差し指でかぎ爪を作り、心愛のかかと辺りをひっかいた。
「くあぁっはっははっ、部長っ!! やめてくださいっ!! きゃはは、ははっ、いやぁぁぁ」
心愛の頬を涙が伝う。
足の指をぎゅっと閉じて、くねくねと両足を動かす心愛。
「逃げるわね」

美羽は、心愛の両脚を左腕で抱えるようにして持ち直し、がっちりと固定すると、再び心愛の足の裏に指を這わせた。
「きゃぁっ!! ひゃんっ、ぶちょっはははっ、やめっ、動けなっ、きゃはははっ!?」
五本の指を、心愛の足の土踏まず辺りにのせ、弾くようにくすぐる。
「ひゃははっ!! きゃはははっ、やめっ……ひひゃひゃひゃっ!!! ダメなんですっ!!! きゃはははははははっ!!! あぁぁはっはっはっはっはっはっはっははっは~~っ!!」
とうとう我慢が限界に達したのか、心愛は激しい笑い声を上げ始めた。
「やっと心愛のかわいい笑い声が聞けたわね。嬉しいわ」
「きはははははははっ!!! 部長っ!!! やめてっ!!! あっはっはっははっは、やめてくださいっ!!!! にっひっひっひっひっひ~~っ!!!」
必死に美羽の指から逃げるように足をくねらせる心愛。
「くはははっ、やめてっ!!! あははっはっはっはっはっはっはっ!!! さわらなっ……あはははははははははっ」
美羽の膝の上でバタバタと心愛の足が暴れる。
それを無理矢理左腕で押さえつけるのはかなりの重労働だった。
「ちょっと、心愛。もう少し大人しくしなさい」
「いやぁっはっはっははははっ!!! にゃははっ、無理ですよっ!!! やめっ……やめてくださいっ!!! あっはっはっはっはっはっは!!」

上半身をねじり、両手の指をめちゃくちゃに動かして笑う心愛。
「お願いっ!!! 部長っ!! いやっははっは、やめっっ……かっはっはっはっ!! ダメなんです! ほんとにぃ!! にゃぁぁっはっはっはっはっはっは~~っ!!」
心愛は身体を激しく飛び跳ねるように暴れる。
「そんなに暴れて……おわっ!!?」
両脚を美羽に持ち上げられた状態で心愛が暴れたため、重心がズレて、回転椅子ごと後ろ向きに転倒しそうになる。
美羽が間一髪椅子を押さえたおかげで、心愛は後頭部を強打せずに済んだ。

「間一髪ね」
「……ハァハァ、……ほんとに、もう勘弁して、ください」
心愛は、軽く咳き込みながら深呼吸した。
「…………」
美羽は、苦しそうに顔を顰める心愛を見て、不敵な笑みを浮かべた。
「心愛」
「……?」
「あなたの弱点は把握したわ。これで一応私の任務は終り。そこで、一つ提案があるの」
「……な、なんですか?」
「もし、今私にパスワードを教えてくれたら、蓮くんにあなたの弱点は伝えないでおいてあげるわ」
「…………」
「私もこれ以上は、あなたをくすぐらないし。彼が到着するまでの間、休ませてあげる。どうかしら?」

美羽はニヤニヤと心愛の表情を観察した。
心愛は、歯をギリっと食いしばると、美羽を睨んだ。
「……ふざけないでください」
心愛の怒気に、美羽は満足気に鼻息を立てる。
「私は、ジャーナル部のデータ管理責任者。……データを守るのが、私の使命。……ジャーナル部員としての、誇りすら忘れた部長に、パスワードを教えるなんて、絶対にありえません」
美羽はぱちぱちと手を叩いた。
「心愛。そう言うと思ったわ。さすが私が見込んだ子ね」
「……は?」
美羽は心愛に近づき、後ろからそっと抱きしめた。
「大丈夫よ。心配しないで。私も、あなたを徒に苦しめる気はないの。もう弱点も把握したし、しばらく休ませてあげるわ。もしもここで、自分の体可愛さに秘密を漏らしたりしたら徹底的に虐めてあげようと思ったんだけど……」
「……どういう、ことですか?」
「心愛。あなたのその、定めたルールに対する誠実さ、真面目さは最高よ。すばらしいわ。だから――」
美羽は、心愛のウェーブがかった髪の毛をそっと撫でた。
「――もう少し。もう少しだけ我慢してね。辛いのはあと少し。蓮くんがルールを書き換えてくれるまでの辛抱だから」

◆◆◆

「はじめまして、吉田心愛さん」
「……はじめ、まして」
到着した蓮が爽やかな挨拶をすると、心愛は睨みながらも、律儀に挨拶を返す。
「心愛って言う名前、かわいいね。僕は好きだよ」
心愛は複雑そうに眉を寄せた。
「……部長を」
「なんだい?」
「部長を、元に戻してくださいっ」
心愛は目をつむって声を張った。
「ん?」
「……部長に、何をしたんですか? どうして、部長は……」
心愛は声を震わせた。
「心配しなくても大丈夫だよ。今、頭で理解できなくても、すぐに体で理解するから」

