まゆが飲み物を買って中庭に戻ってくると、そこに、泉の姿はなかった。
 ベンチの上に食べかけの総菜パンが置かれている。
 トイレにでも行ったのだろうと、まゆはベンチに腰掛け、自分の弁当を取り出した。
 ふと、ベンチの上に置きっ放しになった便せんが目に入った。
「不用心……」
 他人のプライバシーをこんな形で放置するなんてと、泉に対して軽く憤りを覚える。
 便せんを手に取った。
 折りたたみ、封筒にしまい直そうとして、手が止まった。
 まゆは目を上げ、周囲に視線がないことを確認した。
(……誰も見てない)
 突然まゆの中にわき上がった好奇心。
 まゆは、首を左右に振った。
(だめだめ。他人のラブレター盗み見るなんて、趣味悪い)
 まゆは心の中で言い聞かせ、便せんを封筒にしまい、丁寧にベンチの上に置いた。
 弁当を膝に置き、箸を構えた。
「…………」
 まゆは少し考えて、弁当と箸を元の位置に置き直した。
 泉がトイレから帰ってくるまで、待っていようと思った。
 待ち時間は手持ちぶさたで、とてつもなく、長く感じられた。


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 晒そう企画の『ストーカー』を原作に、ホラー要素を含めてリメイクしました。
 こういう子のちょっとした葛藤ってフェチ心をくすぐりませんか?