蓮が心愛と対峙している間、その後ろでは陽菜、凛、美羽、杏奈、希が着々と器材の準備を進めている。

「さて、僕の要求だけど――」
「私の管理するデータベース、ですよね?」
蓮の言葉に、心愛は被せた。
「美羽に教えてもらったかな?」
「私は、ジャーナル部のデータ管理責任者です。その名誉にかけて、パスワードは絶対に教えません」
心愛は声を張った。
「うん。ちょっと勘違いしているようだね」
「え?」
「僕は、パスワードなんて欲しくないんだ。欲しいのは、心愛、君だよ?」
「……わけがわかりません」
心愛は眉をひそめた。
「君は真面目だ。ジャーナル部員としての誇りを部員で一番大切にしていると、美羽から聞いたよ。ルールを遵守するためならば、自己犠牲も厭わない。その精神を支えているのは、誇りを重んじる確固たる使命感」
「……だから、何ですか?」
「その誇りを、僕に捧げて欲しいんだ」
「は?」
心愛は、ぽかんとした。
「今までジャーナル部のために守ってきたデータを、今度は僕のために守って欲しいんだ」
「言っている意味が、全っ然、わかりません」
心愛の声は、明らかに苛立っていた。
「部外者にデータを開放するなんて、何があってもありえません。現在データベース閲覧用及び編集用のパスを知っているのは私だけです。私が黙っている限り、絶対にあなたは、データベースを利用することができません」
「……お喋りでは埒が明かないみたいだね」

そのとき、
「蓮ー。できたよ!」
ちょうど器材の準備が整ったようで、凛が大声を出した。
蓮は片手を挙げて合図すると、再び心愛に向き直った。
「……心愛。足が苦手なんだってね」
「…………」
心愛はただ無言で蓮を睨んだ。
「ちょうどよかった! 文化祭で使うために購入した足責め用の器具が昨日届いたばかりなんだ。吉田さん。被験者第一号だよっ、ハハッ」
急に気味の悪いほど爽快な笑顔を見せた蓮に、心愛はゾゾゾと背筋を震わせた。

蓮の指示を受けた五名の女子生徒の手によって、心愛は回転椅子から下ろされた。
両手の拘束は解かれたものの、心愛は、五名に押さえつけられて何の抵抗もできないまま、強制的に両腕を体側に『気をつけ』の状態で上半身をロープでぐるぐる巻きにされた。
部屋の中央に敷いたマットに、仰向けに寝かされた心愛の足下に蓮は移動した。

蓮は、心愛の両脚を包んだハイソックスのつま先に手をかける。
「ひっ、……ぬ、脱がすんですか?」
心愛は恥ずかしいのか、顔を赤らめながら泣きそうな顔をした。両脚が杏奈と希に押さえつけられているため、抵抗することもできない。
「もちろんだよっ」
蓮は、心愛のソックスを勢いよくすっぽんと脱がし取った。
心愛は足の指をきゅっと縮こまらせた。
スクウェア型の小さな足は、やや偏平足気味であった。
足の裏の中央にぎゅっと皺が寄って、そこだけ白くなっている。

蓮はすぐにでも指を這わせたい衝動を抑え、器材の準備に取り掛かる。
「そ、それは……」
心愛は上体を少しだけ起こし、足下を見やる。
「これは『晒し台』だよ。英語だと "stocks" だね。こっちが下板だよ」
蓮は、心愛の素足にゴム製のアンクレットバンドをはめ、肩幅弱に開かせると、板の上側中央部に二つくりぬかれたへこみの部分にのせた。
なおも暴れようとする心愛の足を押さえつけ、上からもう一枚、心愛の足首を挟み込むように板をのせて、固定する。
一枚板の中央二つの穴から、にょっきりと心愛の素足が生えているような光景は、蓮の理想通りであった。
最後に、心愛の足にはめたアンクレットバンドに空気を入れ、足首周辺の遊びを封じると、完成である。

「心愛、動かせるかい?」
「……っ!!」
心愛は歯を食いしばって、足を引き抜こうと試みているようだが、固定された両足はびくともしない。足の前後移動は完全に封じられている。
板から突き出た二つの素足。ぴくぴくと足指を動かし、左右に足をよじる様子は、蓮の興奮を掻き立てた。

▼▼▼

蓮は美羽たちを編集長室から退室させ、心愛と二人きりになった。

「心愛はさっき、僕のことを部外者って言ったけど」
蓮がゆっくりと心愛の素足に人差し指を近づける。
心愛は、板に阻まれて自身の足元を見ることができないため、いつくるかわからない刺激に構え、ぎゅっと目を閉じた。
「きっとすぐに思い直すよ。僕は君のすべてになる」

蓮は両手の人差し指を、心愛の両足のかかとにあてがい、ゆっくりと上下に這わせ始めた。
「あぁぁぁぁぁぁーーーっ、……きゃぁぁっ!! ぷひゃぁぁっ、あはははっ!! きゃはっ、ははははっ!!! ぁぁあはははははははははははっ!!!!」
心愛の両足の指がびっくりしたようにぴんと反り返ると、心愛は頬を引きつらせて大笑いを始めた。
「くひゃひゃひゃひゃっ!!! やぁぁっ!!! やめっ、あっはっははっはっははは~~~っ!!!」

「まだ人差し指一本ずつなのに、ずいぶんといい声で鳴いてくれるね。やりがいがあるよ」
蓮は心愛の足の中心辺りの皺を、人差し指で優しく撫で伸ばしてやる。
「あひゃぁぁぁっははっはっはっはははっ!!! やめっ、っひゃっはっはっはっは、やめてくださいっ!!! くすぐったいっ!! きゃっぁ~~っはっはっはっはっはっはっは~~」
心愛は上半身を激しく捩って笑い悶える。板から突き出た素足は、左右に嫌々するように動いていた。
「いやぁぁぁっははっはっはっはっはっ!!! ほんとにっ! ほんとにダメだんですぅうぅひゃひゃひゃひゃはぁ~~~っ!!! はなしてっ!!! きゃっははっはっはっは、はなしてくださいぃぃぃっひっひっひっひっ!!! きひひひひひひひひひひっ!!!」

「ずいぶん弱いね。じゃぁこんなのはどうかな?」
蓮は人差し指の爪を立てると、心愛の両足の土踏まずをカリカリと引っかくようにくすぐった。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! だめっ!!! ひひゃはははははははははははっ!!! 息できなっ……あぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっ!!! きゃはっははひひひひひひひひひひひっ!!!」
心愛の足指がビクビクビクッと痙攣するように蠢く。
「あひゃひゃひゃひゃっ!! ほんとむりっ!! ほんと無理なんですっぅぅっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~っ!」
心愛は上半身をバタンバタンとマットに叩きつける。
「いっぱい暴れていいよ。そのためのマットだから」
「はひゃひゃひゃひゃっ、はなして!!! いぃぃいっひひひ、さわらないでっ!! さわらないでくだいしゃいっ!! あっはっはっはっはっはっはっ!! あしぃぃひひひひひひひひ、足が、きゃはっははは、攣っちゃうぅぅぅひゅひゅひゅひゅひゅひゅ~~~っ!!」

「指一本でコレね、じゃぁ」
蓮は一旦指の動きを止めた。
「ヒィ、ヒィ……、お願いです……、もう許して、ください」
心愛は涙を流し、息も絶え絶えに必死にぐるぐる巻きの上半身をもたげる。
「僕に君の管理しているデータを開放してくれる気になったのかい? 僕だけのために」
「……だ、……私は、私は、ジャーナル部のデータ管理責任者でぇ……」
心愛は顔をしかめ、ぼろぼろと涙を流しながら声を搾り出した。
「えらいよ。心愛」
言うと蓮は、両手それぞれ五本の指を心愛の足の指の付け根辺りにつきたて、わしゃわしゃと蠢かせた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! きゃぁっぁぁぁあぁっはっはっはっはははっははっははっ!!! だめぇぇっ!! あぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっは~~っ!!」
再びマットの上をのた打ち回る心愛。

「たすけてっ!!! たすけてぇぇぇっはっはっはっはっはっはっは!!! ぶひゃひゃ、部長っ!!! いぃぃぃひゃひゃひゃひゃっ!!! 部長ぉぉぉひゃひゃひゃひゃっ!!! 助けてくださいぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひ~~!」
「おそらく隣の部屋には聞こえないよ?」
蓮は指を蠢かせながら、心愛の足の裏全体を満遍なくかき回すようになでた。
「いやぁぁぁぁ~~っはっはっはっはっ、きゃぁぁぁっはっはっはっはっはっはっ!!! くすぐったいぃっ!!! くすぐったぃんですよぉぉぉっ!!! きゃはは、あひゃぁぁっはっはっはっははっはっはっはっは」

「指の付け根も敏感だね」
蓮は左手で心愛の左足親指をつまんで反らせると、右手の人差し指の腹で、心愛の左足親指の付け根をチョイチョイと撫でた。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!? さわらなっいひゃぁぁぁっ!! そんなとこ、やめてぇぇっひっひっひっひっひっひ~~」
「じゃあ、こうかな?」
蓮は、撫でるような動きから、引っかく動きに変えた。
「きゃはっ!!? あひゃぁぁぁぁぁぁぁっ」
カリカリと心愛の親指の付け根を引っかくと、左足の他四本の指がビクビクと別の生き物のようにめちゃくちゃに蠢いた。
「ぎゃぁっぁっひゃっひゃっひゃっひゃ、あひゃひゃひゃっ!!! あぁぁ~~っはっはっはっはっはっ!! いぃぃぃひひひひひひひひひひひひ、むひぃぃぃひひひひひひひ、ほんろだめぇぇへっへへっへへっへへっへっ」
指の間を掃除するように、こそぐように、爪を立てる。
「ぎひひひひひひひひ、あぁぁはっははははははははは、にゃぁぁぁぁぁぁだめぇぇだめぁぁはははははっはっはっはっはっは!!」

しばらく蓮が心愛の足の指の間をほじくっていると、意図的にか偶発的にか、暴れた心愛の親指が蓮の右手の人差し指を挟んだ。
「おっと」
「きひぃ……ヒィ、もう、……勘弁、して、ください」
心愛は足の指にぎゅっと力をこめており、蓮の指を絶対に離すまいとしているようだった。
「はなしてごらん?」
「い、……嫌です」
心愛は、目を泣き腫らして懇願する。上体を起こす元気はないようだ。
「怖がらなくていいから」
「……も、もう、くすぐられぅのは、……っ」
心愛は生唾をごくりと飲み込む。
「くすぐられるのは、身体が、きつい……です」
こんなときでも、心愛は律儀に言い直した。

「こっちには左手もあるから、右手だけ捕らえても意味ないよ? はなさないなら」
蓮は、左手の人差し指で、心愛の左足の裏をつんつんとつっついた。
「ぶふぅぅっ!!? きゃっ、ふふぁっ!!? ひゃんっ、ひひっ……くひひ」
「ほらほら、力を抜いて?」
蓮は、心愛の皺のよった足の中心部にカリカリと爪を立てた。
「ぎはははっ、きゃははははっ!!! あはぁぁはっはははっ、やぁぁぁぁあああぁぁぁぁ~~っ!!!」
心愛はぶんぶんと首を振って、甲高い悲鳴を上げた。
顔をぐしゃぐしゃにゆがめながらも、足の力は一向に緩まない。

「頑固なんだね。すごく良いよ、心愛」
言うと蓮は左手の五本の指を、心愛の右足の裏、土踏まず上部のふくらみ辺りに乗せ、バラバラに動かせた。
「うひゃぁぁっ!!!? きゃはははははははっ、あぁぁっはっはははっははは、くわっはっはっははははっは~~!!」
左足ばかりに意識を集中させていたせいか、心愛は、蓮に右足を触れられると同時に、蓮の右手を開放してしまう。
「なかなか意地を見せたね。ご褒美だよ」
蓮は、心愛の両足のかかとに爪を立て、ガッガッとひっかいた。
「はひゃっ!!? ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! もぅっダメっ!! あぁぁ~~っはっはっははっはは、いぃぃぃっひっひっひっひっひっひ~~っ!!」

心愛は、バンバンと尻をマットに打ちつけ、腰をねじり、激しく笑い暴れた。
「ほんとにぃぃぃっ!! ほんとにぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっ!!! あひゃぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~っ」
「どう? そろそろ、僕に協力してくれる気になったかな?」
「いやぁぁっははっはっはっはははっはっ!! なりませんっ!!! いぃぃひひひひ、なりませんっ!! きゃははははっ」
蓮は心愛の両足の裏の上で、十本の指を縦横無尽に這わせた。
「うひゃっ、ぐひゃひゃひゃひゃひゃっあぁぁっぁあはっははっははははっ~~っ!!! いやぁぁぁ、あひゃぁぁぁっはっはっはっはっははっ!! にゃぁぁぁっはっはっはっはっはっはははっ!!!」
「僕の指、くすぐったいだろう?」
「やぁぁっひゃっひゃっひゃっひゃ、くすぐったいですよぉぉぉうひひひひひひひひひっ!!」
「もっと欲しくないかい?」
「いぃぃぃひひひひひひっ!!!? あぁぁっはっははは、いりません!!! いりませんっんんんひひひひひ!! やめてくださいっ……っはっはっはっはっはっはっ!!!」
「……そう」

なかなかしぶといな、と蓮は思う。
これだけ敏感なのだ。身体はすでに限界を迎えているはず。無意識下では、すでに蓮の指を受け入れているのかもしれない。
それでもなお、心愛は蓮の言葉を拒否し、自分を律し、保とうとしている。
使命感。
彼女の使命感、その誇りは、予想以上に強固だ。

おもしろい……っ。

蓮は、そんな心愛が、崩れ、この指を求めてすがり、おねだりする光景を想像し、興奮した。

▼▼▼

「ゲホッォッ……、ケホッ、……ヒィ、ヒィ……、もぅ、やめて、ください……」
蓮が指を止めると、心愛は激しく咳き込んだ。
ぐったりとマットに横たわる心愛の顔は、涙と涎、鼻水でべとべとになっていた。
足の指が、くすぐられた余韻からか、ピクリと痙攣するように微動していた。

蓮は、一旦退室すると、紙袋を持って戻ってきた。
「な、……なんですか……、それ?」
「なんだろうね? 想像してごらん」
蓮は心愛の足下に紙袋を置き、がさごそと漁り始める。
心愛からは晒し台に阻まれ、足下の様子が見えない。
心愛はぎゅっと目を閉じて、荒い息を立てる。必死に恐怖をかみ殺しているようだ。

「じゃあゆっくりいくよ?」
蓮は、紙袋から猫じゃらしを取り出し、心愛の右足の内側面、縁の部分をゆっくりとなぞった。
「ふひゃぁぁぁぁっ!!?」
さわさわと猫じゃらしを土踏まず辺りに這わせると、心愛の右足が逃げるようによじれた。
「ひゅぁっ!! ひゃははっ、きゃははっ!! にゃっ!? なんですかぁぁ、あひゃひゃっ!!! きゃはん」
「じゃあ、心愛。これが何か当てられたら、次の道具に変えてあげよう。全部で三つしかないから、心愛がきちんと正解できればすぐに一巡するよ?」
「ひひひっ!! きひひっ!!? も、もし、あひゃぁあっ!! 間違えたら……っ!?」

食いついた……っ!

「そのまま、当てられなかった道具で続行するだけだよ? もし何かわかったら、大声で――」
「猫じゃらしっ!!! あひゃぁあっ!! ひゃははっ、猫じゃらしですっ!!」
心愛は、蓮が喋り終えるのを待たずに叫んだ。
「きゃははっ!! あはは、合ってますよねっ!!? ひゃはは、はやくっ!! 早くやめてぇぇっいひひひひっひひっ」
「すごいね。一発正解だよ」
蓮は手を止める。
すごい執念だ。まさか、一発で正解を出すとは。

「ヒィ、ヒィ……、ぐじゅ……」
続いて、蓮は羽箒を取り出し、そっと心愛の左足に羽先を近づける。
「あぁぁぁっ!!! ひぃぃんっ!!! 羽っ!! 羽っ! 鳥の羽根!! 羽箒っ!! 羽ですっ!! それ以上近づけないでくださいっ!」
わずかに羽の先端が足の親指に触れただけで、ぴくんと足を仰け反らせて、泣き叫ぶ心愛。
蓮は少しがっかりした。
「どうして、すぐにわかったの?」
「……は、羽箒……。佐々木先輩の、動画に、あったので……」
心愛は息を切らす。
「へぇ」
納得しながら蓮は、羽先をミリ単位で微動させた。
「わっわっわわっ!!? うぅぅぅぅ動かさっ!! ひゃぁぁっ、動かさないでっ!!! 約束とっ!! 約束と違いますっ!! ひぃぃんっ」
「おっと、ごめんよっ、手が滑ったようだ」
蓮は「ハハッ」とぼけておいて、紙袋を漁り始めた。

蓮が最後に取り出したのは、耳かきだった。
梵天の部分を、心愛の左足の甲側、小指の付け根辺りに這わせた。
「ふにゃぁぁぁっ!!? ふひひひっ、そ、それっ!!? ね、猫じゃらしっ!!? ひひひひ、ずるいっ、ひひ、ずるいですっ」
「残念、不正解だよっ。時間はたっぷりあるから、ゆっくり考えてね」

蓮は、梵天で心愛の足の甲をぐるぐると円を描くように撫でた。
「ひひひひひっ、ひひっ!!? 羽っ? はひゃひゃひゃ、羽先がっ!! ゾワゾワって、いひひひひひひひひ」
心愛の足指がぐにぐにと動き、必死に逃げようとしている。
蓮はさらに、心愛の足の形をなぞるように、縁に沿って梵天を這わせる。
「ふひぃぃぃっ!! いやぁっ、気持ち悪いっ!! あひひひひっ、ひひひひっ、ひひゃぁぁんっ」

今度は足の裏側から、指の付け根に這わしてやる。
「うひひひひひひひっ!! ひゃあっはははは、ぴぎぃぃぃっ!!! いぃぃっひひっひっひっひっひ~~」
心愛は膝をガクガクと曲げ、上半身を左右にねじって笑い悶えていた。

「あひゃぁぁぁっ、掃除用具っ!!? なにか、あはははっ、ホコリっ!! ホコリ取りっ!!! いひひひひひ」
「何のホコリ取りかな?」
「いぃぃっひひひっ!!? そんなところまでっ!!? くひひひ、パソコンっ!!! キーボードっ!! はひゃひゃっ、……あひゃぁ、テレビっ!? で、ひひひ、電子機器ぃぃっ」
心愛は、思い当たる限りの機器の名称を列挙していった。

ある程度出尽くしたころあいを見計らい、蓮は口を開く。
「残念。ホコリ取りは不正解だよっ! ハハッ」
「ひぃひひいぃぃひひいひ、あひゃぁぁっ!!!? なっ!! ひひんっ、卑怯っ!!! 思わせぶりなっ!! いはは、ひひぃぃん……っ!!」
心愛は、目をぎゅっとつむり、意識を集中させている風な様子を見せた。
「考え中かな? もし指の方がよかったら――」
蓮が梵天を、心愛の親指と人差し指の間に差し込んだところを計らい、心愛はぎゅっと足指に力をこめた。
心愛は、耳かきの柄の部分をがっちりと足指で挟み込むことに成功した。
「……ひぃ、はぁ……、み、耳かきです……この形状……。これで、私の、勝ち、……ですよね」

「すばらしいよ、心愛。意地を見せたね。えらいよ」
蓮は手を軽く叩く。
「じゃ、じゃぁ……や、約束どおり」
「二巡目にいこうか」
「えぇっ? えっ? ……や、約束とちがっ」
「おや? 笑いすぎて頭がちゃんと回っていなかったのかな? 僕は、全部正解すれば一巡としか、言ってないはずだけど? 疲れているせいで、自分の都合の言いように条件を解釈しちゃったのかな?」
蓮が心愛の表情を確認すると、見る見る顔が歪んでいく。
「誰にでも勘違いはあるさ、ハハッ」
心愛は蓮の爽やかな笑顔を一瞥すると、涙腺が緩んだのが、とめどなく目から涙を溢れさせ、泣き始めてしまった。
「ふぇぇぇぇぇ……、も、もうぅ……お願いです。やめて……ふぇっ、えぐっ、くすぐるのは、やめてください」

後一歩だ、と蓮は思った。
心愛の精神を、折れる寸前まで追い込むことができた。
身体はすでに限界。あとは決定的に、心愛の精神を支えている根幹をいじってやれば……。

「心愛」
「えぐっ、……ぐずっ、もうやめてぇ~……もうやめてぇ」
「最後のチャンスだよ? 僕に協力してくれないかい? 君の管理能力を、僕のために使って欲しいんだ」
「……協力」
心愛は涙で濡れた顔をぎゅっと引き締め、歯を食いしばった。
「私は、……ぅぐ、……ジャーナル部のデータ管理、責任者です。ふぇぐ……ひっく……、絶対に、部外者の、あなたなんかに……っ」

それでこそ心愛だ。
蓮は、満足気に微笑んだ。

「きっと心愛の身体は、すでに僕の指の魅力に気付いているはずなんだ。僕の指が欲しくてたまらないはずなんだ」
「……ぅぅぅ……いりませんっ。うぐぅ……」
「意地にならなくてもいいんだよ? 僕に協力してくれれば、君の好きなだけ、この指で、めちゃくちゃにくすぐってあげる」
「ぐぅ……いやっ……いやです。うぅぅ~……くすぐられるのは、もぅ」
心愛はマットに顔を押し付け、ボロボロと大粒の涙を流した。
「じゃあ、身体に聞いてみようか? すぐに僕の指が欲しくなるよ?」
「いやぁ~……いやぁ、ふぇぇぇぇ」

再び泣き出した心愛を尻目に、蓮は紙袋を漁り始めた。

▼▼▼

蓮は紙袋から細長いロープを取り出し、心愛の足の指を順に縛りつけていった。
親指、人差し指、中指、薬指、小指と、固定し、晒し台の上部の『ツメ』に引っ掛ける。
一分程度で、心愛の素足は両足とも指一本まともに動かすことのできない、ギチギチの完全拘束状態にされた。

「……っ!!? や、やめてっ、……こ、こんな状態で、くすぐられたら、……本当に、私、おかしく、……なっちゃいます」
「いいんだよ、おかしくなっても。身体に正直になることを恐れないで。……じゃ、二巡目にいくよ」
「い、いやっ!! いやぁぁぁあぁっ!!!」

蓮は、左手に三本の猫じゃらし、右手に羽箒を持ち、悲鳴を上げて身を捩る心愛の右足と左足を同時にくすぐった。
「あひゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!! あぁぁぁっあっあっあっあっ!!! がぁっぁあっははっははっはははっははははっはははダメぇぇはっははっ!! ぃやぁぁはは、だめえぇぇっ、へひひっはっはっはははっは!!!」
心愛はマットの上を跳ね回って笑い狂う。
がっちり拘束された足の裏は土踏まずあたりがぴくぴくと痙攣するのみだった。

「ぎぃぃぃひひひひっひひひひひひひひひっ!!! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! くるぅぅぅうひひひひひひひっ!! 頭おかしくっ、うひっひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! あぁぁ~~~っひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~っ!!??」
蓮は、羽箒でばさばさと心愛の左足を包み込むように、猫じゃらしで心愛の右足の裏を均すようにくすぐる。
「あぁぁぁあっはっはっはっははっはははは、だまっぁぁっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! がががひゃはっははっははっははははっはっ!!!!」
心愛の足指を縛ったロープがギチギチと空しい音を立てた。

「どう? さっきとは比べ物にならないだろう?」
「あひゃひゃひゃひゃひゃはっ!!! ぐわっぁっはっはっははっはっはははっははっらめぇぇぇっへっへっへっへっへっへっ!!!」
羽先が足裏を刺激するたびに、心愛の足の指がぴくぴくと微動する。
足を縮こまらせることも、よじることも許されない状況。
心愛の見開いた目からあふれ出る涙、開きっぱなしの口からだらだらと流れ出る涎。
心愛は、まるで身体中に電流を流されているかのごとく暴れ狂う。

しばらく猫じゃらしと羽箒の責めを楽しんだ蓮は、耳かきを手に取った。
「さて、次は、心愛がさっきなかなか当てられなかった、『ホコリ取り』だよっ」
「ほねっ……ほねがひぃ……やぁ……~~、やめっ、ひっ、きひひ、くふっ……」
ようやく触れていない状態でも笑いがこみ上げる状態まで追い込んだ。
心愛もかなり体力を消耗しているようで、だらりと舌を出したまま荒い息を立てていた。

蓮は、耳かきの先端、へらの部分を、心愛の左足の親指と人差し指の間に差し入れ、カリカリとひっかいた。
「ぎゃははっはははははっははははははっ!!!! あぎゃぁっぁっはっははっははっはっははっ!!!! やぁぁっはっはっはっははっはっはっはっはっはっはっは~~~っ!!!」
「指の間を、一つずつキレイにしてあげるからね」
「あひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ、やめぇぇっ!!! ひぃぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひ~~っ!!!」

「耳かきのこっち側、竹の方は、しっかり拘束しておかないと、肌を傷つけちゃうからね。さっきは使えなかったんだよ」
蓮は適当なお喋りをしながら、心愛の指の間を、次々と掃除してやる。
「えっへっへへっへっへへへ、にぇっひぇっひぇっひぇっひぇっひっぇ!!! じぬぅぅぅぅぅひひひひひひひひ、くるぅぅぅひひひひひ、変になりゅぅぅぅひひひひひひひひひひっ!!!」

心愛は、目をひんむいて大笑いしていた。
「にょへぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇっ!!! ぐっぎっひひぃひひぇぇひぇぇぇひぇひひぇひっ!! ぁあぁぎゃはっはっひゃっひゃひゃっひゃ!!」
眉間の皺は弛緩して、顔がだらしなく緩んでいる。
蓮の経験則だと、これだけ笑い狂う状態ならば、すでに落ちていてもおかしくないのだが、未だ心愛の口から指を求める発言は無い。

「心愛」
指掃除を終えた蓮は手を止め、心愛の顔を見た。
「……いひひひひひひ、ぐふぅ……いぇひひひひひ、だ、だ……」
「僕の指が欲しいかい?」
「……ひっ、ひひひひ、ひゅびぃぃ」

勝った、……か?

「ひひひ、……わらひは、……ひゃーなる部のぉぉ……くくくくくひひひっひっ、へきにんひゃでぇぇ、くひゅっ!! うひひひひひひひひっ」

なるほど。
心愛の精神を最後の最後まで、皮一枚で繋いでいるのは、結局は、ジャーナル部員として、データ管理責任者としての誇り。
おそらく、このまま黙って数時間くすぐり続ければ指の力で陥落させることはできるだろう。
が、現時点ですでに心愛の身体は限界。
かくなる上は……。

蓮は、両手計十本指を、まったく動かすことのできない心愛の足の裏につきたて、いきなりガリガリとかきむしった。
「ぶひゃぁぁがひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! あぁぁひゃひゃひゃひゃはやぎゃぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁっあっあっあっ~~っ!!!」
心愛は、ほとんど喚くように笑い出した。
「これが僕の指だよ? どう、気持ちいいだろう?」
「あはははっはははっはっ、ぎひゃひゃひゃへぇじじょひひひひひひひひひっ!!! らめぇぇっひひひひひぇひぇひぇひぇ~~っ」
蓮は指先に力を込め、心愛のすべすべの足の裏を叩くようにくすぐった。
「心愛はずっと、これが欲しかったんだよね?」
「ぎゃははははははははっははははっ!!! ちゃがぁぁははっははっはっははっ!! あひあひあひゃひゃひゃひゃひゃ~~っ!!」

心愛をひとしきり笑わせ、蓮はゆっくりと口を開いた。
「この指のために、心愛は、僕のデータの守っていた」

「ひゅびぃぃぃっ!!! ひゅびぃぃぃひひひひひひひひひひっ!!?」
「そう。心愛は、この指のために、僕だけのためにデータを管理する。それが君の使命」
蓮は、心愛の踵から指の付け根まで、縦横無尽に指を這わせながら、言葉を繋いだ。
「がひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ、あぁぁぁぁがががががじゅひっ!!!?」
「心愛がこの指を欲するのは当然なんだよ? だって、心愛はこの指のためにデータを管理してくれてたんだから」

蓮は、激しく指をうごめかしながら、心愛に語り続けた。
一旦この指を受け入れてしまえば、言葉など後でなんの意味もなくなる……っ。
とにかく今は、速攻で心愛を落とすことに専念すべき!

「ほら、僕の指、欲しいんだろう?」
蓮は、心愛の柔らかい足の裏をむさぼるようにくすぐった。
「ぎゃははっはははははっはははっ!!! いぃぃぃぃぃひゃひゃひゃひぇひぇひぇひぇ、はひはひはひはいひぃぃ~っ!!?」
「素直になってごらん?」
優しく語りかけながら、掻き毟る指に力をこめる。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!! ぎっぐわっひゃひゃっひゃっひゃっひゃ、ぎえぇぇぇへひえぃえひえぃえいぇいえぃえ」
ロープがギチギチと激しく軋む。心愛の笑い声は、もはや奇声であった。板の向こう側、心愛の上半身はねじれたり飛び跳ねたりと、陸に打ち上げられた魚の断末魔を連想させた。
「君の使命。僕のため。僕の指のため」
「あぎゃぁぁぁあぁあぁっぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!!」

「君は僕の指が欲しい。だから、その使命をまっとうする」

蓮は、親指を心愛の土踏まずに押し当て、ぐりぐりとツボ押しするように動かす。
「あぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! あぁぁぁ~~~~~っ!!!」

「正直に言ってごらん? 身体に正直に。ね? ほら、この部屋には僕しか居ないから」
「……うぅぅぅ、ひぅぅぅぅっ……うひひひひひひっひ、……そ、その、指が、ぃぃひひひひ、欲しい、です……」
心愛は枯れたはずの涙を再び溢れさせていた。
自分の心に対する裏切りへの謝罪の涙か、蓮に向けられた歓喜の涙か、傍からはよくわからなかった。

「さて、心愛。心愛の身体はもう限界に近いと思うけど、どこかくすぐって欲しいところはあるかな? もちろんこの指で」
「いぃぃ、……いひひひひ、あ、あ、足の、指の、あ、間、を……ぅぅひひひ、ぇへぇへへ、いひぇひぇ」

とうとう勝った。
あとは、ゆっくり、この指の虜にしていけばよい。

蓮は勝利の喜びをかみ締めながら、心愛の足裏を存分にもてあそんだ。


調教開始から三時間半。蓮は、心愛が完全に落ちたことを確認した。
たった一人で調教を成功させたのは、陽菜以来かもしれない。
蓮は、ヘラヘラと脱力している心愛の姿を見て、充足感に震えた。

◆◆◆

――翌日の夕刻、蓮の家にて。
「委員長。一人で吉田さんを落とそうとするなんて、何を考えているんですか!」
蓮は美咲に叱責を受けた。
室内には蓮と美咲の二人だけで、ソファに並んで腰掛けている。
「私の調教に三時間以上かかったの、お忘れですか? もちろん委員長の指を使えば、誰だって落とすことが可能でしょう。でも! それでもです。落ちにくい人は、いるんです!」
「そうだね。美咲の言う通りだ」
蓮は言いながら、美咲の脇腹に指を添える。
「ちょ……ふひっ! 委員長っ! くひっ、今はちゃんと聞いてくださいっ。……一人でやってしまいたい気持ちはわかりますが、周りのこと、私達のことももっと考えてください」
「というと?」
「長時間指を酷使して、委員長の指が腱鞘炎にでもなったらどうするんですか!! 私はともかく、陽菜さん辺り、ショック死しますよ? 冗談抜きで」
「美咲は?」
「直るまで待ちますよ。ずっと待ちますよ。でも、直ってから一番初めに私をくすぐってくれなかったら、私も死にます」
美咲はさらりと言った。
「オーコワイコワイ」
「たぶん、葵さん辺りもその口ですよ? 委員長。私か葵さんのどちらかを死なせたいんですか?」
「……うーん。それは困るな」
「だったら、委員長。ご自身の指をもっと大事にしてください。委員長の指が健在だからこそ、私達の間で、今のところ大きな揉め事は起きてないんです。私達の中で、『委員長の気分しだいで、いつでもくすぐられるチャンスがある』という状況が大きな保険になっているんです」
「ん? 今大きな揉め事っていったけど、小さな揉め事はあったのかい?」
「え、まぁ、……女同士、色々ありますから」
口ごもる美咲を見て、蓮は微笑んだ。
「美咲がいるから、僕は安心しきっているんだけどね」
「委員長……」
「僕が一番信頼しているのは、美咲、君だよ?」
明らかな営業スマイルを作る蓮を、美咲はじとっと睨んだ。
「……それ、全員に言ってますよね?」
「もちろんさっ! ハハッ」
「ひどい男ですね。委員長」
美咲がわざとらしくいじけた声を出すので、蓮は吹き出してしまった。
「でも、それをバラすことで、美咲の自尊心はくすぐられる。そうだろう?」
「…………」
困ったような表情で黙りこむ美咲の脇腹に、蓮は再度指を這わせた。
「ひゃんっ、い、委員長!! ひひんっ」
「身体は正直だね。くすぐられて大喜びじゃないか」
「……変態」

「美咲」
「は、はい」
蓮は、軽く美咲の服を整えてやった。
「文化祭の段取りは?」
「順調です。K組、L組合同のお化け屋敷。小道具の準備は陽菜さんが陣頭指揮をとっているので問題ありません。ジャーナル部の宣伝効果によって、当日は校内校外から多くの学生がお化け屋敷に訪れるでしょう。文化祭出し物としてのお化け屋敷成功は確実ですし、それに――」
「文化祭は、楽に優良人材を獲得する絶好のチャンス。クモの巣を張るように、獲物を待ち構え、捕らえる」
「当日調教予定の生徒は、吉田さんのデータベースからすでにリストアップ済みです。彼女らを落とせば、次期生徒会長選挙、委員長の当選は確定。ジャーナル部をおさえたことにより現副会長が当選する可能性はゼロになりましたので、敵はいません」

「……文化祭当日が、楽しみだね」
「はい」
「本当にいい仕事してくれているよ、美咲は」
蓮が促すと、美咲はベッドに横たわり大の字に寝そべった。
「委員長、昨日の今日ですから、無理はしないように」
「それだと、美咲を満足させられないだろう?」
「満足するのは、委員長が、会長になってからで充分です」
「そうかい?」

蓮は、ゆっくりと、指先を美咲の腋の下に這わせた。
「ひひゃぁぁっ!! ひひっ……ひっ、委員長」
「なんだい?」

「約束ですよ。ひ、一月後は、くっ、絶対。私に、『会長』と呼ばせてください」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、へたくそな台詞を吐く美咲を見て、蓮は笑った。


調教くすぐり師の指Ⅱ 完